第三話
店側ではなく裏口に俺たちは周った。チャイムを鳴らすとすぐに中から返事があった。
「はいは~い、どちらさんですか。できれば店の方に周ってくれませんか」
「――月は東に」
中からの返事には答えず俺はそう口にする。
「日は西に。夜明け前より」
すぐに返事が返ってきた。そして今度向こうの言ったことに俺が返事をする
「瑠璃色な」
鍵をあける音がしてドアが開く。
「久しぶりだな。水樹」
「おう。少し世話になるぞ、シュウ」
「とりあえず上がれ。詳しい話はそのあとだ。店を閉めてくるから居間にでもいてくれ」
そう言ってシュウは店側に向かっていった。
「えっと、今の人がそうなの?」
「ああ。如月秀一っていってな。俺はシュウって呼んでる……上がって待つとするか」
「うん」
下水を通ってきたことを知った如月さんは私たちにお風呂を貸してくれた。先に私が入浴を済まして居間に戻ってくると入れ替わりで広野がお風呂に向かった。
「君がシェンツァか……なるほど、あちこちに流れてる噂にもある程度の信用性はあるみたいだ」
如月さんが私に話しかけながらお茶を入れてくれた。
「それは年齢と外見の違いとかそんなところ?」
「それ以外にも噂はあるけどね。たとえば一生を培養液の中で過ごしているとか実はただの人工知能じゃないか、とか」
「……人間扱いはしてもらえないようね」
「信じがたい話ではあるからね…………何があったのかはさっき、水樹から聞いた」
私は「そう」と答える。私たちの事情を知った上でここに居させてもらってる。そして彼はそのことについて深く触れてこないところがなんとなく広野がやることと似ている。
「広野と如月さんは昔からの知り合いと聞いてるけど……どう?昔話をしてみる気はない?」
「ただの旧友ってだけさ。それ以上のことは本人に聞くのが一番だ。な、水樹」
後ろを振り返ると広野が立っていた。いつから居たのかは分からないけどできればふだんから気配を消すのはやめてほしい……
「何が起きてるのかは理解した。んで、お前はこれからどうするつもりだ?」
如月さんが広野の分もお茶を淹れながら訊ねる。
「行先は決めてある。確か研修時代に行った山が会ったろ、あそこだ」
「何となく覚えはあるが……そんな隠れ住めるような場所か?」
「俺は個人で動いてたからその時にさらに山を登ったんだよ。そこにも同じような小屋とかが会ってな。上部にも報告しなかったから大丈夫だと思う」
「なるほど。それで、ココに来た目的は?」
「情報と足、それと武器の整備……ってところだ」
その言葉に如月さんは呆れたような顔をした。けど今度はため息と一緒に諦めた表情をして頷いた。
「明日の朝まででいいな……情報と足は用意してやるから整備は工房を勝手に使ってくれ」
「じゃあさっそく借りるぞ。シェンツァ、お前はどうする?」
それまで聞き流していた私に広野が声をかけてくる。正直ちょっと眠りそうだったから反応がちょっと遅れた。
私が如月さんの方を手伝うことを伝えると広野は「分かった」と言って工房に向かった。
「手伝うって言ったけど私が何かするようなことはある?」
近くのパソコンに向かおうとした如月さんに声をかける。
「なら少しやってもらおうかな。是非ともシェンツァの腕前を見てみたいし」
「勉強になるといいわね」
調べるべきものは目的地まで最も安全なルート、それに適した移動方法、それと目的地付近の警備状況。ルートと移動方法については普通に調べることができた。後はいくつかのルートから警備状況と照らし合わせて決めればいい。
「軍部にハックするけどいいの?一応逆探知への対策はするけど」
「任せるよ。俺の方法よりいいやり方が知りたいし」
「そう?けど亜流よ、私のやり方は」
いくつか下準備をしてから軍のデータベースへアクセスをする。もともと電子機器に頼った社会をつくるときにデータ化する危険は分かっていたこと。だから軍のセキュリティ管理については私がすべて補完していた。そう、本来なら私が管理していなかった部分についても、だ。
簡単なパズルを解くようにしてアクセスしていく。
「自分の腕が情けなく見えてくるな……これは、お礼はしないとな」
「ここで私たちの力になってくれるだけで十分よ」
「いや、これはお礼というより知っておいてほしいからな……水樹の傍にいてくれるならな」
その言葉に私のタイピングの音は止まった。
私が知りたかったこと。広野について教えてくれるというのだから。
ども、カイトです。
2週間ぶりに更新でっす
長らくお待たせしました……ほんとうにお待たせしました
ようやく復活できました。
自分でも何を書いていたのかを忘れるほど長い時間でした。
もうあとがきを何を書けばいいのかもわからなくなりました。ははは
もう詳しくはブログでお願いします
http://kaito721.blog122.fc2.com/
では、ここまで読んでくださった皆さんに感謝を