プロローグA
1
「おーい。」
……妹、沙耶香の声だ。
「おーい。お兄ちゃーん。起きてー。」
沙耶香は毎日こうやって俺を起こしに来る。
「うーん……。あと15 分……。」
その時間を保つため、俺はいつもそう返すのだ。
「ふざけてないで、早く起きてよー。お兄ちゃんいつもそう言うじゃん。起きれるの、知ってるんだからね。」
……まあ、さすがにバレるよな。毎日同じ事ばっかりやってれば。
「くそー。バレてたか。(棒読み)」
「……なんで棒読みなの。あ、そういえば、お兄ちゃんになんか手紙が届いてたよ。」
あっ。もしかしたらもしかして。お前からのラブレターかな?
そういった思い、俺は沙耶香にこう聞いた。
「なに。お前からか。」
「違うよ。」
少し可愛げに怒りながらさやかは言った。
どうやらラブレターではないらしい。
「全くお兄ちゃんってばシスコンだよね。」
……怒り方もかわいいなあ。
まあ、とにかく。俺は妹から渡された手紙の封筒を開けた。
それが、この物語の、きっかけだった。
手紙には、こう書かれていた。
「I kill your sister.」
たった。たったその一言だけで、俺たち兄妹はとんでもない方向へと進むことになったのだった。
2
そしてその手紙には、もうひとつ、数字が書かれていた。
「XXXX/8/5/6:50」
8月5日(8/5)というのは、今日の事を指している。
今、時計は6:48を指している。
これがもし時間なら、6:50に、確実に、沙耶香は……
殺される。
6:49
「ねえねえ、お兄ちゃん。どうしたの?」
「沙耶香。とりあえずお前はテーブルの下にいろ。俺が良いって言うまで動くな。」
「……?分かった。」
妹は完全に状況を飲み込めないまま、テーブルの下へと隠れた。
秒針の音がする。
6:50
……数秒、静寂の音がなる。
そして、それは突然起こった。
「バーーンッ!」
「キャアッ!?」
銃声が、鳴り響いたのだ。
To be continued