解剖と花占い
深夜、王都外れの廃工房。レオンの肩の手当てをしながら、私はヤロスの肝臓サンプルを解剖台に広げた。視聴者八万、サイエンスタグでトレンド一位。
顕微鏡投影で見えた結晶構造は〈灰竜の舌〉のアルカロイドと似て非なるもの。私は即席反応試剤を調合し滴下――青から深紅へ変色。「これは合成毒〈レッドラグナ〉。天然より百倍強力」
レオンが低く唸る。「王都全土に撒けば王家も滅ぶな」
私は懸念を配信で共有し、視聴者アンケート機能で協力者を募る。薬師、冒険者、市民が続々と情報提供を申し出る様は“群衆捜査”そのもの。
夜明け、チャットに匿名リーク《錬金ギルドの地下に〈白蛇教〉の祈祷室》の座標が投稿される。私は花占いのように陽だまり花の花弁を一枚ずつちぎり、行くか退くかをポプラに託す。スライムが花弁を飲み込み輝く金色――“行け”のサイン。
準備を整えた私たちは、辺境薬草園と王都地下を結ぶ古い鉱山トンネルを突き止め、潜入計画を開始する。
チャットに大量の《投げ銭付き応援》が降り注ぐ中、レオンはカメラを調整し呟いた。「ライブ史上最高の“ざまぁ”にしてやろうぜ」
私は手袋を締めながら微笑む。「この解剖はまだ序章よ。王都の心臓を開き、腐った毒を掬い上げるまで止まらない」
画面の向こうで真っ赤に変わるポプラ。次回予告──“地下聖堂レイド”が始まる。