第107話 ヒカルの新チートスキル
「じゃ、じゃあみんなで対応すればいいのでは!? 僧侶だって悪魔討伐に必要でしょ!?」
レナが即座に反応した。強がる声だったが、その瞳は涙に濡れていた。
ヒカルは視線を落とし、言いにくそうに続きを語る。
「これからの戦いは、悪魔との戦いになる。いままで以上に規格外のやつが出てくるかもしれない。どんなに威力があっても、魔装バリアを解かないと意味がない。……中には、バリアすらなく、純粋に“天使の力”がないと戦えないやつもいるらしい」
ナオがアイスの棒を持ったまま固まる。
「だから――ナオの天使の血か、俺の確定ダメージ《神裁》が戦いのベースになる。……それに、シドのじいさんの話じゃ、悪魔に対抗できる力を持った人が他にもいるらしい。シドの昔の仲間のつながりでな。その人たちと組んで、旅をすることになる」
ヒカルは少し間を置き、仲間たちを見回す。
「俺にとって、ルミナスブレイブは家族みたいなもんだ。だから……みんなを危険にさらしたくない」
「だからって!!……」
レナの声が裏返った。
ヒカルは小さく息を吐き、続ける。
「みんなの力は信じてる。けど、向き不向きの問題もある。この世界自体を守る力も必要だ。それを心から託せるのは……やっぱりお前らしかいないと思ってる」
レナはうつむき、肩を震わせた。
ナオは“とんでもないことになった”と現実感をなくした顔で、棒だけになったアイスをぼんやり見つめていた。
ヒカルが再び切り出す。
「……あと、もう一つみんなにお願いがある」
空気が張り詰める。
「俺は実は、《神裁》《神化》以外に、もうひとつアルティメットスキルを持ってる。……ずっと試してなかったけど、ダンジョンキングオーダーの仮想ダンジョンからテレポートしたとき、使ったのはそのスキルだ」
仲間たちが息をのむ。
「その名は――《レンタル》」
「れ、レンタル……?」
ミナが首を傾げる。
「ああ。《レンタル》は、俺を信頼してくれてる人から、その人の持つ能力を借りられる。スキルや魔法を使えるようになるんだ」
「じゃあ……ヒカル最強じゃん……」
ミナがぽかんとつぶやいた。
ヒカルは苦笑し、首を振る。
「そうでもない。たとえば、ミナの拘束スキルを借りても、ステータスまではレンタルできない。拘束時間の短縮とか、縛りの巧さとか、そういう技術までは俺のものにならないんだ」
「じゃあ……あのときのテレポーテーションは?」
ユウキが問いかける。
「正直、運だ。なんとか成功したけど……あれは奇跡に近かった。練習してればもっと安定するんだろうけどな」
「で、そのお願いって?」
ミナが首をかしげる。
「自由に使ってくれていいよ?」
「……どうしても自分に自信が持てないときは、代わりに対応してほしい」
ヒカルが静かに言った。
「どういうこと?」
ミナの声に、ヒカルは一拍おいてから打ち明けた。
「《レンタル》は、スキルだけじゃなく……みんなの“魂”もレンタルできる。シドのじいさんみたいに、精神生命体として召喚できるんだ」
「え……ちょっと! 私、魂抜かれるってこと!? あ、あたし無理無理!」
ミナが青ざめて身を引く。
ヒカルは慌てて手を振った。
「いや、そこは安心してくれ。100%安全……まぁ、たぶん……。オーダーが終わってからシドに協力してもらって、何度か練習したんだ。だから大丈夫」
ユウキが納得したように頷く。
「だから、ヒカルさん、ちょこちょこ王都に行ってたんですね。シドに会うために……」
すると、不意に声がした。
「わかった……召喚していいよ。召喚されれば、ヒカルにも会えるんでしょ?」
泣きはらした顔のレナだった。
「お、おう……」
ヒカルは不意を突かれて、少し戸惑う。
沈黙を破ったのはソウタだった。
「まぁ、そういうわけだ。みんな、有事のときはヒカルを助けてやってくれ。それと……ヒカルが《レンタル》をうまく使えるように、もうしばらく稽古をつけてやってほしい」
仲間たちは顔を見合わせ、やがて力強く頷いた。
こうしてヒカルは、出発に向けて《レンタル》と仲間たちのスキル・魔法を訓練する日々を送った。
ナオはというと、「今のうちに」とばかりに街のグルメを食べ歩き、幸せそうに笑っていた。
――そして、月日は流れ。
旅立ちの日は、すぐそこまで迫っていた。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
良ければブックマークと評価をお願いします。励みになります。




