第104話 ダンジョン崩壊
勝利の余韻に浸る間もなく、仮想ダンジョンの空気が揺らぎ始めた。
床が波打つように軋み、天井の魔法陣が軋むように光を散らす。
「……な、なんだ!?」ヒカルが剣を構え直す。
ユウキが顔をしかめた。「エネルギーの流れがおかしいです……。ネオダーゲリを倒した瞬間に、異常な魔力の余波が発生している!」
その異変に、すぐさま声が響いた。
「むむむむ……す、すまん……! ルミナスブレイブをみくびっていたようじゃ……!」
落ち着き払っていたはずのシド――王国顧問魔導士にして魔法の神様のような存在――が、珍しく慌てていた。
「仮想ダンジョンの空間に歪みが出ておる……! 本来ならネオダーゲリを倒した時点で外に出られるはずなのじゃが……」
「な、なんだって!?」ソウタが声を張り上げる。
場外――会場のギャラリーではすでに黒姫のパーティが帰還しており、観客たちは騒ぎ立てていた。
「一体大丈夫なのか!? ルミナスブレイブは帰ってこれるのか!?」
「うそだろ……!」
チャランとポランが手を取り合ってわめき散らし、チャイは魔法映像板に映る仲間を食い入るように見つめていた。
やがて――仮想ダンジョンの壁面に走るヒビから、漆黒の空間が滲み出す。
「……やば……」ミナが青ざめる。
「すまんが……外側からはなんともできんのじゃ……」シドの声が震える。
「ええええ!? ありえないんですけどーっ!」ミナが叫んだ。
「まだまだ読みたい漫画いっぱいあるし! 恋もまだまだこれからで――ああああああああああああああ!!!」
空間は急速に崩壊し、至るところから異次元の裂け目が口を開く。
「ユウキ! なんとかできないのか!」ヒカルが叫ぶ。
「……無理です! マジックオーケストラの負担で、テレポートが使えません! それに――空間が歪みすぎて、元の座標をつかめない……!」
全員が焦る中、ヒカルは一人、深く考え込む。
(……仕方ない。“あれ”を使うしかないか……)
「みんな! おれに近づいてくれ!! 時間がない!」
全員がヒカルの周りに駆け寄る。ヒカルは両手を合わせ、強烈な光を解き放った。
光は空間ごと飲み込み――気がつけば、彼らは王都の広場に立っていた。
「……ふぅぅぅぅ……なんとかなった……」大きく息を吐くヒカル。
仲間たちは互いの無事を確認し、次の瞬間――
「無事だああああああああああ!」
観客席から割れるような大歓声が響いた。
舞と咲の姉妹が抱き合い、涙を流している。
チャランとポランは飛び跳ねて叫び、チャイは翼を広げて大喜びだ。
そこに歩み寄る影がひとつ。シドだ。
「いやはや……君ならなんとかしてくれると思っとったのじゃ」
「おおおおおおおい!!」
ルミナスブレイブ全員が一斉にツッコんだ。
「ヒカル、いまの……どうやったの?」ナオが首をかしげる。
「テレポーテーション……でしたよね?」ユウキが戸惑う。
「でも僕は何もしてませんよ……」
「ヒカル、時空魔法まで使えるのか!?」ソウタが目を丸くする。
ヒカルは軽く肩をすくめ、「いや、そういうわけでもないんだけど……また今度話すよ、ははは……」と苦笑した。
――まずはこの瞬間を喜ぼう。
歓喜の輪がルミナスブレイブを包む。
その時、王が現れ、彼らがダンジョンキングオーダー・ワールド編のチャンピオンであることを高らかに告げた。
王都はこの日、最高の熱狂に包まれるのであった。
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