第103話 マジックオーケストラ!!!
「――マジックオーケストラ!!!」
ユウキが叫ぶと、その身体からあふれ出た光が舞い上がり、空間に白い影を次々と描き出した。
まるで分身のように、しかし確かに別の意志を持つ存在――ユウキにそっくりの光の生命体が三十三体、生み出された。
観客席が一斉にざわめき立つ。
「な、なんだ!? また分身魔法か!?」
「いや、違う……ただの分身じゃない……あれは……全員が本物の魔導士の力を持ってる……!」
「ありえねぇ! 三十三人分のユウキがいるってことか!?」
やがて、その三十三の影は整然と並び、まるでオーケストラの演奏者を束ねるようにユウキを中心に指揮を待つ体勢をとった。以降――彼らは「仮想指揮者」と呼ばれることになる。
◆仮想指揮者たちの布陣
ユウキが小さく腕を振ると、十一体の仮想指揮者が前に進み出る。
「――守れ!」
その瞬間、三千ずつのシールド魔法を束ね、合わせて三万三千の防壁が編み出された。
ネオダーゲリの放つ圧倒的な砲撃が襲いかかるが、次々と光の壁が張られ、音を立てて受け止めていく。
「バカな……あの悪魔の砲撃を……止めている!?」
観客が信じられない光景に叫ぶ。
残る二十二の仮想指揮者のうち、十一は後方で魔法陣を展開した。
「――支援だ」
ユウキの指示に従い、無数のデバフがネオダーゲリに襲いかかる。
時空魔法ストップ、スロウ、火力低下、移動遅延、防御低下――
あらゆる弱体化が一斉に重なり、巨悪の動きが目に見えて鈍っていった。
「ぐっ……身体が……お、重い……!」
ネオダーゲリは苦悶の声をあげる。
そして最後の十一人が一斉に杖を掲げた。
「――撃て!」
雷、炎、氷、風、光、闇――ありとあらゆる攻撃魔法が雨のように降り注ぎ、三万三千の魔法が怒涛のごとくネオダーゲリを打ち砕く。
◆終焉
もはやユウキは、一人で三十三人分の大魔導士を同時に操る存在となっていた。
仮想指揮者はそれぞれ独立した思考を持ちながらも、根幹はユウキと繋がり、見事な連携を見せつつも彼の意志に忠実に従う。
「カ、カーハッ……ガハァッ……!!」
巨体を揺さぶりながら、ネオダーゲリは立っていられなくなる。
ついに光に包まれ、その身体は一瞬で崩れ落ちた。
次の瞬間、融合していた姿が解かれ、ダーゲリ本体と、吸収されていた他の五人がバラバラに現れた。
もはやその姿は悪魔の皮を剥がされたかのように、ボロボロになった六人の魔族にすぎなかった。
観客席は爆発したような歓声に包まれる。
「勝った……! ルミナスブレイブが勝ったぞ!!」
「ありえない……あんな悪魔を倒すなんて!」
「まさか……ユウキがここまでの魔導士だったとは……!」
ギルド関係者、王国の重鎮、冒険者たち――誰もが立ち上がり、叫び、拍手を惜しまなかった。
そして、ヒカルたちは確かに見た。
仲間の力を束ね、己を犠牲にせず、それでいて全てを生かしたユウキの指揮を。
勝負はついた。
ネオダーゲリは倒れ、会場を包む緊張の糸が切れ、歓喜と驚愕の渦がそこに広がっていった。
――ルミナスブレイブの名は、この瞬間、誰の耳にも、誰の心にも深く刻まれたのだった。
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