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「アレは貴私じゃないわ。元々死んだ人間よ。」


どういう意味なのか分かりかねて、サラはじっと青い瞳を見つめる。


「名前を知ってるなら、貴私が何をしてたかも知ってるはずよ。」


「……死者を操ってじぶんのみがわりにしたっていうの?」


サラは、信じられないという顔で言ったが、アマルティアは大したことないといった素振りで話を続ける。


「彼がそれを望んだのよ。彼は二度死んだの。それでやっと悪魔から解放された。貴君達は貴私が呪いを撒いていると思っているようだけど、貴私はいつでも救済の為に動いていているのだから。」


「……私を洗脳するつもりかしら?」


何かを悟るように、サラは言い放つ。


「……まあ、まちがってないわ。感の鋭すぎる御嬢様に免じて、嘘か真か考える権利をあげましょう。」


何様のつもりなの……こいつ。


「貴私は誰も殺してないわ。貴私は誰も悪魔にしてないわ。貴私に、愛が無いのは、嘘。ただ、特殊なだけ。」


男の顔は真剣だった。


「貴私が死体しか愛せなかっただけよ……。」


……浮上した形容詞を呑み込む。

これは言ってはいけない。これを言ったら……


何も言えずにいると、アマルティアは目を細めて笑む。

それから、唄うように呟く。


「貴私、滅多に生きてる物に勃たないの。昔、告白されて仕方なく付き合った人がいるのだけれども、どれだけ時を重ねても好きにはならなかったし欲情もしなかったわ。」


そして、骸骨の手のような金でできたアクセサリーを指から腕に嵌めた手で口元を覆い、ブルリと肩を震わせる。



「別れを告げようとしたあの日、


馬車に轢かれたあの人の亡骸に勃起してしまったわ──」




「師匠、彼女マジで吐きそうっす。やめてやってくださいっす。」


「ふふ、誰も彼もこの話をするとそういう顔をするのよ。」


嗚呼、この人、愉しんでいる。私の反応を弄んでいるわ。


「……帰ります。」


「貴私は構わないわよ?"帰れるならね"」


「……どういうこと?」


「この()()()()は棄てられた者の森。貴君がただの迷子なら、きっと真っ直ぐ帰れるわ。」



気づけば私は悲鳴を上げていた。


煩く響く断末魔が私のものだと気づいたときには、私は飛び起き扉をすり抜けて階段を駆け下りていた。


恐ろしい笑み。

口が、まるで耳まで裂けたように錯覚した。

瞳孔の中に幾つもの目があるように錯覚した。


「魔女の家に迷い込んだら最期……何処まで抗えるかしら?」


背後から聴こえた声が、耳の中から響く。


魔女。

魔女魔女魔女魔女魔女。


長い廊下を走り玄関の扉を開け、長い庭を走り、古びた門から飛び出す。





「──助けて……!!!」


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