第五話
相手は戦意喪失してるが、そんなことお構いなしにトモスは続ける。
「いかにも、私は第二王子である! しかし、それは今関係ない! 私は友人の汚名をそそぐ為にこの場で決闘を申し込んでいるに過ぎない!」
いや、関係大ありだよ!
確かに、貴族相手でも決闘はありだけど。今まで王族と決闘した人間なんていないから!
そんな歴史に名を刻む様なこと即決できるわけないでしょ?
「おいおい、噓だろ……トモス様って言ったらあの、冷血王子が唯一溺愛する弟じゃねぇかよ……ど、どうしよう……絶対殺される」
おお、かわいそうに……完全にビビってぼそぼそ独り言言い始めちゃったよ。
まぁ、トモスの優しさや優秀さは市民にも広まっているからトモス自体は問題ないだろうけど、問題はトモスの兄だよねー
あの人、めっちゃ怖くて政敵、敵対した人間にはとことん苛烈な処罰を与えるからねぇ……
他国の上層部にまでビビられているし、本当に微塵も容赦ない人だからなぁ
まぁ、理不尽な事はしないし、多分この決闘をしてトモスを殺さない限り負けても口は出さないと思う。
トモスの意思を尊重する人だし、でもそんな事市民が知ってるわけないもんなぁ
てか普通トモスほど優秀な弟がいたら、自身の王座を心配して排除しようなものだがモース様は一切そんなそぶりは見せず幼少期から大変な可愛がりを見せている。
私も小さいころ会ったが、トモスと仲良く遊んでいるのを見て嫉妬したのだろう。
いつも眉間に皺を寄せて私を見ていた。
と、まあそんなモース様のブラコンぶりはほぼ全国民が知っている。
この冒険者も知っているのだろう、顔色が完全にいっちゃってる。
どうする? どうすんの冒険者?
「……と! と、まあ! こんな風に綺麗な女性連れを馬鹿にして絡んでくる、失礼な冒険者も多いです! ……ちゅ、注意してくださいね? けっこうバカな奴が多くて困っているんですよ。……ぼ、僕みたいに、新人の為に敢えて絡んで常識を教えるくらいなら、いいですけどね?」
「……」
「で、でも、……冗談、おふざけ、お遊びなのに、トモス様のお連れのお美しい女性に対してブスと言ってしまったのは、正式に謝罪させてください! 本当に! 本当に! マジで! 本当にごめんなさい!」
「……」
「で、ではここらで部外者は失礼します! 今あった出来事はレポートに載せないでくださいね! 失礼します!」
おぉ、そう回避してきたか……回避できてるか微妙だけど……そして逃げ足めっちゃ早いな……
まぁ、私はすっきりしたからいいけど……
「あ、ちょっと……」
でも、トモスはそうもいかないよねぇ……
この雰囲気で相手にいなくなられたら困っちゃうよね
トモスは抜けている所はあるけど、馬鹿じゃないから今のがモース様にビビって逃げって行ったってことはわかっている。
だから、王族の名を……兄の名を使って退けてしまったとでも考えているのかな?
それも含めてトモスの力なんだけど、男の子はそうもいかないよね?
「トモス、ありがとね? ちょっと怖かったから嬉しかった……でも、少し褒め過ぎじゃない? 恥ずかしいんだけど?」
「え? ……あ! あれは……いや……なんて言うか言葉の綾というか……いや! けっして嘘ってわけじゃないんだけど……」
「……ホテルの件も?」
「うぇ? あれは! 本当に……」
「はいはい……わかってるわよ。大丈夫よ」
「……てか、本当は俺の力だけでミラーを守りたかったんだ……」
「馬鹿! 何言ってんのよ。……しっかりあなたに守ってもらったわよ? ありがとう……あなたが王子様に見えたわ?」
「俺一応第二王子なんだけど……」
「あら? そうだったわね? じゃあ王子様……思わぬところで時間喰っちゃったから、早くギルドマスターに話を聞きに行きましょう? エスコートしてくださる?」
「……麗しきお嬢様、トモス第二王子がエスコートさせて頂きます。こちらへどうぞ」
「「……」」
「「ははははは」」
「はぁ……ふざけてないで行きましょう」
「ミラーが初めにふざけたんだろ!」
私たちはギルドマスターの話を聞き、レポートをまとめ無事提出ができた。
……だが数日後、王へ報告に行くと最強最古の魔王が復活したと知らされる事になる
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