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新居と大男たち

そのまま二人は並んで歩き貧民街へとたどり着く。

『貧民街』と称されてはいるものの、マルセーロの都市から正式に区画を設けられて作られた場所ではない。

都市として繁栄している分その影も濃く、自然と行くアテのない最下層民が集まって出来上がったのが貧民街であった。

マルセーロの都市としても犯罪率の高い所得のない連中を一箇所に集めることだできて、都合がいいようだ。

人の流入が多いのは何も中流階級以上の都市部に限ったことではない。

貧民街でも熾烈な場所取りが日夜行われており、アッシュとディリードは2年前から自分たちの居場所を何とか守り続けていた。

もともと知識はあるが力が弱居く場所を奪われ続けていたディリードに、力を貸すことで場所を奪い返したのが、二人の縁であった。

そして何かと喧嘩っ早いアッシュの諌めるのに、ディリードの持つ知識と人望が大いに役に立った。

そんな2人の居場所が橋の下であった。

正確に言うなら居場所だった。

つい先日ディリードは貯めたお金で貧民街に一部屋借りる目処がつき、住まいを変えたばかりであった。


「本当にいいのか?お前が望めば一緒に住むこともできるんだぞ?」


ディリードの借りた部屋は既に通り過ぎている、彼がここに来た理由は会話が弾んだ訳ではなく、アッシュを自分の新居に誘うためであった。

彼にそのことを言っても認めはしないだろうが。


「はっ!男と狭い部屋で一緒のどこが楽しいんだよ!俺はここが好きだからほっとけ」


ゴロンと両手で枕を作り横になってそっぽを向く

「この前まで僕とここで2人でいただろうが!全くひねくれ者なんだから」


深い溜め息をついて呆れ果てるディリード。

この話はここ最近アッシュと会うたびに話しているが、毎度同じ答えが返ってくる。


「それじゃあ僕は帰るから、また明日な」


また明日も誘うからなという語尾が付いていそうなセリフを残しディリードは、午後の仕事のため足早に返っていった。


「おう!また明日な!」


腸詰めを頬張りながらアッシュはディリードに別れを告げた。


「・・・・・・・・・・・・・・」


ポツンと一人取り残されたアッシュの眉間は先程までと違い、深いシワが刻まれている。

「さてと・・・・尻拭いに行ってくるか」


やれやれと重い腰を上げるように緩慢な動作で立ち上がる。

腸詰めを無理やりねじ込むように口に入れると、ディリードと去った方角に歩き出した。


ディリードの新しい住まいはアッシュのいる橋の川上に位置する、レンガでできた5階建でのボロいアパートだった。

その3階にディリードは移り住んでいた。

橋との距離は歩いて10分ほど。

その道沿いに小汚い男が2人アパートの様子をうかがうように立っている。

何か良からぬことを企てているのは見るからに明らかだ。

しかし、貧困街でのその光景は日常の一コマでしかない。

路上で寝ている者や喧嘩している者、走り回っている子供たち。

ろくに舗装もされていない道にはゴミが散乱している。

大別してしまえばここに住まう者たちは皆犯罪者予備軍でしかないのだ。

そんな喧騒の中、アッシュは迷うことなくアパートの前の2人組の男たちの背後に近づいて行く。

まるで散歩ついでのような足取りだった。


「なぁ、ディリードはこれから仕事なんだよ。大人しく帰ってくんねぇか?」


話しかけられると思っていなかったのか、二人ともビクッと肩を震わせる。


「何だこのガキは!?驚かすんじゃねぇよ!!」


二人ともアッシュより背が高いが、一際大柄な男が怒鳴りつける。


「図体はでかいくせに小さなこと言うんじゃねぇよ」


面倒臭そうにアッシュが答える。


「ああ、喧嘩売ってんのかガキが!俺たちはここで話してんだから邪魔すんじゃねぇよ」

「だ・か・ら!ディリードの金目当ての話しだろ?喧嘩売ってんだから察しろよ」


いい加減話すのも億劫になったのかアッシュの眉間のシワがますます深くなる。


「あにぃ、面倒だからこいつぶっ殺してからにしようぜ」


大人しく話しを聞いていた横にデカイ方の男が口を挟む。

口元がだらしなくヨダレが垂れている。

瞳もそれぞれが別の方角を見ており焦点が合っていない。


「ったくお前は言い出したら聞かねぇからな」


しょうがねぇやつだと言いながら大柄な男はアッシュに一歩近づく。


「端から聞く耳なんてねぇだろ。こんな頭のわるそうなやつに」


口の端をつり上げ挑発するアッシュ。

その言葉が彼らのゴング代わりとなった。

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