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情報屋 バックス

アッシュが再び住処である橋に戻って来たときには、日が真上から降り注いでいた。

少し俯き気味に歩いていたアッシュには、そこに一人の男が立っていることに、目を向けずとも分かっていた。


「よぉ、あんたかい。いいネタでもあるのかい?」


「相変わらず生意気なガキだぜ。ふてぶてしくて可愛げのねぇ」


そこに立っていたのは小太りな中年男だった。

豊かなヒゲを口の周辺に生やし、団子のような鼻が特徴的だ。

ハンチング帽もかぶっていることから表情は分かりにくい。

着古したデニムからはサスペンダーが肩にかけて伸びており、薄汚れた白いワイシャツは見事な太鼓腹で突っ張っている。

一見すると炭鉱夫と思われる格好をしている。

男のアッシュに対する言葉は乱暴であっても、口調は親しげでどこか楽しんでいるニュアンスがあった。

彼は所謂【情報屋】であった。

名はバックスと言った。

彼とはアッシュがここに来た時の付き合いになる。

彼の提案する任務をこなすことでアッシュは生計を立てていた。

身一つでアッシュがここに来た時、彼は生きる術を持っていなかった。

【波長】を頼りにバックスを突き止め、強引に依頼を引き受けると、即座に成し遂げたことでことで力を認めさせたという経緯がある。

ここでは割愛するが。


「とりあえず日が眩しいからお前の寝床を貸してくれや」


「おう、いいぜ。勝手に上がってればよかったのによ」


アッシュはぞんざいに言うと土手を降りて橋の下へと歩いていく。


「何言ってやがる!一度そうした俺を不審者と間違えて殴りかかって来やがったクセによ!」


後に続く男はツバを飛ばして叫ぶ。当時のことを思い出したのか左の頬を無造作にこすっている。


「そうだったっけ?覚えてねぇな」


からかうような調子でとぼけてアッシュは腰を下ろす。


「本当に肝の据わった野郎だぜ。全く将来が楽しみだよ。俺は」


そう言って男もアッシュの対面に少し距離を置いてあぐらをかく。

アッシュと男の距離はお互いにここが貧民街ということを忘れていない証拠だ。

友人ではなく仕事仲間である以上、裏切りや不意打ちの可能性は捨てきれないことをここの生活が長い者ほど忘れない。。


「そんで、今日持ってきたネタはどんなだ?」


「おう、色々あるんだがお前向きなのは2つだな。一つは尾行ものだ。上流階級のお偉いさんの動向が知りたいんだと。もう一つは警護だな。こっちは尾行より金はいいが、正直胡散臭いぞ。護衛者の素性は秘密で敵対する勢力も不透明だ。何より依頼者が女だったんだが、果たして提示した金を持ってるのかいまいち確信が持てねぇ。着てたもんは上等だったんだがよ。ハッタリかもしれないからな。訳ありの匂いがしたぜ、あれは。」


「ほぉ、おっさんがそんなに警戒するなんてよっぽどのことじゃねぇか。ならそっちの怪しい方で良いぜ」


足を組んで両手を枕に横になるアッシュは不敵な表情で答える。

まるでゲームを楽しむような調子だ。


「お前の適正を考えると尾行の方が楽だとは思うがな。まぁ、お前がいいのなら護衛の話を進めとくぞ?明日の今くらいの時間に東区域の市場で護衛主と会うことになるはずだ」


「おう、それで構わねぇよ。厄介事でもおっさんは別に困らねぇだろ?久々に楽しい任務になりそうじゃねぇか」


話は終わりだとばかりにアッシュは目をつむる。


「直接俺に被害はでねぇけどよ、お前に紹介するのは俺なんだからよ。万が一があったら寝覚めがわりぃだろうが。まだガキなんだから無茶だけはするんじゃねぇぞ」


自分の命を軽く見るアッシュに男は忠告する。

いくら単なるギブアンドテイクの仕事仲間とはいえ、2年もの付き合いだ。

彼にも情というものがあるのだろう。

そういう点で言えば彼は貧民街では変わり者なのかもしれない。


「なんだよ。柄にもねぇこと言いやがって。少し丸くなったんじゃねえか?」


片方の口をつり上げて馬鹿にする。


「バカヤローが。単なる駒としか見てねぇよ。終わったらもっと過酷なのを紹介してやる予定だから覚悟しておけよ」


「ハッ、それは楽しみじゃねぇか」


お互いに視線を合わせニヤリと笑い合う。

明日の朝、依頼内容の確認にもう一度訪れると言い男は去って行った。

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