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:PlaceMentS  作者: 涼成犬子
第1章 Separate
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作戦開始Ⅱ

「ちょっと……人多過ぎだよ!」


 途切れることのない人の流れにもみくちゃにされ、それでも少しずつ進んでいたメロンだったが、とうとう我慢の限界にきたようだった。どうしようもないことに文句を言いつつ、それでもひたすらに処刑台を目指す。


「もう少しですから、頑張りましょう。私たちが失敗してしまったら、全部水の泡になってしまいます」

「分かってるよ!」


 プシノはフードの中からメロンに発破をかけながら、自分が出来ることを探していた。

 夜とはいえど夏の空気は湿っていて、とても心地よいものではない。そこにこの人の密集地ができてしまった今、フードまで被っているメロンの体温はお世辞にも低いとは言えなかった。

 プシノは自分の精神が消耗しない程度に、メロンの体温を下げることにした。


「ありがと!助かるよ」

「大したことじゃないです!もう一踏ん張りですよ!」


 ジリジリと処刑台が近づき、人の壁が薄くなっていく。


「これで、おしまい!」


 最後の一歩を踏み出し、処刑台の前にふらふらと躍り出る。膝に手をつき、荒くなっていた息を整える。メロンは予想以上の疲労と謎の達成感に満たされていた。伏せた顔からは少なくない量の汗が流れ落ち、地面を打っている。


「へっ?」


 それを見ていると、視界の端に幾つもの影がぬっと現れ、メロンは思わず間抜けな声を出してしまった。


「動くな」


 威嚇的な声に顔を上げると、周りには新たな壁が出来ていた。各自武装した、王立軍兵士の壁が。


「あ、あー……ごめんなさい。他の人に押し出されちゃったみたいで……あ、亜人が来たみたいで大変!すぐに逃げなきゃー」


 メロンの引き攣った笑顔からは冷や汗がだらだらと流れ、なんとかごまかそうと適当な台詞を捻り出す。そろーりと人混みに戻ろうと反転したところで、肩をがっしりと掴まれた。


「そうかそうか。そいつは災難だったな。……悪いけど顔、見せて貰えるか?」

「……えー、いやー、あははは。そ、そうだ!私、フード被ってないと死んじゃう病気なんですよ!だからちょっと困るというかなんというか」


 肩に置かれた手をそっと引き剝がそうと手を伸ばすが、今度はその手を掴まれてしまった。


「あほか。明らかに不審なんだよ。というか、お前もエドバ団長が追っていった奴の仲間だろう。お縄にして、さっさと武神団に引き渡してやる」


 呆れた顔で話す隊長格の兵士は、メロンを完全に拘束しようと更に近づき——地面に突っ伏していびきをかき始めた。


「隊長!……お前!」


 周りにいた兵士は驚きを隠せずにいたが、すぐにそれを怒りに変えた。


「いやいやいや!私の所為じゃ……!」


 メロンは慌てて首をぶんぶんと振るが、何かを閃いたようで急に自信気な表情を見せた。


「ご、ごほん。ふふふ、私に乱暴しようとするから、早業でちょっと眠って貰ったの。あなた達もお寝んねしたくなかったら——」

「構わん!一気に押し倒せ!」

「——ちょ、ちょっと待ってー!」


 台詞が終わる前に、兵士達は一斉に動き始めてしまった。メロンは()()のことに思考を停止させる。


「メロンさんジャンプ!処刑台に向かって!」


 耳元で聞こえた声に、メロンは反射的に反応した。跳んだところで、この兵士達を躱すことなどできない。最高点に到達したメロンの身体は、重力にしたがって落ちる——はずだった。


「ばかな!」


 兵士達は、そのまま宙に止まったメロンの身体を見て愕然とした。そればかりか、そのまま処刑台の頂点へと浮き上がっていく様に、彼らは目を疑った。


「ありがとうプシノ!助かっちゃった」


 メロンは放り投げられているような浮遊感に戸惑いながらも、プシノへの礼を忘れなかった。


「これくらいしないと、私の仕事がなくなっちゃいそうですしね!ほら、着地準備です!」


 気付けば二人の高さは辺り一面を見下ろせる位置まできていて——処刑台の真上となっていた。

 途端メロンは自分の身体から浮力が消え、代わりに重力が重くのしかかるのを感じた。


「よっと!」


 プシノがフードから飛び立つのを確認して、クルッと回転しながら見事に着地の衝撃を抑えてみせた。


「グリー!遅くなってごめんさい!大丈夫だった⁉︎酷いことされなかった?」


 メロンは処刑人の男を退かし拘束していた縄をナイフで切断すると、グリーの頭をぎゅっと抱きしめた。


「なーに、こうやって生きてんだからなんの問題もないさ。死んでなきゃ、オールオッケー」


 ぽんぽんとメロンの背中を叩きながら、一言付け足した。


「これで柔らかければもっと良かったんだがなあ。綺麗なまないごふっ!」


 高速のボディブローが、超近距離から連続して放たれる。にこっと笑ったメロンの眼には光が入っていなかった。


「何か言った?」

「いえ、なんでもないです……」

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