第108話 旅立ち
ランドの王都。朝の陽光に照らされ、石畳は白く輝き、中央広場には人々のざわめきが広がっていた。
その片隅で、ヒカルとナオ、そして小さなドラゴン――チャイが旅立ちの準備を整えていた。
見送りに現れたのは、ルミナスブレイブの面々。さらに、いまや王国顧問ユウキの後見人としての公務を終えたショーンと、精神生命体であるシドの姿もそこにあった。ちなみに、精神生命体といっても、見た目はただの人間である。
「……とうとう行くのですね、ヒカル殿。」
ショーンが静かに言葉をかけると、ヒカルは力強く頷いた。
仲間たちの前に立つヒカルとナオ。その隣に、なぜか当たり前のようにチャイが並んでいた。
「あっ……あんたまで何でそっちに立ってんのー!? こっちでしょ!」
レナがすかさずツッコミを入れる。
「あ……そういや、言うタイミングなくて忘れてたんだけど……実は、チャイも一緒に行くんだ。」
ヒカルは少しバツの悪そうな顔で説明を始めた。
チャイの家系は、特殊なドラゴンであり、ただの竜とは違っていた。
――ワールドそのものの化身。
大陸そのものが命を持ち、その魂を継ぐ存在がチャイの一族なのだ。
しかし、悪魔がこの地を脅かし始めたとき、チャイの母たちは誘拐されてしまった。
人間形態では力を十分に発揮できず、抗うことはできなかった。
そのときから、チャイはヒカルたちを陰ながら見ていた。
「この世界を救えるのは、この人たちだ」
そう確信し、特にヒカルの異質な力に気づいたのだ。
理を超えた力を持ちながら、なお善良で、誰かを守ろうとするその魂に――チャイは恋をした。
「恋しとるやないかーい!!」
レナが思わず全力で叫ぶ。
が、ヒカルはポカンとした顔で首をかしげる。
「ん? なんでレナが叫んでんだ……?」
当然、鈍感なヒカルはチャイの想いにも、レナの気持ちにもまったく気づいていなかった。
「……はぁ、ほんとに鈍いんだから」
ミナが小さくため息を漏らし、しかし横目にソウタの視線を感じて、その思いを胸の奥にそっと押し込んだ。
シドが口を開く。
「……ワールドの化身に選ばれた時点で、ヒカル、お前は救世主として歩む定めなのだろうな。チャイが共にいるのも必然よ。」
その声には、諦観と、それ以上の期待が込められていた。
「……チャイちゃんが一緒なら、少しは安心かな。」
ユウキがそう言うと、チャランとポランもうなずき、場の空気は少し和らいだ。
ただひとり、レナは唇を噛み、少しだけ頬をふくらませている。
「……べ、別に心配してるわけじゃないんだからね!」
その言葉にみんなが苦笑した。
やがて鐘の音が鳴り、出発の時が来た。
ヒカル、ナオ、そしてチャイの三人は、仲間たちに背を向けて歩き出す。
「絶対、帰ってきてね!」
レナの声が響いた。
振り返り、ヒカルは大きく手を振った。
「もちろんだ。絶対に帰る。――必ずな!」
ナオは緊張と期待の入り混じった表情でヒカルの隣に立ち、チャイは嬉しそうに翼を小さく広げて歩く。
最初の行き先はシーブルー王国。
まずは、知り合いとなった「黒姫」の咲を訪ね、その後、シドが紹介してくれた新たな仲間を探す。
こうして三人の新たな旅が始まった。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
ルミナスブレイブの物語は、一旦完結となります。
皆様のブックマークや評価が本当に励みになりました。
改めて感謝申し上げます!
**2025年10月2日追記**
第二章の構想がまとまりました。10月3日より連載再開となります。
第109話から新章となります。20年後の世界から始まります。




