第10話 新たなる仲間、そして夢への誓い
シャトーの街門が見えたとき、夕暮れの光に照らされた城壁は黄金に輝き、まるで新たな冒険の舞台を歓迎しているように見えた。長旅を経て、五人は深い安堵の息を漏らす。
「……着いたな。無事で何よりだ」
ヒカルが前を見据えたまま呟く。
「えへへ~! やっと街! お腹すいたよぉ!」
ナオが大剣を背負いながら飛び跳ねるように喜んだ。
「まったく……戦闘中でも食べ物のこと考えてたでしょ」
レナが呆れ気味に肩をすくめる。
「図星かも…」
「図星じゃないの!」
二人がやり合う横で、ユウキが控えめに口を開いた。
「ですが……今回の依頼、本当に成功してよかったです。護送対象がまさかあの方だったとは……」
彼の視線の先には、豪奢な馬車から降りる中年の男。小太りでありながら、柔らかな笑顔と、何より人を安心させる眼差しを持っていた。
「諸君、本当にありがとう!」
商人――ビルが両手を広げて近づいてきた。
「私はビル。この“ワールド”で最も信頼される商人ギルドの長と呼ばれているが……いや、今日は一人の旅人として礼を言わせてくれ」
「え、えっ!? ギルドの長ぉ!?」
ナオが目を丸くする。
「へぇ……ただの商人じゃなかったってワケね」
レナが腕を組んでビルを見据える。
「ビルさん……。どうして護衛を付けなかったんですか?」
ユウキが問いかけると、ビルは苦笑した。
「この道は比較的安全だったんだよ。しかし最近、急成長している盗賊ギルドがあってね……私たちも油断していた。もし君たちが来なければどうなっていたことか」
「ふふん、私たちのおかげで助かったんだから、もっと感謝してよね!」
ミナが胸を張って笑う。
「感謝しているとも!」
ビルは豪快に笑い、言葉を続けた。
「ぜひ君たちを紹介したい人物がいる。三大ギルドのひとつ《トラベラント》のギルドマスター、ダイン殿だ」
「三大ギルド!?」
ユウキの目が見開かれる。
「それは……冒険者の頂点に立つ存在ではありませんか!」
「やったじゃん、ヒカル!」
ナオが嬉しそうに彼の肩を叩く。
「紹介されたら、いろんなチャンス広がるんじゃない?」
「……悪くないな」
ヒカルは静かに答えたが、その胸の奥には熱いものが灯り始めていた。
数時間後、彼らはトラベラントのギルド本部に通された。
石造りの重厚な扉が開き、現れたのは四十過ぎの男――鋭い眼光に白髪混じりの髭。シブさと風格を兼ね備えたオヤジ、ダインだった。
「よく来てくれた。ビルから聞いている……命の恩人たちだな」
低く響く声に、五人は思わず背筋を伸ばす。
「仕事を果たしただけです」
ヒカルが簡潔に答えると、ダインはニヤリと口元を緩めた。
「謙虚だな。しかし、その実力……私も礼をしたい。何か望みはあるか?」
一瞬、場が静まり返る。仲間たちがヒカルを見た。彼は深く息を吸い、ゆっくりと口を開いた。
「俺には夢がある。……自分のギルドを立ち上げ、エンドコンテンツ《ダンジョンキングオーダー》で優勝することだ」
「エンドコンテンツ……?」
ナオが首を傾げる。
ヒカルは仲間の方を見やり、言葉を続けた。
「それは、この“ワールド”で最も過酷で、そして最も名誉ある挑戦だ。六人パーティでダンジョンを攻略し、最速でクリアした者が覇者となる。個々の力だけじゃない。仲間との連携、チームワーク、すべてを試される試練だ」
その声には、前世での悔恨が滲んでいた。――個人では覇者となれた。だが、ギルド戦では三位止まり。届かなかった頂。
(今度こそ……仲間と共に)
「そこで……ギルマス、お願いがある。六人目の仲間を探している。ジョブは――チアガールだ」
「チアガール?」
レナが思わず吹き出した。
「なんでまたそんな……」
「応援職は誰にでもできると思われがちだが、極めれば戦局を変えるほどの力を持つ。だからこそ、人材を紹介してほしい」
ダインは腕を組み、しばし考えるように目を閉じた。
「……紹介自体は構わん。ただし、我がギルドを抜けてお前たちに付いていくかは、本人次第だ」
そのとき――。
「待ってましたァ! 俺が入ってあげるよ!」
バァンッ! と勢いよく扉が開かれた。
現れたのは、赤い学ラン風の服を纏った長身の青年。切れ長の目に爽やかな笑み、そしてやたらとキラキラした登場。
「ソウタ!? あんたなんでここにいんのよ!」
ミナが絶叫する。
「ミナぁ! 久しぶり! 運命感じちゃうよねぇ~? 幼馴染みが困ってるなら助けなきゃでしょ!」
ソウタは両手を広げてキメ顔をする。
「誰も困ってねぇし! てか来なくていいから!」
ミナが顔を真っ赤にして突っ込む。
「おやおや……面白い展開だな」
ダインが苦笑し、ビルも「はっはっは」と愉快そうに笑う。
「ソウタさん……ジョブは?」
ユウキが恐る恐る尋ねる。
「俺? チアガールの男版、“チアマン”だ!」
親指を立てるソウタ。
「チアマン!? なにその響き……ぷぷっ!」
ナオが吹き出す。
「笑うな! 立派なジョブなんだから!」
ソウタが真剣に返すと、ますます場は笑いに包まれる。
「ミナのためなら命だって張る! このパーティ、俺に任せとけ!」
「やだ……マジで面倒……」
ミナはため息をつきながらも、どこか安心したような表情を見せた。
「ふむ……本人のやる気は十分だ。どうだ、ヒカル?」
ダインが問う。
ヒカルは仲間の顔を順に見回した。ナオはニコニコ、レナは渋い顔、ユウキは真剣に観察、ミナは呆れ顔。
「……いいだろう。ソウタ、俺たちの仲間になれ」
「おうよ!」
ソウタは力強く拳を突き上げた。
こうして六人目が加わり、ついにパーティは揃った。
「決まりだな」
ヒカルは仲間たちに向き直った。
「俺たちはこれからギルドを立ち上げる。そして――ダンジョンキングオーダーで優勝する!」
「えへへ! 面白くなってきたー!」
「ふん、あんたらしい無茶な夢ね……でも悪くない」
「僕も、お供します!」
「しゃーねぇ、付き合ってやるか!」
「ミナと一緒なら、どこへでも!」
それぞれの声が重なり、熱い空気が場を包み込む。
新たなる仲間、ソウタの加入。
ヒカルの夢――ギルド設立、そして覇者への挑戦。
彼らの物語は、ここからさらに加速していくのだった。
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