第121話 クロエの黄金の力、再び
路地裏はひんやりとした空気が流れ、酔いどれのシドとクロエだけがぽつんと立っていた。
そこへ、どやどやと足音が近づく。
「へっへっへ……」
現れたのは、4人組のチンピラだった。薄汚れた服にナイフや棍棒を持ち、にやにやといやらしい笑みを浮かべている。
「じじいとおチビちゃんが、こんな時間にこんなとこにいたらダメだよねぇ~。カモじゃん」
クロエは思わず鼻で笑った。
(ふん……こいつら、死んだな。だって隣にいるのは伝説の大魔導士シドだもん。こんな雑魚、秒で――)
ちらっと横を見た。
……シド、建物の壁を背に、ぐでーっと座って寝ていた。
しかも、口から「くかー……」と軽い寝息まで立てている。
(おいいいいいいいいい!! このタイミングで!?)
(どどどどどどうしよう!! た、助けてパパ! ママ!!)
心の中で必死に叫んだ瞬間――クロエの右手が眩い黄金色に輝き始めた。
「あ、あれ……!? な、なにこれ……!」
自分の手を見て、クロエは目を見開いた。
チンピラたちもぎょっとして後ずさる。
「こ、こいつ……やべえガキだ!」
「でも待てよ……売れば金になるかもしれねぇぞ?」
(じ、人身売買!? やばいやばいやばい! 絶対ついてこないでぇぇぇ!!)
クロエは咄嗟に黄金に輝く右手を、迫りくるチンピラたちへ突き出した。
――次の瞬間。
「う、うおおおおお!? 足が勝手に!」
4人のチンピラの足が、クロエたちとは反対方向にねじれるように動き、一斉にダッシュし始めた。
「待て! 俺たちの意思じゃねえ!!」
「止まんねぇぇぇ!!」
そのまま路地を抜けた先には――牛小屋。
ドッシャアアアアアッ!!
次の瞬間、チンピラたちは牛の糞まみれになって転がっていた。
「ぎゃあああ! くせぇぇぇ!!」
「目に入ったあああ!!」
クロエは呆然と右手を見つめる。
(もしかして……わたし、また力を使っちゃったの……!?)
胸が高鳴り、困惑するクロエの背後から、落ち着いた声が響いた。
「……わしに、何か話があるんじゃろ」
振り返れば、さっきまで寝ていたはずのシドが、薄暗い月明かりの下に立っていた。
その目は、すでに全てを見抜いているかのように静かに光っていた。
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