第六十六月:おびき出して炙り出して皆で処す ②
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滝のアーチが見られない滝都なんて、ただのいかつい都である。
そう思い知らされる殺風景な外が望める解放廊下を歩く統主とココクロさん。それと、統主に試着して頂く予定だった衣装を詰め込んだ荷物を抱えるあたしです。
「──宮地襲撃の犯人像、アクルアちゃんの中では出来上がっているの?」
「『像』ならな。……質問なんかしなくていい。方向性についての話に重点を置くぞ」
統主は焦っている……?
──違う。犯人を処したいって気持ちがオーバードライブしているのだ。
ココクロさんはそんな統主の横顔を見ながら、やれやれと困った顔をしていた。
「アクルアちゃんはどう考えてるのか知らないけど、犯人を捕まえる手として、ココクロはおびき出そうと考えてるわ」
それは、目立つ餌をぶら下げ、ターゲットの気を引こうと言うモノ。
どこに潜んでいるのか分からないのなら、危険な手段であろうと明るみに出せる方法を取る。それが、ココクロさんの選択である。
これを聞いた統主は、
「なるほど。良い案だ。採用」
「ちょっとちょっと! 決断が軽いわ。リスクを無視してるみたい。アンタ今、殺意で喋ってるの?」
質問は以下略だと。
あたしの知っているココクロさんは、いつも相手を振り回す側だ。なのに、ここでは話せば話すほど形勢逆転されていく様子が見れるとは。……レアですな。
「お前がおびき出してくるなら、こっちは更にそこから炙り出してやろう。範囲が狭まるならありがたいというだけだ」
「あ、そーゆー。なるほどねぇ」
「だが、それが可能だとしても、問題は勢力の上回り方。……そうだ、チーター狩りしてるような猛者達を連れてこよう」
「やめなさいよ、お相手にも用事とかあるでしょうから。それに、外部の人を使うとなると、まず四角錐の機器を怪しいサイトから購入してもらう所から始めないといけないから、人によっては難儀よ?」
「……つまり不採用が妥当。承知した。では、戦力はサラセニア内で調達しよう」
「んー、それだと問題は……」
「分かっている。今時、力を持っている奴はだいたいが宮地に所属していない賊だ。最高戦力を有していた暗都が落とされた以上、その辺から掬い上げるしかない」
「……あいつら言う事聞いてくれるかしら」
「つまり不採用が妥当だと。承知した。では、戦力は各宮地の精鋭で固めた少数部隊を編成し、悪即斬をコンセプトに」
「それだと問題は……」
「つまり不採用が妥当か。承知した。では──」
話がぽんぽんぽんぽん進んで行っているようで、実はあんまり進んでないな。
そこからも、おふたりの話し合いは平行線というか……統主が出す案は些細な問題で不採用の方向となり、ココクロさんの案はたとえ小さく関係無いものでも採用されると言った奇妙な調子が続く。
それを後ろから拝見していてなんだけど……失礼ながら、不毛だなあ……と、思ってしまった。
だったら、お前が案を出せよと言われても……そんなのは持ち合わせていないし発言権も無いので黙ってます。
(……ふぅ)
視線を外へ移し、心の中でため息をつく。
滝都の風景……。要塞付属の戦略街。滝の音が消えたおかげで、遠くの空を飛ぶ鳥の声も良く響く。
こうして眺めるだけなら、滝都は物々しい造形であれど平穏に見える。とても宮地襲撃の標的にされていてもおかしくない状況に置かれているとは思えない。
行き交う人影。放置されてスリープ状態のアカウント。折角来たのに観光名物が見れなくて残念そうな顔をしているお客様……。
あんな顔……見たくなかった。
あたしが見たかったのは、楽しまれて頂いている顔。
驚いたり、期待に胸を膨らませたり、明日は何処を巡ろうかと考えてる時の、笑みを含ませた表情。
(もう、見れないのかな……)
もしそうなら、あたしもサラセニアを出る選択をしても良い頃合いなのかもしれない。
別の世界でアカウントを作って、その世界のお祭りに参加して、皆でわいわいするのが性に合ってる。
なにも、それだけだったらサラセニアに拘る必要もないわけで……。
四角錐が抱える世界なんて、他にも沢山あって……。
あんな、仕方なく笑うしかない見知ったスタッフも、結局は余所へ移るのかも……。
(……そうなるのかな)
一人とは限らず、またひとり、またひとりといなくなる。
そうなったら、滝都は……廃れるだろうな。
(あんなに苦労して、暗都の協力も受けて作った場所が……)
わけのわからない襲撃で、なくなるのか。
それは……残念だけど……。
残念だけど……さ。
(……しかたないって認識で……済む問題かな)
人が思いを込めて作った場所を壊すとか。
それで、壊されたら泣き寝入りとか。
これ──済ませられるか?
こんなの無理でしょ。済ませれないでしょ。
(あたしでも何か出来る事は……?)
足掻きもせずに終わりなんて嫌だ。
もし、犯人をおびき出して見つけられれば。
もし、犯人を炙り出して捕えられれば。
(──あたし達は、そいつを処する権利くらいあるんじゃないの?)
処 する。
そうだ。
皆でだ。
皆で処するんだ。
お祭りの様に
お祭りのようにッ
──お 祭 り の 様 に !!
それこそ
この『世界』の
──楽しみ方でも あるもんね──!!
そう思った時、あたしの首が、くききと鳴ってココクロさんを向く。
目は開いたまま。じっと──見つめる。
この危うい視線に気付いてくれたココクロさんは、一瞬何事かと目を丸くするも──、
「あー……やめやめ。頭の固い我々じゃ、お話になんないわ。……ノノギちゃん、なにか思いつくかしら?」
わざとらしく肩をすくんで見せ、統主の視線をこちらへと促した。
「あ」
瞬間目が合い、頭に冷水をかけられた気持ちにかられたが──あたしは、思考の泉を湧かせた事を口に出す。
「……あの、おこがましいのは承知の上なのですが……大きなイベントを開催するのは、どうでしょうか」
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