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追放された雑魚剣士、実は最強ゲーム覇者でした。~記憶を取り戻した俺はチート知識で世界をぶっ壊す~  作者: 中瀬
第二章 悪魔討伐編

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第113話 シドと約束の日

 昼前の陽光が街を包むころ、ギルドハウスの扉を開いたのはチャイだった。

 茶色の髪を揺らしながら、落ち着いた声音で「いらっしゃい」と迎える。

 今はチャイと三姉妹――ハクア、キンカ、クロエ――の四人暮らし。

 そこへ、ついにシドがやってきたのだ。


 その隣には、よく知る顔があった。


「ユウキたん!」

クロエがぱっと声を上げ、勢いよく手を振る。


「ユウキおじさん! 久しぶり!」

キンカも嬉しそうに微笑む。


「ユウキさん……お久しぶりです」

ハクアは最後に、丁寧に頭を下げた。


「やあ、みんな。久しぶりだね。元気にしていたかい?」

穏やかな声に、三姉妹は笑顔でうなずいた。


 かつて十二歳にして同時魔法実行数十万を成し遂げた天才魔法使い――ユウキ。

 あの天才少年も、今では三十二歳。落ち着いた雰囲気をまとい、ランド王国でシドの後を継ぎ、顧問魔導士を立派に務めている。


「ユウキたんさー、ランドじゃなくてルミナスの王国顧問魔導士やってよー」

クロエが甘えた声を上げる。

「そしたらさ、もっと会えるのに!」


「あ、あぁ……そうだね」

ユウキは顔を赤くし、視線を泳がせる。恋愛や女性との距離感に関しては、今も奥手なままだった。

 師匠シドはそんな彼を見て「もったいない」とよく嘆くほどである。


 そして、この日ギルドハウスに来たのはシドとユウキだけではなかった。

 少し遅れて現れたのは、二人の男女。


「あ、ソウタちゃん! ミーナちゃーん!」

クロエはぱっと走り出て、ミナに抱きついた。


「ひさしぶりだな。美人になったな」

ソウタが柔らかな笑みを向ける。


「クロエー! ふふ、かわいくなったねぇ」

ミナは優しく頭を撫でてやった。


 キンカとハクアも続いて挨拶を交わす。


「ソウタちゃん、ミーナちゃん、王様たちがこんなところで遊んでていいの?」

クロエが首を傾げると、ソウタが笑いながら答えた。


「ルミナスにはチャランとポランっていう若くて優秀な執政官がいるからな、それにレナっていう王様よりおっかない聖女が国を守っているから大丈夫だ。」


「それに、たまにはクロエたちの顔も見たいだろ?」


「ソウタちゃん、最高!」

クロエは大満足の笑顔で飛び跳ねた。


 やがて、ユウキが切り出す。

「ほらクロエ、同時魔法実行の仕方、教えてほしいって言ってただろ? あれ、今日教えてあげるよ」


「え!? え!? いいの!? いままで“また今度”ってはぐらかしてたのに!」

クロエの目が輝いた。


「ただ、広いところじゃないと危ないから、王国管理の広場で練習しよう」

ユウキが誘うと、クロエはハクアやキンカ、そしてシドやチャイへと視線を移した。


「……しょうがないわね。いってらっしゃい」

キンカが答えると、クロエは飛び跳ねんばかりに喜び、次の瞬間、ユウキの転送魔法で二人の姿は消えた。


***


 残った六人――シド、ソウタ、ミナ、ハクア、キンカ、チャイはランチを囲み、話を始める。


 シドが切り出したのは、クロエの幼少期に起きた「遺伝子爆発」の件だった。

 数日まえ、右手が光ったのは、その再現に近いと。


「え!? なんでいま急にそんなことになったんだろう……」

ミナが驚きの声を上げる。


「わからねぇが、クロエが大丈夫ならいいけどな」

ソウタが腕を組む。


 だが話題はすぐに悪魔へと移った。

 ハクアが、ヴァルガとの戦いと、リーサルという七大悪魔のボス格の存在を説明する。

 ヴァルガはクロエの謎の力で消えたこと。だがそれが偶然なのか、必然なのか――。


 チャイが重い声で告げた。

「母から聞いた話によると、リーサルは百八の核を持ち、それをすべて砕かなければ復活してしまうのだと」

「そして、リーサルが完全に戻れば、他の六体の大悪魔も……」


 絶望的な話に、皆が息を呑んだ。


「核の場所もわからねぇし、そんな芸当、到底無理だ」

ソウタがため息をつく。


 だがハクアがつぶやいた。

「……百八の核を感じ取って、一気に破壊できるような力が必要、ってことよね」


 そこで、全員がクロエの右手を思い出した。

 確かに、不可能ではないのかもしれない――。


 シドは静かに首を振った。

「ただ、クロエはまだ力を制御できておらん。……しかも遺伝子爆発を活発化させねばならん」


「そんな危険な役割、クロエに背負わせるわけにいかない」

ハクアとキンカが口を揃えて否定する。


「できる。クロエ、チャレンジしたい」

唐突に響いた声に、全員が振り向いた。


 そこには、ランチの輪にはいなかったはずのクロエが立っていた。

 ユウキもすぐ後に姿を現す。


「クロエ!? テレポーテーションなんて使えたっけ……!?」

ユウキは焦りを隠せなかった。


「なんかね、できそうな気がして……そしたら右手が光って、そしたらここに来てたの!」

「っていうか、ユウキたん使って私を遠ざけて、みんなでコショコショ話してたんでしょ!? クロエはお見通しですっ!」


 ぷくっと頬を膨らませるクロエに、キンカは思わず「かわいい」と心の中で叫んでいた。


 場の空気を引き締めたのはシドだった。

「……クロエが力を得れば、悪魔を本当に倒せるかもしれん。ただし、そのためには――」


 言葉を切るシドに、皆が身を乗り出す。


「……遺伝子爆発を活発化させねばならん。そのためには……両親の影響を受ける必要がある」


「でもヒカルたちはもういないじゃん! どうするのさ」

ミナが問いかける。


 沈黙が落ちる。やがてシドは、重々しい口調で口を開いた。


「……過去に送れば、会えるじゃろ」


「過去に……送る!?」

全員の声が重なった。


 絶句と驚愕の中、物語は新たな局面へと進もうとしていた。

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