第122話 告白
チンピラたちが牛小屋に沈黙していった後、路地裏には静けさが戻った。
クロエは右手を胸に押し当て、必死に鼓動を落ち着けようとしていた。
その前に立つシドの眼差しは鋭くも穏やかで、逃げ場を与えない。
「さて……何を隠しておる。わしに話すがよい」
クロエは息を呑み、決意を込めて口を開いた。
「……クロエは、未来から来ました」
その言葉に、シドの眉がぴくりと動いた。
だが驚愕の表情は見せず、ただ黙って続きを促す。
「未来の世界で、パパ……ヒカルと、ママ……ナオは、悪魔に倒されてしまいます。
だからクロエは……二人が若い今の時代に戻ってきたんです」
シドの目が細くなる。
「つまり、おぬしは未来のヒカルとナオの……娘というわけか」
「……はい」
クロエは小さく頷き、視線を落とした。
「悪魔……奴らは七大悪魔を筆頭に復活して、クロエたちの時代を滅ぼそうとしています。
クロエは、この時代で力を覚醒させて……そして……」
言葉が喉に詰まる。
本当は「覚醒したら未来に帰る」約束なのだ。
だが、それを言ってしまえば、今の両親と一緒にいる理由が弱まってしまう。
クロエはぎゅっと拳を握りしめた。
(ごめんね、シド……嘘つくけど、これは必要なことなの)
「……そして、悪魔をすべて倒してから、未来に帰ります」
言った瞬間、自分でもその言葉がわずかに震えているのがわかった。
シドはしばらく無言だった。
クロエの全身を見抜くようにじっと見つめる。
その視線に耐えられず、クロエは唇を噛む。
だがやがて、シドはふっと目を細めて笑った。
「……なるほどのう。未来の三姉妹……そうか、ヒカルとナオにそんな娘ができるのか」
「っ……!」
クロエの胸に熱いものがこみあげた。
「おぬしの覚悟は、確かに受け取った。じゃがな……」
シドは顔を近づけ、声を潜めた。
「嘘をつくときの目を、わしはよう知っとるぞ」
クロエの背筋に冷たいものが走った。
「……っ!」
しかしシドはそれ以上問い詰めず、酒の匂いを漂わせながらふっと背を向けた。
「まあよい。おぬしがどうあれ、いずれ真実は明らかになる。
その時、どんな選択をするか……わしは見届けるとしよう」
クロエは心の中で息をついた。
(……見抜かれてる。でも、まだ信じてもらえた……よかった……)
シドは歩きながら軽く手を振る。
「さ、戻るぞ。ナオやヒカルに怪しまれる前にな」
その背中を見つめながら、クロエは小さく拳を握った。
(必ず……この時代で力を覚醒させて、パパとママを救うんだ……!)
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