第123話 さらなる客
クロエとシドが並んで歩き出そうとした、そのときだった。
「おい、いたぞ! あのガキだ!」
聞き覚えのある声に、クロエはぎょっと振り返る。
そこに現れたのは――牛小屋で糞まみれになった、あのチンピラたち。
しかし、今度は様子が違った。背後にはさらに十数人の仲間が加わり、総勢二十人。
サムライ、魔法使い、格闘家といった戦闘職まで揃っている。
「数が増えたか……」シドは眉をひそめた。
「あのガキ、妙な技を使いやがる……手が光ったら注意しろ!」と、誰かが叫ぶ。
クロエは焦る。
(この人数じゃシドも困るかな…)
そのとき――
「ダメね、弱い者いじめは。お天道様が許しても、このわたしが許さないわ」
どこか気取った声が、暗がりの奥から響いた。
しかし、声に似合わず妙に幼い。
クロエと同じくらいの背丈の少女が姿を現した。
セミロングの薄紫色の髪を揺らし、涼しげな瞳でチンピラたちを睨みつける。
「な、なんだガキ……? あの厨二病患った変なガキも一緒につかまえろ!」
「ち、厨二病!? 失礼しちゃうわね!!お、大人だからわたし!」
少女は頬を真っ赤にして叫ぶ。
「このリディア様を怒らせたわね! いくわよ――モノモノマネマネッ!!」
次の瞬間、リディアの右手が光を帯びる。
すると――二十人全員の足が勝手に動き出し、猛スピードで牛小屋へ直行!
「うわああああっ!?」
再び盛大に牛糞まみれとなる一行。辺りに悪臭が広がった。
呆然と見守っていたクロエとシドは、思わず顔を見合わせる。
(な、なにあれ……!?)
リディアは右手を払って得意げに微笑む。
「ふぅ……ちょっとマネさせてもらっただけよ。あなたの右手? びっくりしたわ。
さっき二人で何を話してたのか知らないけど……まあ、秘密ならいいわ」
それだけ言うと、クールに背を向けて去ろうとした。
だが――ぽとり、と何かが落ちる。
「……財布?」クロエが拾い上げると、そこには可愛らしいクマの絵柄が描かれていた。
「ほら、落としたよ」差し出すクロエに、リディアは真っ青になって振り返る。
「こ、こんな子供っぽいの、わ、わたしのじゃないわ!わたしは大人なの!」
必死に否定するが、クロエは無邪気に笑った。
「かわいいね、それ」
「っ……」リディアは固まり、思わず口を滑らせた。
「そ、そうなの、これね、前に……ママが買ってくれて……あっ!」
しまった! という顔をして、耳まで真っ赤に染める。
そして財布をひったくるように受け取ると、小さな声で「ありがと……」とだけ言い、
顔を隠すように走り去っていった。
ぽかんとするクロエの横で、シドはぼそりと呟く。
「あの“マネする技”……ただ者ではないの」
しかし、それ以上は語らず、肩をすくめる。
「さ、ヒカルとナオのところに戻るぞ」
クロエはまだリディアの背中を見つめながら、小さく頷いた。
新しい出会いが、また何かを動かしそうな予感がしていた――。
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