第99話 シド
石階段を降り切った瞬間、空気が変わった。
広大な石造りの大聖堂のような空間――。
天井は見えないほど高く、柱は幾何学模様の光を刻み、足元には淡い魔法陣が幾重にも重なっていた。
「ここが……第10層……」
レナが息を呑む。
その中央に、ひとりの人影が立っていた。
「……っ!」
ユウキの瞳が大きく揺れる。
「なんじゃなんじゃー。思ったより、時間がかかったんじゃな」
軽快な調子で、にこやかに笑う老紳士。
真っ白な長髪を後ろに束ね、深いローブをまとったその姿に、ユウキは思わず叫んだ。
「……シド!!?」
「えっ、シドって……もしかして、ユウキくんの育ての親の……!?」
ナオが驚愕の声を上げ、続けて皆も口々にどよめく。
「でも、たしか亡くなったはずじゃ……」ミナが首をかしげる。
老紳士はにこりと笑い、深々と一礼した。
「どうも皆さん、はじめまして。そしてここまで、お疲れ様ですな」
厳かな挨拶かと思いきや、すぐにまた軽快な口調へと戻る。
「ワシはシド。ランド王国顧問魔導士をやっとる。オーダーで使うこの仮想ダンジョン――ぜんぶ、ワシが作っとるんじゃ!」
「えええええええええええええええええ!!」
ルミナスブレイブ全員が揃って叫んだ。
衝撃。これまでの数々のオーダーの舞台、試練、敵の数々。
すべてが、この老人の手によって生み出されていたというのか。
「でも……亡くなったんじゃなかったのか?」ソウタが呆然とつぶやく。
「うむ、そのへんは追々話すとしよう。さて――」
老紳士は手を打ち、軽い調子で言い放つ。
「そろそろ、やろうかの!」
「ちょ、ちょっと待ってください! まだ聞きたいこと山ほど――」レナが言いかけるが、
「開始!」とシドの声がそれを遮った。
次の瞬間、彼の体はふわりと宙に浮かび上がった。
まるで重力が存在しないかのように、軽やかに。
細い瞳が一瞬、きらりと光る。
「マジックセイムタイム――セット、1億」
「……は?」
全員がぽかんと顔を見合わせる。
だが次の瞬間、空間そのものがうねりをあげた。
幾千幾万の魔法陣が天井から床まで浮かび上がり、互いに共鳴を始める。
「じょ、冗談……だろ……?」ユウキの声が震える。
「ようこそ、第10層へ」
シドの笑みは、どこまでも楽しげだった。
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