No07 入団
「さて、まず何から始めようか」
片手にバッグを提げたレインが俺に話しかけてくる。
「俺はよく分からんから、レインに頼る事にする」
「そう?誰かに頼るのもいいけどちゃんと自分で出来るようにならないといけませんよ?」
「分かってる」
「ほんとに分かってるのです?じゃあ最初は服屋さんですね。そんな格好してたらみんなに笑われます」
レインは俺の着ているダボダボの服を見て顔をしかめた。
これ、あんたの親父が着てたものなんだけどな?
俺の突っ込みをあっさりとスルーするとレインは路地を曲がりゆっくりと歩き始める。
しばらく歩くと木製の小さな看板を掲げた店の前でレインは立ち止まった。
「ここで買うのか?」
「ええ、そうですよ。ここはかなりいいものを置いているのです」
コンコンとドアをノックすると、いらしゃいと優しそうなおじいさんの声が聞こえてくる。
「おじさん、この子に合う服をくれない?」
あらお上品。
「はいよ、ほらちょっとこっちに来てみなさい」
おじいさんが採寸するためか何やら道具を持って俺を呼んでいる。
「ありがとうございます」
「案外、しっかりした体つきですね。なにか戦ってつけたものでもなさそうだし……どこぞの貴族ですかな?」
「貴族?いえいえ単なる流れ者ですよ」
「そうなのですか?まあよいでしょう、それより貴方様はローブとマントどちらがよろしいですかな?」
ローブとマントか。ローブはだめだな、ヤツとキャラが被る。
「マントでお願いします」
「そうですか、ローブならまだあるのですがね。マントは今赤しかないんですよ。少しばかり時間がかかりますがお作りいたしましょうか?」
「いえ結構ですよ、時間がないので」
え、赤ってちょっと派手過ぎないですかね。
時間あるでしょ、レインさん。
「じゃあ後はサーコートをください」
またもレインは俺の突っ込みをスルーして会話を続行する。
というか、さーこーとってなんです?
「戦士が普段から上に来てるコートのことよ」
あ、今度はちゃんと答えてくれた、うれしー。
「アホこといってないでさっさと色選んで。あ、でもマントが赤ならこれも赤でいいよね?おじさん、赤でお願いします」
今日なんか機嫌悪いな。
それに赤って派手すぎる、そう思わないか?
「思わないよ、私は素敵だと思うな。ちょっとあなたには似合わないかもしれないかもだけど」
「あ、今何か言った?」
「なあんにも?それよりとりあえず着てみてよ」
茶化したな、貴様。
とりあえず言われるままにマントとサーコートを着てみる。
「あ、意外に似合ってるかも。これでいいですよね?」
深紅の両目が確認するように俺の目を見つめてくる。
目が怖い、目が。
俺の威厳を取り戻さないとならない。
「無論、異論なんて滅相もない」
「ありがとう、じゃあこれ買っておくから外で待っててくださいね?」
「ここは?」
目の前には巨大な西洋建築が立ちはだかっている。
妙にいかついな。
「ここがギルドよ。まずは戦士登録しておかないと」
「戦士登録しないと傭兵になれないのか?」
「そうです、まあ傭兵じゃない戦士もいるんですけどね」
そう話している間にたくさんのお姉さんたちが立っている受付へとたどり着いた。
「じゃあここで戸籍登録しといてくださいね?私はそこで待ってますから」
「はいよ」
さて、戸籍か。
自分の本名なんて知らないし。
ここは適当にミーヤ=ゴルデジャー二とでもしておこうか。
ということでこれからはミーヤでよろしく。
ネーミングセンスの無さは自覚している。
「戸籍登録と戦士登録同時にいたしますか?」
「お願いします」
「それで、なんて名前にしたの?」
俺はお姉さんから受け取った戦士証をレインに手渡した。
「ミーヤ?あなた、ホントにネーミングセンス終わっていますね?」
そうでござんす。
確認するな自覚している。
「そう?でもまあいいや。とりあえず傭兵団に登録をしに行きましょう」
そう言ってレインはギルドを背に歩き始めた。
それにしても自分で自分の名前忘れそうだな。
ゴルデジャー二なんてややこしい名前つけなきゃよかった。
「着きました、私はココで働いてるんです」
レインの指す先には「アヴィド」と書かれた大きな建物がそびえたっていた。