第三章 裏切り(後半)
「おい、佐藤だれだよ、その女」ぼくの怒声が駅前に響きわたる。
「えっ」2人がこちらを見てくる。
「どうして裏切ったんだ。おれとは遊びだったのかよ。あんなに情熱的な夜を一緒に過ごしたというのに」嘘はいっていない。
「佐藤さん、どういうことですか」彼女がSへたずねる。
顔が引きつっている。どうやら思い通りの誤解をしてくれたらしい。
「いや。違うんだって」焦って、しどらもどろになるS。
「なにが違うんだよ。最近なかなか連絡がつかないからおかしいと思ったんだよ。くそ、ふざけやがって。もういい。2度とおれとは関わらないでくれ」目をハンカチで抑えながら、ぼくはその場から逃げ出した。
「(ミッション・コンプリート)」
「おつかれ、I。最高の演技だったぜ」Oが声をかけてくれた。
「演技とは失礼だな。嘘はいっていないだろう、嘘は」
「いや、いくらなんでも。それは(笑)」
「 『どうして(委員会を)裏切ったんだ。おれ(たち)とは遊びだったのかよ。あんなに情熱的な(カップルにドッキリを仕掛ける)夜を一緒に過ごしたというのに』というセリフが、少し省略されただけだろ(笑) 」
「悪意に満ちた省略だぜ」やれやれという顔である。
「なに、本当の信頼関係が作れているカップルだったら、あれくらいでは動揺しない。まぁ、付き合ってひと月くらいでどこまでわかりあっているかなど知ったことがないけどな」禍々しい笑みを浮かべていると自分でもわかる。もう後戻りはできない。
「ちゃんと録画できてるだろうな?」
「もちろん。モザイク処理をして、動画サイトに流しておくよ」
「よろしく頼む」最後に我が委員会の広告料のたしになってくれ。
Sよ。おまえはいい友人だったよ。この前まではな。
照りつけていた太陽は雲に隠れ、ぼくは自宅への帰り道を歩いていった。




