頂点種族、我。別世界の怪物を倒したら英雄となった
久しぶりです
「退屈だ!」
場所は天界。数多の神々が住まう世界。そんな世界で、一際立派な神殿に男はいた。
男はここ、天界に住まう神々の中でも、隔絶した力を持っていた。
男の名は、武
武と書いて、タケルと読む。
これは、そんな神族の中でも頂点に立つ武が多くの世界に遊びに行く話。
始まり〜始まり〜
我の名前は武、黒髪で身体はスラっとしていて、自分で言うのもなんだが、超絶イケメンだ。
普段は細い身体に変身しているのだが、強敵(ギリシャ系の神族)との闘いには、本来の筋肉ムキムキの姿を解放しながら拳でやり合っている。
我は退屈していた。毎日のように同じ様な事で時間を過ごして、変わることのないのんびりとした光景が延々と続いてく。
昔は楽しかった。いろんな神々が我に挨拶をしに来たり、我と手合わせを願って、それに応えたりと毎日が刺激的だった。
だが、最近ではめっきり来なくなってしまった。何故だろうか・・・
我はそう悩んでいる時に、我の神殿で働いている侍女(天使)達の話し合いが聞こえて来た。
「ねぇー、アレやった?凄い面白いよね!こんな退屈な仕事で困っていたけど、コレでアレが出来るのなら、むしろ快適な仕事だわ〜。」
「マジでそれ!コレでアレが観れるのならねぇ〜笑笑。はぁ、早く更新して欲しいわぁ」
なにやら侍女達は楽しみにしている事があるらしい。それにしても、我の神殿と我の身のまわりの世話を退屈と言うなんて、許せんな。
少し驚かしてやろうか。なんて思いながら我は2人に気配を勘づかれない様に極限にまで気配を薄めて、後ろを取った。
「おーい、何の話をしているのだ?」
我は侍女の肩を軽く叩いて、話しかけた。
「ひいっ!武様!いつから?いらしたので?」
「いや、今しがた来たところだ。面白そうな話が聞こえたのでな。それで、アレやらコレとはどういうものなのだ?」
「あー!そうなんですね!えぇと、アレとはスマートフォンで、コレとはそのスマートフォンに付いている、gotubeという色んな神々が出している動画の事ですよ!」
(うわぁ、退屈って聞かれてないよね!?良かったぁー。てか、今時の流行も知らないのか武様は。)
と、侍女は明るく説明しながらも内心ではバレてないと思っているのだが、我は良い情報を教えてくれた代わりに、あえて指摘する事はやめにした。
侍女2人と別れた我は、早速スマートフォンなる物を手に入れるために、それを販売している商業の神の所へ足を運んだ。
ありとあらゆる物が揃っているヘルメス商店!
そんな胡散臭い様なキャッチフレーズの店へ我はやって来た。
だが、我はヘルメスは信用できる神だと知っているので、ここへ来たのだが。
というか、天界で商店はココにしか存在しない。
我は自動ドアをくぐり、ヘルメスとあいまみえた。
「よっ、久しぶりだな。ヘルメス!」
「げっ、武様。おっと、これは、これは!いらっしゃいませ!武様。本日はどのような御用で?」
「いやぁ、スマートフォンなるものを手に入れにな!」
「なるほど!では、どのような機種に致しますか?画質や回線など組み合わせが多種多様ですが。」
「んー、使いやすいのが欲しいな!」
「それでしたら、こちらになりますね!godPro Plus。こちらの機種は使い勝手も良く、画質も今までとは全く違う物ですよ!ですが、少しだけお値段も・・「買った!」張りますが。って、え?」
「買うと言っておるだろう?早やく渡してくれや!」
「はい、かしこまりました。こちらで設定はやっておきます!お支払い方法はどのように致しましょうか?物物?クレカ?」
「物物交換じゃ。ほら、この宝石やるでな。昔辺獄で暴れていた龍の宝玉じゃ。」
「うぇっ!?こんな物をいただいてよろしいので?いや、ありがたいのですが。」
「良いと言っておるだろ?ほらお前さんの店員が持ってきたぞ。我にスマートフォンを持たせなさい。」
「あぁ、はい。ではどうぞ。少しお聞きしますが、何のためにスマートフォンをお使いになるので?」
「決まっとるだろう?godtubeじゃ。侍女の話では動画を撮り、それをアップする事で人気になったり、観るだけでも面白いとか。やらないわけにはいかんじゃろ?」
「はぁ、そうなんですね。ではお気をつけて。」
ヘルメスは、godtubeに上げている神は変人ならぬ変神ばかりだと、伝えようか迷ったが、自身も武の動画に興味があったため、口を噤んだ。
我はヘルメスの店から自宅の神殿に帰り早速、godtubeを観てみた。すると、いろんな神が動画をあげているではないか。
だが、それにしても格の低い神が多いな、と我は思ったが、そんなもんかと頭を振り、思考を振り払った。
なになに〜、【異世界へ行って無双してみた笑笑part21】
なるほど、最近は異世界に行くのが流行っとるのか。それにしても、楽しそうにしておるのぉ。
よし、決めた。我も異世界に行き無双してやるか!
善は急げじゃ。早速動画を撮りに異世界に行く事にした。その旨を侍女に伝えた。
「ちょっくら、異世界行ってくる!」
我は軽く手を振りながら、侍女に言った後、空間をねじ曲げワープした。
「はぁー?」
「なにやら侍女の呆れた声が聞こえた気もしたが、気のせいじゃろ。」
久しぶりの刺激に我は期待を膨らませながら、今から行く世界を選別していた。
えぇとぉ?魔法でも、科学でも無い、氣を使用する世界?面白いのぉ。そこ行くか
行き先を決めた我は、早速その世界に繋げて向かった。
「頂点種族、我とうちゃーく」
ついて早々に我の視界に飛び込んで来たものは、8つの首を持った、山のように大きな蛇と人間少々、それに祠?なんじゃこれは。
ついて早々カオスじゃ。って、これは動画チャンスなのでは?我、天才。
録画を始めた我。そこに人間から声をかけられた。
「おーい、そこのお人気を付けなされ!この怪物、ヤマタノオロチは見境なく食い尽くす。早くできるだけ遠くへお逃げ下さい。」
そう、我に話しかける坊主の集団。なにやら白いモヤっとしたものを身体に纏いながら蛇との攻防をしているようだった。
ほぅ、あれが氣というものか。微弱ながらも力を感じるのぉ。
では、我も良いものを見せてもらったお礼に、少しばかり力を見せよう。
ふんぬっ
「シュッバ!」
頂点種族、我。手刀を繰り出す。
なんと、手刀だけで、あの蛇の首が全て切れてしまった上に、勢い余って後ろの山すら真っ二つにしてしまった。
「ありゃ。頂点種族、我。力の加減ミスる」
首が消え失せた蛇はズドォンと音を立てて地に崩れ落ちた。
「なんと!?」「あぁ、神のお使い様じゃ」「ありがたやぁ」「恐ろしく速い手刀、俺でなきゃ見逃しちゃうね」
ふむ、この世界の連中は少しばかり弱いらしい。
そんな事を考えているうちに、坊主の1人が話しかけて来た。
「失礼します。名のあるお方だとは思いますが、よろしければお聞かせいただいても、よろしいでしょうか?」
「いいよー、飯奢ってくれたらなー」
これが、後の世に伝わる古事記の「ヤマタノオロチとヤマトタケル」のお話である。