5gole:小さな背中
その走って行く、小さな背中を静かに見つめていた。
どこと無く、違和感に似たようなものを感じていた。
どっかで見たことあるような……
「珍しいな、よそ見してるなんて」
いつの間にか、キャプテンが隣にいた。
「ユウさん、もう休憩終わりっスか?」
「ああ、これからAB戦をする。
あの子を誘ったのは、お前らしいな…」
物珍しそうな顔でユウさんは俺の顔を伺っていた。
なんだか、こっちの方が珍しいためか、自然と笑いが溢れた。
「ユウさんこそ、そんな顔することなんてあるんですね」
「そんな変な顔していたか?」
「はい(笑)」
「でも、驚いたよな。新垣先生が女子マネージャーを許すって。先生が来てからはマネージャーは一切居なかったっていうし」
「あの子は、先生やユウさんが思っているような子じゃ無いっスよ。
……それに、よくバスケを知っている」
そういいながら、微かに眠っていた俺の記憶が目覚め始めていた。
しかし、まだ雲は晴れず、さっきよりも違和感が少し濃くなったような程度だった。
「確かに、そうだよな…
女の子の割に球拾いも速くて上手いし、球出しも初めてするような子には思えないよな」
ユウさんと話しているうちに、先生の笛が鳴った。
今から、白凌名物のAB戦が始まるのだった。
その頃、ボトルに粉末のスポーツドリンクを作っていた私は、大量に入ったドリンクかごを持ち上げるのに苦戦していた。
お…重すぎる……
台車が欲しいくらいに重さがすごいのだ。
こんなの毎日とか、腕ちぎれそう…
歩いて数メートルのところで、一人の部員が私の所へやって来た。
「瀬良さん、それ重いでしょ?手伝うよ」
心配で来てくれたという、同じのクラスの高水君が持ち上げてくれた。
「ごめんね!ありがとう!助かった」
「いえいえ。手伝えそうな時は手伝うから声かけてくれていいよ」
そういうと、ぎこちないながらに微笑んでくれた。
あんまり、女の子と話したことないのかな?……
「でも、なかなか抜けれそうにないよね…」
少し困り顔になりながら、高水君に聞いた。
「……確かに…。先生に頼んで台車みたいなの用意してもらう?」
「それ、さっき考えてたんだよね(笑)」
「本当に?絶対にそのほうがいいーー」
『ガァァアンン‼︎』『オォォ‼︎』
突然、ものすごく壁が壊れたと思うような音が辺りに響いた。
「AB戦だ」
「AB戦?試合してるの?」
高水君の返事と共に、私達は急いで体育館に向かった。