第13話 火力玉を求めて ― 炎晶洞へ
シャトーの冒険者ギルド。
広いホールの中央に置かれた木製テーブルを囲み、ヒカルたちは腰を下ろしていた。
「さて……俺たち全員が上級職になった」
ヒカルが仲間たちを見回し、真剣な口調で切り出す。
「次に必要なのは――火力玉だ」
「火力玉?」
ナオが小首を傾げる。
「なんだか食べ物みたいな名前ね。私、てっきり団子の一種かと思ったわ」
「……いやいや」
ソウタが吹き出す。
「だとしたら冒険者ギルドで団子の話し合いってどうなんだよ」
「ちょっと! 真面目に説明するわよ」
レナが腕を組み、前に身を乗り出した。
「火力玉は武器に埋め込む特殊鉱石。魔力を増幅して攻撃力を高めるレア品なの。ダンジョンの中でも火山地帯にしか存在しない」
「よく知ってるね、すごい」
ナオは感心したように笑った。
「私、そんなの初耳だった。ありがと」
「べ、別に……冒険者なら常識でしょ」
レナは頬を赤らめて顔をそむける。
「ふふ……素直じゃありませんね」
ユウキが穏やかに微笑む。
「ですが、おかげで理解が早まりました。ありがとうございます、レナさん」
「なっ……! い、いや……その……」
レナがたじたじになるのを見て、場に小さな笑いが広がった。
「で、その火力玉ってやつはどこで手に入るんだ?」
ソウタが豪快に腕を組む。
「炎晶洞――火山地帯のダンジョンだ」
ヒカルは地図を広げ、赤い印を示した。
「溶岩ゴーレムや火蜥蜴が巣食っている。奴らを倒した時のドロップ品として、極稀に手に入る」
「溶岩ゴーレム、火蜥蜴……。うわ、聞いただけで暑苦しいわね」
ナオは額に手を当てる。
「私、汗で剣が滑ったら最悪だわ」
「ナオさん、安心してください」
ユウキが落ち着いた声で言った。
「水分補給は僕が管理します。水筒も十分に用意しましたので」
「助かるわ、ユウキ。本当に頼りになるのね」
そのとき、ずっと静かに聞いていたミナが口を開いた。
「でも……火力玉を狙うのは私たちだけじゃないはず」
彼女は落ち着いた声で言った。
「野良のギルドや盗賊団も動いてる。衝突は避けられないわ」
「さすが拘束士だな。リスクの見方が鋭い」
ヒカルが頷く。
「敵とぶつかった時は、ミナの拘束が大きな武器になる」
「ええ。縛るのは得意よ」
ミナが涼しい顔で答えた瞬間――。
「ひっ……!」
ナオとソウタが同時に顔をひきつらせる。
「お、おい……なんか今の言い方、やけに怖ぇぞ……」
「そ、そうよ……普通に言えないの?」
「ふふ、冗談よ」
ミナが柔らかく笑うと、場の空気が少し和らいだ。
「よし。方針は決まりだ」
ヒカルが手を打った。
「明日の朝には炎晶洞に向かう。全員、準備は怠るな」
「了解!」
六人の声が重なり、作戦会議は幕を閉じた。
翌朝――。
炎晶洞の入り口に立った瞬間、灼熱の風が肌を焦がした。
「うわっ……あっつ!」
ナオは思わず叫ぶ。
「私、もう帰りたい……」
「帰るな」
ソウタが即答する。
「冒険者なら耐えろ。熱風ごときで音を上げんな」
「ほら、水をどうぞ」
ユウキが差し出してくれる水筒を受け取り、ナオはごくごくと飲んだ。
「ありがと……助かるわ」
内部はさらに灼熱だった。赤く光る岩壁、轟々と流れる溶岩の川。
しばらく進むと、巨体の溶岩ゴーレムが現れる。
「来たか!」
ヒカルが長剣を構える。
「ナオ、俺と前に出ろ! ソウタは応援、ユウキは支援魔法、レナは回復、ミナは拘束だ!」
「了解! 私、全力で斬り込むわ!」
「応援任せろ!」
ゴーレムが拳を振り下ろす瞬間――。
「応援だァァッ!!」
ソウタの雄叫びが響き、仲間全員の体が軽くなる。
「縛り上げる!」
ミナの鞭が走り、光の鎖がゴーレムの片足を絡め取った。
「ナイス、ミナ!」
ナオが叫び、隙を突いて剣を振り下ろす。
「はああっ!」
後方からレナの回復魔法が差し込み、傷が瞬時に癒える。
「無茶しないでよね!」
「助かるわ!」
最後にヒカルとナオの同時斬撃がゴーレムを貫き、巨体は崩れ落ちた。
「ふぅ……やっぱりミナの拘束は心強いな」
ヒカルが振り返って言うと、ミナは小さく微笑んだ。
「当然よ。仲間を守るのが拘束士だから」
その時――。
洞窟の奥から複数の足音が迫ってきた。
「……来るぞ」
ヒカルが低く呟く。
姿を現したのは、武装した別ギルドの一団だった。
リーダー格の男が口元を歪めて笑う。
「へぇ……炎晶洞で会うとはな。火力玉は、どうやら俺たちが先に手に入れるらしい」
剣を構える音が響き、空気が張り詰めた――。
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