第100話 ラスボス
「マジックセイムタイム・セット――1億!」
シドの口から飛び出した宣言に、ルミナスブレイブは全員が唖然とした。
「……え? え?」
「な、なにそれ……対処が……」
「いやいやいや、無理でしょ……!」
顔を見合わせたまま固まる六人。
そんな彼らに向かって、シドはあっさりと肩をすくめて言った。
「――冗談じゃ」
「お、おおいっ!」
「なんだこのじじい!」
「ユウキ! どうなってんの! あんたの育ての親でしょ!」
なぜか集中砲火を浴びるユウキ。
「ち、違います! 僕は悪くないですからあああ!」
彼の必死の弁解は、仲間のツッコミにかき消された。
シドはにやりと笑うと、杖を構え直す。
「――さて。次は本気じゃぞ」
再び場の空気が張りつめる。
誰もこの老人の次の一手を予測できない。
「いでよ! 悪魔の群れ――タガよ!」
床に黒々とした魔法陣が浮かび、六つの人影が現れる。
それはタガのギルドメンバーだった。
「……タガ!?」
全員が息を呑む。
だが、その姿はみるみる変貌していった。
角が生え、黒い翼が広がり、皮膚は赤黒く変色する。
人間だったはずの彼らは、異形の悪魔へと変わっていったのだ。
ひときわ大きな翼を持つ個体――かつてダーゲリと呼ばれた存在が、低く笑う。
「ふう……そこのじいさんには、ずっと正体を見破られていたらしいな」
「まあな。悪魔を1位にするつもりはないからの」
シドは涼しい顔で答える。
そしてルミナスブレイブを振り返り、真剣な声を放った。
「いいか、悪魔は黒姫の剣神だけではない。本当のタガのギルドメンバーはすでに殺され、こやつらが成り代わっておったのじゃ。ルシフェルが顕現して以来、時空間のあちこちにひずみが出来ておる」
「わかったけどさ……」ソウタが口を開く。
「そんなのじいさんがなんとかすればいいんじゃないのか? あんた一人でちょちょいのちょいだろ。俺たち六人がかりでも、相当きついぞ」
「……」ユウキも苦笑しながら呟く。
「マジックセイムタイム・セット1億……シドなら本気でやろうと思えばできた気がするし」
シドの目が鋭く光る。
「なんのためにオーダーを王国が開催しておるのか、分からんのか。――この世界を守れる者を探しておるのだ。そなたたちは既に選ばれておる。この世界の化身である“ドラゴン”の種族にな」
「……ドラゴン?」
全員が顔を見合わせる。
「え、なにそれ。チャイと関係あるの……?」
ミナが首をかしげた。
シドはそれ以上は語らず、笑みを浮かべて言い放つ。
「さあ、質問は一旦ここまでじゃ。そなたらの相手は、ワシではない。――ワシが用意したラスボスを受け取るが良い」
次の瞬間、六体の悪魔はダーゲリに吸い込まれるように融合し、ひとつの巨悪な悪魔へと姿を変えた。
黒炎をまとい、空間を揺るがすほどの禍々しさを放つ存在。
「じゃ、ワシはこ・の・へ・ん・で!」
「おおおおおおおおぉぉぉいいいいいっ!」
一斉に突っ込むルミナスブレイブ。
とんでもない悪魔が、目の前に現れてしまった。
「ふっ……やってやろうじゃないの」
ミナが光の鎖を構える。
「じいちゃん相手よりは、まだマシだろ」
ユウキが冷笑を浮かべる。
ヒカルは冷静に戦場を見据えた。
「爺さんには後で色々聞くとして……とりあえず、こいつをぶった押して、オーダー1位取るしかないな」
(――ゲーム時代にはなかった展開だ。やっぱり、この世界は全く同じじゃない……)
ヒカルの瞳が鋭く光る。
いざ、最後の勝負が始まる。
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