抱擁
私のそれを「抱擁」と呼ぶのは、いささか語弊があるような気がする。
抱擁というのは、本来相手を受け止める行為であるべきだ。抱きとめ、受け入れ、愛おしむために行われるべき行動なのだ。
その点。私はそれを相手に求めてしまう。
つまりそれは相手に縋り付いているだけではないか。未熟で弱い自分を相手に押し付け、抱きとめてもらうことで存在を保っているだけではないか。
手放しに存在を受け入れられることに慣れてしまっては、二度と独立した存在に戻ることができないように思う。恐怖する。
それほどまでに貴方の腕の中は居心地が良いのだ。
けれど、貴方は私のものではない。貴方は貴方自身だけのものだ。
未熟な自分を押し付けられるほど、私も厚かましくない。
気が向いた一瞬だけでも、その腕の中へ置いてくれればいい。それ以外の時は自分で自分を受け止めておくから。