6gole:怪物vs天才エース
体育館に着いた私達は目の前で繰り広げられている光景に呆然と突っ立っていた。
コートの中を10人がひしめき合っていた。
一、二年混合(白)チームと一、三年混合(赤)チームとの試合だった。
キャプテンの手にはボールが有り、コートエンドから中央まで移動して来た。
「一本っーー!」
その掛け声と共に、三年チームはディフェンダーから逃れるようにハーフコートを走り回っている。
スコアは23対14。
流石、三年チーム。完成度が違う。
キャプテンの指示により一年生3人の動きがとても良い。
スパァッ…ーーシュートが決まった。
そろそろ白の方が射程圏内から過ぎた頃だった。
『ピピーッ!白7番と1番交代!』
ガード(※ボール運び、またはコート上で指示を出し、作戦練るプレイヤー)をしていた二年生と藤堂先輩が交代した。
体育館中に歓声が起こる。
ギャラリーも待ってましたと言わんばかりに拍手がこだましている。
「さぁ、一本!取り返すぞ‼︎」
先輩はそういうとボールをゆっくりつきながら、ゴールへ向かって行った。
「来い!藤堂!」
さっきまで、余裕の表情でプレーしていたキャプテンが不敵味な笑みで、ディフェンスを構えた。
ゾーンディフェンス……
先輩が中央に向かって切り込みをかけた。
すぐさま3人が先輩にマークに着いた。
打てない……!
そう思った時、スリーポイントラインの外側にいた一年生にバックパスをした。
ノーマークだったーー
ス……スパァンッ……
決まった。
『オォ!ナイスパス藤堂!ナイシュー!』
『今の、後ろに目があったみたいなパスだったぞ!』
白チームの外野から応援の声が響いた。
3点が入り、残り8点差だ。
『残り3分!』
『よし!行けるぞ!』
『オォ!』
今のシュートで更に白のチームが締まった。
オールコートマンツーのディフェンスはかなりの体力消費をするディフェンスだ。
当然、県内随一のガードのキャプテン神河と先輩は、どちらも引かない攻防が続いた。
「やっぱりスゲェ……!神河さんはかなり凄腕のガードだけど、その神河さん相手にマンツーでマークしている、藤堂さんはディフェンス力も相当なものだ!」
私の横に立っていた、高水君が興奮気味に語った。
そのまま連続3ゴールを決め、あと2点と迫っていた。
『残り1分!』
「このまま攻めるぞ!」
「オォ!」
先輩の一声で白は今まで以上に勢い付いた。
「ーー慌てない!ゆっくり運んだら良いんだ。」
片手を挙げてドリブルをつくキャプテンは赤に言い聞かせるように、力強く言った。
窮地に立たされても尚、冷静に指示を出す『怪物ー神河』は非常に落ち着いていた。
さすがだ。
その時、神河が出したパスがその刹那、反対方向に戻された。
藤堂のカットインだ。
「速攻!」
すぐさまゴールに向かっていた白のメンバーの猛攻だ。
パァァンッーー!
『ピピーッ!そこまで!』
藤堂が出したパスを、鬼の速さで戻って来た神河によって阻止されたのだった。
『あ(りがとうごさいま)っしたー!』
パチパチパチと至る所で拍手が聞こえた。
…凄すぎる……!
感動にも似た、今までに無いくらい興奮したのを感じたのだった。