2gole :その声は
体育館の入り口では大勢の生徒で賑わっていた。
バスケ部が所有するこの第二体育館は、横並びにバレコート三面が取れるほどの広さの体育館なのだ。
ダムダムダム キュッキュッーー
バスケ部が練習していた。
私は少し緊張していた。
…やっと…やっと会えるんだ……!
「すごい人だね!やっぱり女子生徒多いなぁ」
「皆んな、藤堂先輩のことが気になるのかな?」
私達は後ろの方から覗いていた。
学年など関係なく、みんなバスケ部に興味があるのだ。
『オォ‼︎』歓声が上がった。
「なになに⁉︎」
結菜も興奮しながら私と体育館を見ていた。
ダムダムダム キュキュキュッ…ガァァアン‼︎
目の前には、あの日見た同じ光景が繰り返されていた。
あのしなやかな、無駄がない綺麗なドリブル、空に飛んで行きそうなほどの跳躍力、そして見る人全員を引きつける強烈なダンク。
コレだ……これが見たかったんだ……‼︎!
『キャーー!!』
「すごい…!カッコいいね!!」
結菜は大きな瞳を力一杯見開きながら言った。
「…これが見たかったの!」
私は震える声で言った。
「奏?どうしたの⁉︎そんなにすごかったの⁉︎」
「私、半年前に一回だけ同じダンクを見たことがあるの。
その時から、ここに入学したいって思ったの」
「……」
静かに聞いてくれている結菜に私は夢中で語った。
「あのダンクを見た瞬間に、全身に衝撃が走ったみたいな感じで、あの光景が一瞬で目に焼き付いて忘れられなかった」
「そうだったんだね」
結菜は驚きながらも共感するように、ゆっくり答え
た。
「私、白淩のバスケ部のマネージャーになりたい……!」
翌日の昼休み、私は体育教官室の前にいた。
「一年七組の瀬良です。バスケ部の新垣先生おられますか?」
教官室には、三人ほど先生がいて、他に部員らしき人が先生と話していた。
「瀬良だと!?」
勢いよく立ち上がった人は、ものすごいスピードでドアの前まで来た。
「どこだ?瀬良君!どこにいるんだ?」
「…あのぉ…、私が瀬良ですが…」
「なに?君が…?」
新垣先生は不審そうな目で見て来た。
「あの、バスケ部のマネージャーになりたいんです!」
私は、勢いよく言った。
「うちはマネージャー禁止だ」
「勿論知っています。しかし、私は不純な動機だけで来たわけではありません。」
「そうだとしても、何人もうちの部に押しかけて来たが、全員ルールも分からない、掃除も分からないような奴ばかりだった。」
「ルールも知っています。掃除だって知っています。経験者なので。」
「……!審判やテーピングなども知っているのかね?」
「勿論知っています」
新垣先生は少し険しい顔をした。
数秒後、口が開いた。
「そうだとしてもダメだ」
「どうして!?」
その時後ろから声がした。
肩に手を乗せられたのを感じた。
「先生、体験だけでもだめなんすか?」