第一の犠牲者
翌朝、王都発の急報が届く。錬金ギルド幹部ヤロス・ディーンが自室で絶命、舌が灰色に変色していたという。私は即座に診断書を見たが、原因欄は〈急性心不全〉と改ざんされている。
視聴者が「現場配信を!」と騒ぐ中、私はレオンと王都へ逆戻りする決断を下した。だが公道は通行証が必要。そこで私たちは“薬草園リフォーム動画”で知り合った荷馬車職人夫妻の護衛を兼ね潜入。
王都南門の検閲所。衛兵が私の顔を見て懸賞金ポスターと見比べる。レオンがとっさに〈美顔フィルター付きヘルメット〉を差し出し「新作魔導カメラのデモです」と誤魔化し通過。チャット欄は爆笑。
夜陰、ギルド本部裏手の医務室に忍び込み遺体を確認。灰色の舌先には黒い斑点――典型的な〈灰竜の舌〉中毒症状。私はマイクをオンにし視聴者七万へ検証をライブ配信。
ポプラを遺体の唾液に触れさせ変色を確認後、さらに肝臓摘出。内部に紫色の線条壊死を見つけ「これは人工精製されたアルカロイド毒素」と断定。チャットが《王太子の差し金確定》で炎上。
直後、警報ベル。医務室の窓が爆破され白煙弾が放り込まれた。火炎ではなく催涙成分――だが灰竜の舌の粉も混ぜられている。レオンが私を抱え屋上へ脱出する途中、ギルドの密使が放った魔力弾が肩を掠めた。
血の匂いでポプラが赤く変色、毒素検知。私は彼の傷口へ即席の〈銀柳軟膏〉を塗り止血。「痛みは?」と聞くとレオンは私を見上げ「あとでキスで治るらしいな」と冗談。配信コメントは即座に《尊い》で埋まる。
逃走中、ギルドの屋根越しに巨大な蒸留塔が映る。それは新型毒ガス兵器〈ミストテロス〉の試験施設だった――。