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ある愛の詩〜死神〜

作者:ミカ=エル
ある日の夕方。
女子高生3人組が姦しく帰宅している。

亜子「ねぇねぇ死神って知ってる?」

伊予「え?知ってるけど。鎌を持って人の魂を刈り取って行っちゃう怖い・・・怪物?妖怪?よね?」

亜子「そうそう。その死神。でも霊能者とか神父さんとかお寺の住職さんとかでもほとんど見たことある人居ないんだって」

映子「そうなの?でも見た人は居るって事だよね?」

亜子「うん、昨日あたしも見ちゃった!多分あれ絶対そう!」

伊予「え?死神を?死神だよね?」

亜子「そうだよ〜死神。見ちゃったのよ!」

伊予「え〜うそだぁ」

映子「さすがにないでしょ〜」

亜子「絶対そうだったって!」

伊予「まぁ、とりあえず聞いてあげるわょ。で?どこで?」

亜子「ほら、私の家の帰り道にある、あの家が何軒も入りそうな広い土地の元市長だったか代議士さんの家の前。門の脇に真っ黒い人が居て。」

映子「真っ黒い人?上下黒にフード?」

伊予「死神って言ってるんだから違うんじゃない?」

亜子「なんか。フードにはフードなんだけどローブって言うの?ホラ、ゲームで良く神官とか魔法使いが着てる」

伊予「あぁ〜ポンチョみたいな?」

亜子「そうそう!ポンチョポンチョ」
嬉しそうに言う。

亜子「長いポンチョみたいな?真っ黒いの」

映子「ふうん、サッカーの応援グッズでポンチョは知ってるけど黒って珍しいね?」

亜子「だからポンチョじゃなくてローブだと思うって言ってるんだけど・・・それで長い木の棒を持って立ってたのよ」

伊予「・・・檜の棒とか言わないよね?」

映子「・・・」

亜子「・・・い、言わない、と思う」

伊予「・・・ここまで振っておいてゲームの話オチとか言わないよね?」

映子「ええ〜〜!?私はそれでも良いけど」
笑って言う。

亜子「言わない言わない!」

伊予「でも檜の棒でしょ?」

亜子「違うの、違うんじゃないかと思う、んだけど」

伊予「違うの?」

亜子「木の材質なんかわからないもん」

映子「見ただけで「あ、あれは檜、あれは杉、とか答えられたらすごいね、確かに」

伊予「それはそれで特技かもね」

亜子「だから!そうじゃなくて。多分先っぽに何かついてたのよ!刃とかなんかが」

伊予「何かって何よ?どういうこと?」

亜子「棒の先っぽがすごい光って見えて。って言うか光が先っぽにくっついてるような感じで良く分からなかったのよ」

伊予・映子「???どういうこと?」

亜子「・・・・うーー。なんて言ったら良いのかな・・・確かに先っぽがあるのは分かるの。分かるのに何がついてるか見えないのよ」

映子「良くわからない。見えてないのに分かったの?」

亜子「良く分からないのよ」

伊予「うーん?それで?その死神さん?はどうしたの?その鎌?棒?を振って誰か殺したとか」

亜子「・・・わからない。」

映子「え?」
伊予「え?どういうこと?」

亜子「消えちゃったのよ」

伊予「はい?」
映子「・・・」

亜子「消えちゃったの!」

映子「それじゃなんだったか分からないじゃない」

伊予「ただボーッとしてる間にどっか行っちゃっただけでしょ?死神かどうかもわからないじゃない」

亜子「それで、それで!」
勢い込んで言う。

亜子「今日今から家に来て欲しいの!家に、って言うかあの家の周り見てみたいのよ!」



伊予「居た。本当に黒い人だ」

映子「え?どこ?」

亜子「ほら、あの門のとこ」

映子「え?」

伊予「家の方向いて何やってるんだろ。怪しすぎ」

近所の人だろう、おばあちゃんが立ち止まっている3人に変な顔を向けながら追い越していく。

映子「え?あ!え?」

亜子「どうしたのよ?」

映子「やだ、アレ本物かも」

亜子「本物って?」

映子「死神かどうかわからないけど多分見ちゃいけないものだと思う」
少し震えて言う。

伊予「ん?」

亜子「見ちゃいけないもの?」

映子「うん。・・・だって・・・門のとこ誰も居なかったのに。見てたら見えてきたのよ。。。今はしっかり見える。」

亜子・伊予「え?」

亜子「やだ、ちょっとやめてよ、最初から居たわよ?」

映子「あのおばあちゃんも私達しか見てなかったし。それにあの棒。確かに鎌かもしれない。薙刀とかかもだけど」

亜子「え?刃が見えるの?」

映子「亜子の言った通り光が集まってるように見える、けど刃も見える。刃がすごく光ってる感じなのかな、先までは見えないから鎌なのかは分からないけど。すごいよ。あれって神様の武器とか言われても信じちゃう」

亜子「ヤバイの?」

伊予「なんか映子がヤバイ」

映子「あ、入って行っちゃった」

亜子・伊予「え」
栄子の方を向いていた目を門に向けた時にはソレは居なくなっていた。


映子「ごめんね。実は私昔から結構霊感強くて。普段は見えないように御守りの力借りてるの」
少し落ち着いて言う。

亜子「そ、そうだったの?」
伊予「全然気が付かなかった」

映子「知られるとやっぱり変な子って思われるから。そういった話もなるべくはぐらかすようにしてきたし中学生の時からほとんど感じない、見えない、ってくらいの御守りを神社で貰ってるの」

真面目な顔で更に言う。

映子「それで。多分さっきのアレは本物。」

と、そこまで話をしたところで救急車のサイレンが聞こえてきた。
近づいてきている。

伊予「やだ、まさか」

亜子「アレが、本物って事は・・・」

映子「ちょっと離れよう?亜子の家の方行こ」
救急車が門の前に来て止まる。



亜子「ちょっとヤダ。やめてよ。本当に本物とか。本当に?」

伊予「アレはヤダ。ヤバイよね」

映子「普通は見えないモノだと思うし気にしなくて良いと思う。私も本当に存在してるなんて思わなかったし。今まで見た事ないし。」

亜子「・・・そうなの?」
上目遣いで映子を見る。

映子「・・・・うん。見えないはずのモノがたまたま見えただけ。気にすることはない、わよ」
亜子を気遣いながら言う。

伊予「じゃあ、別に見た私達に何かある、とか無いわよ、ね?」

映子「・・・無いわ。神と呼ばれてるだけの事もあると思うし。見ちゃいけないモノだと感じたけど悪いモノだとは思えなかったし。」

亜子「死神、なのに?」

映子「そう。死神なのに」
安心して、と笑う。

伊予「そっか。なら安心かな」

亜子「そっか。そうだね、困ったら映子に相談すれば良いだろうしね」

映子「あらら、さすがに神様とは喧嘩出来ないわょ?」

皆して笑う




元市長が急死したというニュースは出た物の大した功績もなく汚職やら買春やらで世間を騒がせただけの強欲な人間の死はそれほど世間では語られる事はなかった。



そして3日後。

亜子「映子!ごめん!力貸して!」
朝一から亜子が泣きついてきた。
本当に泣きそうで辛そうな顔で。

映子「?亜子、どうしたの?宿題忘れた?」

亜子「う。。。そ、それも、なんだけど。」
顔を引きつらせ言う。

映子「それもなんだ」

亜子「あいつよ!あいつが来たの!来ちゃったの!助けて!」

伊予「亜子慌てすぎ〜、あいつ、って?」
さすがに心配になり伊予が見に来る。

亜子「死神よ!あいつがおばあちゃんの入院してる病院に居て!昨日病室に来たの!」

伊予「落ち着いて。少しだけトーンさげよ」

亜子「ご、ごめん」

映子「とりあえず宿題は写させてあげるから。後は昼休みに話そ?」

亜子「う、うん。ありがとう」


そして昼休み。
いつものようにそれぞれのお弁当をつつきあいながら話をする。
亜子から仲の良い祖母があの日の夜に入院した事、一昨日に病院の入り口で死神を見掛けた事、昨日は病室の前に居た事を聞く。

映子「そっか。やっぱり亜子と繋がりが最初からあったのかな」

亜子「?どういう事?」

映子「やっぱりあの死神?は本来なら見えるモノだとは思えないのよ。人が死ぬ場所に必ず居るのならもっと噂や話に残るだろうし。」

伊予「確かに。病院の怖い話とかでもあんな死神の話なんて聞いた事ないよね」

亜子「元々キリスト教とかのモノだからじゃ?」

映子「死神ってその話の多くはジプシーを始めとした遊牧民の伝承だったりするからヨーロッパよりもむしろ東洋よりなのよね」

亜子「そなの?」

映子「それに亜子のウチもあの市長さんの家も別にキリシタンとかじゃないでしょ?」

亜子「バリバリの仏教徒」

伊予「バリバリって。。。」

映子「だからそんな死神を亜子が見て。私達にも見えた。見る事が出来たという事に疑問があったのよ。ひょっとしたら誰かと死神にすでに繋がりが出来てるんじゃないか、って」

亜子「繋がり?」
伊予「繋がりが?」

映子「うん。縁と言っても良いのかしらね。亜子には死神を見る要素があったから見えた。そういう事よ」

亜子「そんな。じゃあ、だったらもうばあちゃんとこに来てたってこと?来るのが決まってた、とか?」

映子「そうね、多分。そういう事じゃないかと。・・・・いえ・・・言ってしまった方が良いと思うから言うわよ?」

亜子・伊予「うん?」

映子「亜子のお婆さんの所に行くのが決まってたから亜子に見えた。亜子が見える、見て、と誘ったから私達にも見えた。・・・そう。流れから言うとそう思うけど。最悪の場合も考えられるわ」

亜子「なんとなく分かった気がスル」
伊予「最悪の場合?」

映子「それ以前に」
映子・亜子「私達自身が死神のターゲットだと決まってた場合、ね」

伊予「・・・・げ・・・」

映子「げっ・・て」

亜子「でもそれはどうなのかな」

映子「そうね、まず可能性はないと思うわね」

伊予「その心は」

映子「そんな縁が出来て見えるのだったら何度も言っているように目撃談が多くあるはずじゃない?」

亜子「うん。そうね。だから病院とかでの目撃談がない以上多分私達が、ってことはないんじゃないかな」

何かに気がついたように
伊予「あれ?でもさっきの亜子が誘ったから、って理由が正しいなら?」
亜子を見つめる。

亜子「うん。私も、ってことはあるかもしれない」
俯いて言う。

映子「なんとも言えないわよ。それにあの時亜子と伊予には最初から見えてたみたいだけど私にだけは見えてなかったわけだし」

伊予「・・・げげ・・・」

亜子「いや、だから、げげ・・・って」

映子「とにかく今日からしばらく亜子と一緒にお婆さんの病院行ってみましょうか」

亜子・伊予「りょう〜か〜い」

亜子「助かるよ」

映子「・・・・多分何も出来ないわょ」
小さな声で言う。

亜子「それでも、ね」
笑って言う。



そして放課後。

少し遅くなってしまったが3人揃って病院へ。

亜子「良かった〜、居なくなってる?」
病室の近くまで来てホッとした亜子が呟いた。
伊予「あれ?個室じゃないの?」

亜子「ん?違うよ〜?他に入院してる人居ないから個室状態だけど」
笑って言う。

映子「・・・」

ノックをし
亜子「ばあちゃん、入るよぅ」

そして病室に入る。

一番奥の窓際のベッド。
亜子「ばあちゃん、きょ・・う、は?・?・・・う?」

亜子の祖母「あぁ〜、いらっしゃい、亜子。今日も来てくれたんだねぇ嬉しいよぉ」

映子「こんにちは。ご無沙汰しています。今日は亜子と伊予とお見舞いに来ました。」
映子が固まった亜子の脇をすっ、と入り挨拶をする。

伊予「こ、こんにちは。」

亜子の祖母「あぁあ〜ちょっと久しぶりねぇ〜お見舞いありがとう」
柔らかく笑いながら応える。

亜子の祖母「亜子も。亜子?どうしたの?」

映子「ほら、亜子。そっちは気にしない。そっちじゃないでしょ」

祖母の居るベッドの向かい側。
その奥の壁際にソイツは立っていた。

黒い長いローブ姿に影になって見えない顔。
右手には棒を持っている。

亜子「あ・・・う・・あぁ・・・」

祖母「亜子?亜子ちゃん?」

映子「すみません、お婆様。少し失礼します」
映子「伊予、少しお願い」
小さく。そして目配せ。
亜子を連れて急いで出る。

亜子「映子・・・あいつ・・・あいつが・・・」

映子「わかってる。でもただ居るだけ。居るだけならなんでもない。お婆様に心配かけない。良い?」

亜子「・・・う、うん。でも。」

映子「でもじゃない。」

亜子「う」

映子「今日はお婆様のお見舞いに来てるの。良いわね?」

亜子「わかってる、けど。で、でもでも」

映子「けど、でも、でも、でもじゃない。お・見・舞・い」

亜子「うううう、わかった」

映子「亜子が心労与えちゃダメ。良いわね?」

亜子「わかった」

映子「よし!あっちは気にしない」

亜子「うん」

亜子「ごめん、ばあちゃん。ちょっとお腹の具合が悪くなって」

祖母「あら、大丈夫なの?」

亜子「うん、大丈夫。治った、と、思う。」
努めて向かい側を気にしないようにする。

祖母「あんまり無理しないようにね。あたしも無理せずゆっくり治すから」

亜子「うん。うん、気をつける」



亜子「じゃあまた来るから」
映子・伊予「お邪魔しました。お大事にして下さい。」

帰宅する。

亜子「あぁ〜もう!なんなんだよ、あいつ!」
伊予「なんか影?みたいね。全然動かなかったでしょ」

映子「そうね。そんなに気配みたいなものも感じないし。本当にただそこにある、というか居るというか。居ただけ。」

亜子「うん。本当。居ただけ。・・・はぁぁあ。居ただけ、で終わってくれればなぁ」溜息を吐きながら疲れたように言う。

まぁまた明日、ということで帰ることにする。



そしてその日の夜遅く。

亜子から映子に電話が。

亜子「映子!助けて!どうしよう!?お父さんが!お父さんが!」

ガタッ
寝転んで電話に出た映子が立ち上がる。
映子「亜子?どうしたの。何があったの?ちゃんと話して」

亜子「う、うん。うん、ごめん。えっとね。さっきなんだけど・・・」

聞くと父親が入浴中に足を滑らせて腰を強く打ち付けたらしい。
痛みが酷く動く事が出来なくなってしまい救急車を呼んだらしい。
どうやら歩けなくなったりとか深刻な事にはならないようだが入院という事になるらしい。
のだが。

亜子「今入院患者ほとんど居なくて。しかも家族だからって事で同じ病室にされたんだけど。「

映子「!まさか!」

亜子「父さんのベッドがあそこ!あの、あいつが横に居るあのベッドなのよ!」

映子「そんな」

・・・・どういうことだろう
考える
考えてみる
考えてみてもわからない。
わからないという事だけがわかった。

映子「亜子、落ち着いて。今日ずっと多分あいつは動いてない。動かなかった。」

亜子「う、うん。」

映子「昨日から今日はいつの間にかはわからないけど病室の前からは1日で奥のベッドに移動してた。のよね?」

亜子「うん。」

映子「でもその前に私達はあいつが目の前で動く所に出くわしてる。」

亜子「うん」

映子「多分今夜は大丈夫。・・・と、言ってもやっぱり考えた感じあいつの狙いはお婆様に間違いないと思う」

亜子「・・・う、うん。」

映子「明日。明日の夕方。黄昏(誰そ彼)時、逢魔時に病室へ行きましょう。多分そこで何か起こらなければ大丈夫。だと思うわ」

亜子「明日。明日の夕方。」

映子「うん。明日。」

亜子「わかった。ありがとう映子。おやすみ」
映子「おやすみなさい亜子。」




亜子「おはよ」
映子「おはよう」
伊予「おはよう」

亜子「放課後よろしくね」

伊予「何もなければ良いね。死神居なくなってないかな」

映子「分からない。一応祓える塩は用意した、けど。正直死神には効かないかもしれない。そもそも死神に何かするのは無理かもしれない。」

亜子「うん。ありがとう。」


そして放課後がやってくる。


病院にやって来た3人。

亜子の祖母と父親が居る病室のある階まで行った所で。

亜子「??何か変な感じがした」

映子「?結界、みたいなもの、かしら?」

伊予「結界?」

映子「あ」
亜子「え」

祖母達の病室から慌ただしくストレッチャーに載せられ運ばれてくる。

載せられていたのは父親。

亜子「え、え?なんで?」
そして見送った後振り返ると何故か祖母が病室から小走りに出てくる。

更に後ろからあいつが病室からゆっくりと。

映子「!っっ!」

亜子「ばあちゃん!?」
慌てる。

亜子「ばあちゃん!こっちへ!」

映子「っ!違う亜子!」

亜子「え?」
伊予「きゃっ」
祖母が3人の脇を通り抜けていく・・・

祖母「亜子〜?もう少し辛抱して待っていてね〜?もうすぐおばあちゃん元気になって亜子のところへ帰るからね。」

亜子「え?え?ばあちゃん?」

立ち止まる祖母。
祖母「亜子の結婚式や子供が産まれるまで。いや〜葬式まで面倒見てあげるからね〜?一緒に永く暮らそうね〜」

亜子「ばあちゃん?」

映子「お婆様?貴女は何を?」

祖母「映子ちゃんかぇ?邪魔しないでおくれな?あたしぁ亜子と永く居たいだけなんだからね。」

映子「それで?今からどこへ何をしに行くおつもりですか?身体を置いてまで。」

亜子・伊予「え?」

祖母「決まってるじゃないかぇ。不肖の息子の命を喰らってでも命を永らえるのさぁ〜」

映子「そうですか。そうでしたか。でも無理です、ごめんなさい」

祖母「映子ちゃん。邪魔しないでおくれよ」

映子「私は邪魔をしません。」

祖母「?そうかい?それなら別に・・・」

映子「そうなったなら見えるはずですよ?恐らくお婆様自身が呼び寄せてしまったモノが。」

祖母「うん?何を言ってるんだい。亜子や、もう少し待ってちょうだいね。・・・え?」

・・・・亜子の影から・・・・

祖母「ひっ!」

亜子「ばあちゃん?」

映子「それは死神、よ。」

ス〜ッと。

それが軽く『鎌』を振る。

祖母「ゲッ!ギャッ!ギャァァァァ!!」

亜子「ばあちゃんっ!」

伊予「・・・光の・・・糸?」

映子「魂と肉体を繋いでる糸よ。魂の尾とも言うわ」

死神「そう。これを切るのが私の役目の1つ。」

亜子・伊予「しゃ、しゃべった」

映子「死神の持っている魂の尾を辿ってみなさい。」

亜子「え?だってばあちゃんの魂は・・・?あれ?」
居たはずの祖母が居ない。

死神「今息子に別れを告げに行った。肉体のある所で少し話が出来るだろう」

映子「ありがとうございます」
頭を下げる。


病室にて。


もう暗くなり始めた空を背に祖母が立っていた。
いや、身体はベッドで寝ている。

亜子「ばあちゃん?ばあちゃん!」

祖母「ごめんよ、ごめんね、亜子」

亜子「ばあちゃんっばあちゃん!」

祖母「迷惑をかけてしまったね」

映子「いえ。もっと何か。他に皆が幸せな結果を得て済む方法や話し合う時間は無かったのですか?」

祖母「仕方なかったのよ。わたしも普通の人だったという事ね。死期が見えてきて、でも孫が可愛くて離れたくなくて、離したくなくて。欲ばかり出てきちゃって、ね」
寂しく笑う。

亜子「映子?ばあちゃん?」

祖母「ごめんね。映子ちゃんには少し相談に乗って貰ってたの」

亜子「相談て?」

祖母「死神様、いえ別の名前で呼ぶべきかしらね?」

死神「いや、生者と生死の狭間に居る者にとっては死神で構わないだろう」

伊予「ひっ」
すぐ後ろに静かに居た。

祖母「では死神様。何日か前わたしが自分の欲を抑えきれなくなってきた時に死神様からあの市長さんの未練を断ち切った後にも業が深くて絡んだ(えにし)が亜子に影響及ぼすかもしれない、と聞いて。その1つがわたしだとも聞いて。」

映子「亜子のお婆様は亜子と知り合う前から私の事、昔の私の事を祖母繋がりで知っててね。例の日の夜に電話で相談されたのよ」

祖母「亜子自身に絡んだ縁をも切らないと後が心配だというから・・・少し手伝って貰ったの」

映子「やり方によってはお婆様は普通に亡くなるか病気の治療も出来たのでは、と思うのだけど。」
泣きそうな嬉しそうな複雑な顔で言う。

亜子「・・・・どういうこと?意味がわからない。・・・ちゃんと説明して!」

映子「亜子。亜子があの元市長の所で死神を見たのは偶然じゃない。それは良い?」

亜子「うん。わたしとばあちゃんの縁がどうとかいうやつでしょ?」

映子「そうじゃないのよ。あの時はそう言って誤魔化したけど。お婆様に死神が来るのが決まってるから、という理由なら別に元市長に限る話じゃないのよ。そもそもそんな簡単に見える存在ではないし」

亜子「・・・・ふぅん」

伊予「亜子?」

映子「亜子と元市長に個人的な繋がり、縁があったから、なの」

亜子「・・・知ってるんだ?」

映子「・・・ううん。何があったかは知らない。お婆様も私も推測を立てているだけ。別に正解を欲しいわけでもない。だから詳しくは言わなくて良いわ」

亜子「・・・そう・・・助かる・・・ありがとう・・・」
泣いてしまう亜子。

伊予「亜子」
亜子「伊予、わたし、わたし、ね・・・」

伊予「良いよぅ!言わなくて良いよぅ。ただ。辛かったね?亜子。気が付かなくてごめんね」

亜子「良いの、良いの。無警戒だったわたしが馬鹿だっただけだから」

伊予「亜子」

映子「・・・私も気が付かなくてごめんね。」
涙を流しながら言う。

映子「それで。。。お婆様は他人の、息子や亜子以外の家族の命を奪って・・・文字通り奪ってでもなんとか永く生きてやろうという欲と業を増やしていって。肉親のそういう姿と死神の姿を見せることで。。。厄祓いのような事をする、というのがお婆様からの提案だったの」

亜子「・・・映子はそれにのった、というわけか」

映子「ごめんなさい」

亜子「なんで謝るの?」

映子「もっと亜子達と深く接して早く亜子の内面とお婆様の内面に気が付いていればここまでのことにならずに済んだかもしれないもの」

亜子「・・・そう、かもしれないね」

映子「・・・・うん。だから。ごめんなさい。」

亜子「・・・うん。でもそのおかげで私は救われたんだ。そしてばあちゃんも。そだよね?」

祖母「そう。救われたの」
和かに言う。

亜子「なら。映子。ありがとう。」

映子「え?」

亜子「ありがとう、よ。私とばあちゃんを救ってくれてありがとね」

映子「・・・・亜子・・・」
泣き崩れてしまう。

伊予「映子。」


死神「では時間切れだ。祖母の未練は断ち切られその娘の業もまた失われたのを確認した。祖母は間違いなく送り届ける故また盆にでも会うことも出来よう」

ビクビクッ

亜子・伊予「し、死神、様?ありがとう、ございました」

死神「生きてる内は迷うこともあろう。それが生者の営みでもある。だが、肉体から放たれてからも残るような物は持たないように、な」

映子「ありがとうございました。お言葉胸に刻みます。」

死神「うむ、では、な。会う事が無いように願っている」

祖母「3人共これからも仲良くね。ありがとうね」

亜子「ばあちゃん・・・・」

祖母「あ。あんたの父親はただのヘルニアだから。命は無くならないから安心おしね」

亜子「え」

祖母「少し細工して命奪う計画立てたのだけど終わったから。あ。後。すぐにナースコール押してね?もう死んでるけど。よろしくね」
そう言って死神と共に天に昇っていく。

3人「天に昇ってくんだ。そういえばベッドの上にもおばあちゃんが」





閻魔大王「少しやっかいな事案に踏み込んだようだが、解決感謝する」

死神「いえ。少し生者に関わりすぎたかもしれませんがこれが使命ですから。」

閻魔大王「うむ。これからも迷う者達が出ないよう。迷ってしまっている者達をちゃんと導くよう。最近ではそのイメージが悪くなってしまっているようだが。それに本来日本では古来よりの呼び名があるというのに難儀な事よ」

死神「元々1つであったものが分かたれそれぞれに成長してしまいまたそれが1つに、という流れなので致し方無い事と。」

閻魔大王「うむ、そうさな。ではこれからもその使命、よろしく頼むぞ地蔵よ」

地蔵尊「はい。もちろんです。私が居る限りしかと迷わせません。愛しい子らを迷わせてなるものですか。」




そして今日もどこかで迷い戸惑っている者や生者に仇なす者を優しく、時には刈り取り。行くべき先へと導く存在があるのであった。


〜終〜
読んで下さってありがとうございました。

結構書くのに時間かかってしまいました。

読んだ後に何か残る物があれば幸いに思います☆

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