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追憶のイノセント・イーヴィル  作者: Krewia
自治区パルメアン
6/13

No06 レベル

「よし、やった!!」

 特訓を始めてから約1ヵ月半。

 俺は自慢げに自分の腕を眺めていた。

 ついにLv5に昇格したのだ。

 自分なりにペースを上げて特訓していたつもりだったがここまで早いとは。

 これで晴れて傭兵団に入れるだろう。

「なにかありましたか?」

 下からレインが声をかけてくる。

 ハシゴを登ってきているようだ。

「腕を見てくれ」

 俺は彼女が登り終えるのを見届け、こう言い放った。

「え、腕がどうかしたのですか?」

「終わったぞ」

「終わったって……まさかLv5に……なったのです?」

「ああ、Lv5になったんだよ」

「一ヵ月半でLv5って早すぎます!!もしかしてスキル?スキルが発現したのです?」

「いや?そんなもんは発現してないと思うぞ?何も感じてないし。それより何なんだ、その……スキルってのは」

「え、知らなかったのです?えっとですね~スキルは誰もが持ってるものなので。戦いの中で発動方法を理解していくのよ。あと、魔法みたいに詠唱すればいつでも使える、みたいな都合のいいものじゃないですから」

「ふうん、で、レインは発現したの?」

「してるわけないですよ、上級戦士でも1割しか保持してないと言われてるんですよ?私が持ってるわけないですよ」

「1割、か。無理っぽいな」

「諦めちゃダメですよ。でもね、スキル欲しさに傭兵やってる人はほとんどいないですよ。戦いの中で覚えていくものですから」

「わかった……ところで明日から俺も傭兵になれるんだな?」

「はい、できますよ。では明日、一緒にギルドに行きましょうか」





「じゃあ、お前さんも今日から傭兵になるんだな?」

 朝、リビングで朝食を食べている。

 俺は朝食のサンドウィッチを口にしながら口角を緩める。

「はい、ようやくLv5になれたので」

「ようやく、ってお前1ヶ月半でLv5は異常だぞ」

「修練の賜物です」

 俺は見事に割れた腹筋をオッサンに見せた。

「ふん、嫌味に聞こえるぜ」

 そう言ってオッサンは自分の垂れた腹部を撫でた。

「でも、お前さん。そんな格好してると仲間に舐められるぞ」

「自分の着ていたものだって分かっていってんのか!?」

「そうだね、今日は着る物もそろえなくちゃ。そういえば、武器は?」

「おう、そうだな。そういえばまだ渡してなかったな」

 30日後と言っておきながら、まだ使わないだろうと渡されていないどころかまだ見てさえいないのだ。

 楽しみ、だ。

「早く見せてください、早く!!」

「おうおうまあ待てよ、今とってくるから」

 オッサンはリビングを出て店へと向かってゆく。

「武器、楽しみにしてるんですね」

「ええ、だってカッコいいんじゃないか。俺、そういうの使ったことないし」

「そうですか、まあ武器は戦士の命ですからね」

 そう言うとレインは少し顔を明るくして、

「でもパパがあんなに武器作るのに時間かけてるの見たことないんだよね」

と言った。

「そうなんだ……なんか悪いな」

「そんなことないよ、パパがキミのこと大切に思ってるからだよ」

 そうかもしれない、オッサンは実際結構俺に優しい。

 息子のように大切にしてくれている。

「おーい、持ってきたぞ。開けてみろ」

 オッサンは袋に包まれた物を持っている。

 差し出された物の紐をゆっくりと開く。

「どうだ、かなりいいだろ」

 袋から現れたのは黒光りする鞘に剣身を収めたロングソードだった。

 グリップに手を掛けゆっくりと引き抜く。

 鋭い光を放つ美しい剣身がその姿を現した。

「俺が今まで作ってきた中でも1番を競うくらい出来のいい作品だぞ」

「ありがとうございます!!これ、カッコいいですね?」

「そうだな、でもお前さん剣術の訓練は施されてないんだろ?」

「はい、俺はまだLv上げしかしてないので」

「そうか……よし今日から俺が稽古つけてやる」

「ええっ!?」

 俺とレインがほぼ同時に声を上げた。

 この人は何を言っているのだろう。

 レインではなくオッサンが俺に稽古をつけると確かに言ったよな。

 レインがゆっくりと口を開く

「パパが稽古を……つけるの?」

「おっと、お前ら、俺を舐めるなよ。はっきり言って俺はお前らよりLvが高いからな」

 そう言ってオッサンは袖をまくって腕を突き出してくる。

 俺とレインは思わず覗き込むようにそれを見た。

「Lv……17!?パパなんで鍛冶屋なんてやってるの?傭兵やりなよ!っていうか私よりLv高いし!」

 激しく動揺するレイン。

 というかいつもの丁寧語はどうした?

「鍛冶屋ってのはかなりの肉体労働派職業だからな」

「ちなみにレインはLvどれくらいなの?」

「しれっと人のLv聞かないでください。いい、傭兵団に入ったら絶対に他の人のLv聞いちゃだめですよ?意外にLvを気にしてる人も多いんですから。ちなみに私は……9よ」

「歳の話?」

「殺されたいのです?」

「すんません」

 というか意外に低いな。

「今、心の中で馬鹿にしました?」

「すんません」

 地獄の閻魔大王よろしく傭兵のレインさんは何でも見通せるらしい。

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