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勉強童話シリーズ

たなびき

作者: 沢内翼

 昔々の、とある村でのお話です。その村は虎の被害に苦しんでいました。農作物を荒らしたり、家畜を襲ったり、ついには村人が被害に遭う事態に進展してしまいました。困った村人たちは村長を中心に相談し、ある結論に達しました。

 村には、ツークという勇敢なことで知られる若者がいました。その青年が虎を退治しようと立候補したのです。虎は森の中にいるということがわかっています。森の中に行くための準備を村人総出で手伝い、そしてついにそのときが来ました。

 森の中を進み、ツークはついに虎を相見えました。ツークは腰につけた剣で、三度切りつけました。虎は一瞬怯みましたが、すぐに体勢を立て直し、ツークへと突進してきました。勢いのある突進をツークは剣で防ぎました。しかし、その突進の衝撃で剣が折れてしまいました。この剣は村長が村の宝としてあったものを、特別にくれたものでした。そんな宝物が壊れてしまうほど、虎の力は強いのです。

 ツークはしかたなく、剣をその場に投げ捨て、愛用のモーニングスターに持ち替えました。そして、そのモーニングスターを思い切り振り上げ、一撃をくらわせました。今まで、何匹もの獣をこの一撃で倒してきました。しかし、この虎はダメージこそ負ったようですが、もう一度襲い掛かってしました。今回は突進に加えて、ツークに食いつこうとしてきました。思わずモーニングスターで防ごうとしました。しかし、モーニングスターは明けの明星という別名を持つ武器です。トゲ付きの鉄球が特徴です。ツークの使っているモーニングスターは、持ち手部分を鞭のようにして攻撃することができる特注品です。さて、何が言いたかったかというと、この武器では防ぐことができないのです。鉄球を相手の口に放り込むなどという防ぎ方しか、この場のツークは閃きませんでした。

攻撃を防げないなら避けるしかありません。それに万が一があって、愛用の武器が壊れてしまっては困ります。ツークは防ぐ方法より早く、避ける行動をとっていました。人間というものは、思考より早く本能で動くという具合です。先ほど述べた攻撃を防ぐ方法というのも、攻撃を躱した後で、頭に浮かんだものだったのかもしれません。

突撃を躱したツークは自分の横を突き進む虎の脇腹に鉄球を叩き込みます。勢いで、そしてとどめのつもりで、鞭での一撃もお見舞いしました。会心の一撃をくらった虎は横倒しになり、それきり息絶えました。ツークは勝利したのです。

さて、ツークは虎の死体を荷車に乗せ、村へと戻ります。しかし、その途中、虎の重さに耐えかねて、車輪が壊れてしまいました。壊れた車輪は転がって、森の奥深く、木で見えなくなっていましたが、崖の底へと落ちていってしまいました。これでは修理のしようもありません。仕方がないので、箱を引きずりながら、ツークは村のほうを目指しました。身体が鍛えられるからいいや、とツークは気楽に考えました。次の脅威が村に来ないとも限りません。

村人が、帰還したツークを見たのは、まさしくこの姿でした。虎を箱に入れ、その箱を引きずるツークの姿です。村人たちは生きて帰ってきたツークを英雄として迎えました。

虎の肉はその日の宴のメインディッシュに、皮は勇者を象徴する衣服に、骨は装飾品に作り替えられました。肉以外の装備品は、剣に替わる村の宝として大切にされ、ツークの雄姿は村に語り継がれました。

その後、世界で物を運ぶ鉄の乗り物が発明されました。村人たちは、その乗り物の様子をかつての勇者の伝説と重ね合わせ、ツークと呼ぶようになったそうです。

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