幸運の魔族らしいっす
『異世界転生』
それは、現実世界から異世界に移ってしまう事。
けれどその逆もあり得るのでは……と魔族の俺が思った、そんなお話。
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俺の名前は、ジェルダロッテ。
魔族で、とある国の一部を治める一員だった。
そんな俺が、殺された。
間違いなく仲間に裏切られて反逆を起こされたのがキッカケだ。
色々無茶な言い様をしていたから、そんな事が起きるのは……分かっていた。
十二分に長生きしたし、もう未練は無いと思っていたのだが……
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『……聞こえますか。』
目を開けると、そこには女神?女神っぽい人がいる。
あれ、俺……死んだはずじゃなかったのか?
『返事をなさい!貴方は幸運に恵まれた方、なのよ!』
ずいぶん乱暴な言い方だな。
「……俺、死んだんじゃねーのかよ。」
『だから、幸運に……』
「分かった、分かった。……で、幸運の俺がどうしたと?」
『貴方には、別世界で生きる権利を与えます。』
「………ハァ!?」
何でまた、こんな魔族の俺がッ!?
『女神会議で決まった事よ。反論は許すまじー。』
言い方がちょいちょいおかしいが……まあ、別に良いのかな。
『それではっ!転生開始っ!』
目の前が暗くなった。
(転生しゅーりょー。それでは、第二の人生楽しんでねっ)
その声で、俺は目を再び開けた。
ここは、なんかの部屋?
身体に違和感を感じる。
何だこれ……身軽になった気がする……
自分の手を見る。
………手、ほっそ!細すぎるぜ。
その手で顔を触る。
………顔、ほっそ!細すぎるぜ。
「とりあえず、鏡を……」
姿鏡があったので、それを見ると……
「 な ん じ ゃ こ り ゃ あ ! 」
身軽どころじゃねぇ!随分ほっそりしている!
こんなの俺じゃねぇよ!
それに、この格好はなんだ!?
ネクタイ……ズボン……?
「……で、俺の名前はなんだ?」
ふと我に戻った俺は、そう思った。
前世の記憶じゃあ通用しない、そうは感じていた。
テーブルの上に、紙が置いてある。
「なになに……?『稲波智 (いなばさとる) と言う名前で、高校生として日本で過ごしてね。女神のめっちゃんより。』」
ますます意味がわからなくなった俺……
どうすりゃあ良いってんだ、この状況。
まぁ、深く考えねぇで過ごそっかな!面白そうだし!