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追放された雑魚剣士、実は最強ゲーム覇者でした。~記憶を取り戻した俺はチート知識で世界をぶっ壊す~  作者: 中瀬
第二章 悪魔討伐編

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第112話 目覚め

リビングに横たえられたクロエの胸が、ふと小さく上下した。

 意識を取り戻したわけではない。ただ、眠りの奥底で、何かに呼ばれるように彼女の心は揺さぶられていた。


 ――カチ、カチ……。


 音がする。

 右手の奥から、時計の針のような響き。

 同時に、熱とも冷たさともつかぬ感覚が走り、クロエはうっすらと眉をひそめた。


「……ん」


 まぶたが重く開く。視界はまだ霞んでいる。

 だが、ぼんやりと持ち上げた右手を見た瞬間、彼女の目がはっきりと見開かれた。


 指先から手首にかけて、淡い光の文様が浮かび上がっている。

 それは炎のように揺らぎながらも、どこか緻密な紋章にも見えた。


「な、に……これ……」


 声が震える。

 光は、まるで彼女の鼓動に呼応するように、ドクン、ドクンと脈打っていた。


 異変に気づいたのはクロエだけではなかった。

 傍らで見守っていたキンカが真っ先に身を乗り出す。

「クロエ! 目を覚ましたのね……え...その手……!」


 チャイの茶色の髪が揺れる。彼女も驚愕を隠せず、シドに視線を送った。

 シドは険しい顔でゆっくりと首を振る。


「……やはり、あの現象は終わってはおらなんだのか」


 クロエは混乱の中で、必死に姉のキンカを見つめる。

「ねえ……お姉ちゃん……これ……私……どうなっちゃったの……?」


 その問いに、キンカは答えられなかった。

 ただ、妹の震える手を包み込むように握り返す。

 光はなおも脈打ち、まるでクロエの存在そのものを告げるかのように、部屋を柔らかく照らしていた。


まだ混乱の残る表情のまま、クロエはリビングを見回していた。

 視線が止まったのは、壁に飾られた一枚の絵――赤々と実ったリンゴが描かれたものだった。


「……クロエ、なんか出来そう」


 小さくつぶやいた瞬間、絵から光が零れ落ちるようにして、赤い果実がふわりと浮かび上がった。

 それは現実の質感を帯び、ころん、とテーブルに落ちる。


「え……!? り、リンゴ……?」


 驚いて見つめるキンカの目の前で、クロエはそのリンゴをひょいと手に取り、ぱくりとかじった。

「めちゃくちゃ甘い……おいしい!」


「いやいやいやいやいやっ! 今の何!? 絵からリンゴが出てきたんだけど!?」

キンカは思わず素っ頓狂な声をあげる。


 クロエは、頬を膨らませたまま、けろりと答えた。

「なんか、この手があれば、不思議となんでもできそうな気がして……命じたら出来たんだよ」


 そう言って見せた右手は、先ほどまでの輝きを失い、ただの小さな少女の手に戻っていた。


 シドが目を細め、驚愕を隠せない様子で呟く。

「……不思議じゃのう。クロエはなんともないのか?」


「うん、だいじょうぶ!」

クロエはにっこりと笑って見せる。


 そのとき、ソファに横になっていたハクアが、薄く目を開けた。

「そういえば……ハーちゃんとクロエ、変な悪魔に襲われたと思うんだけど……」


 まだ弱々しい声で問いかけるクロエに、ハクアは慌てて答える。

「うん……どっかいったみたいだから、大丈夫! キンカちゃんたちが助けに来てくれたから!」


 そう言って、ハクアはシドとキンカに目配せした。

 クロエの右手の力でヴァルガを消し去っていたという恐ろしい事実は――無邪気な妹に告げるわけにはいかなかった。


 ハクアとキンカにとって、ピュアで無垢なクロエは、大切に守るべき存在だったのだ。


「じゃあ……今日はなんか不思議な力も使っちゃったからか、もう眠い……寝るね!」

クロエは伸びをしてあくびをし、軽やかに自分の部屋へ戻っていった。


 残されたリビングには、シド、キンカ、そしてハクアの三人。

 沈黙を破ったのはシドだった。


「……ハクアとキンカに話がある」


 重苦しい声色。だが、すぐに首を振って続ける。

「いや、今日はもう遅い。日を改めよう。……今後の悪魔への対策についてじゃ」


 その言葉に、ハクアとキンカは互いに視線を交わした。

 胸の奥が重く沈む。だが、未来を見据えるしかない――。


 静かな夜の中、ギルドハウスのリビングには、不安と決意が入り混じった空気が漂っていた。

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