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かくじょ!  作者: 天羽八島
第2章「最強女子決定トーナメント編」
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「わざとらしいでぇ!」

「一回戦第五試合は香澄とキックボクサーの春日彩ちゃんだね」


 涼がスマホをいじると壁に映し出されるのは髪を金色に染め、やや色黒の肌のブレザー制服に身を包んだ娘。

 両手には付けたオープンフィンガーグローブが無ければただの女子高生ギャルにしか見えない。


「あれ? でもこの人もう二十歳過ぎたくらいだよねぇ〜」

「エエやないの? 制服着るのもギャルを名乗るのは何歳でも自由なんやから、こういう個性は売り出していくのに大切やで、ウチがこの娘がよかったわぁ、コスプレ対決とか茶の間が盛り上がるのに〜」


 ニヤニヤする琴名と残念そうな表情の真依。


「まだ私たちより少し歳上なだけでしょ? こういう娘も少しでも盛り上げてくれようと考えてるんだから」

「どうでもいい、この大会はチェックさえ受ければ試合での衣服には制限が無いらしいからな、それよりも肝心なのは試合のほうだろうがそういう所は飛ばせ」


 春日彩のスタイルに同情的な涼、当の対戦相手である香澄は胡座に頬杖でそんな事には興味がなさそうだ。


「はいはい、じゃあ試合ね」


 涼がスマホをいじると、画面は予選の試合画面に変わる。

 映ったのは上着はTシャツにキックパンツという地味な格好。

 身長166cm、体重58kgとアナウンスされた体型はバランスよく鍛えられた印象が強い。


「あら? ギャルのくせにまるで練習みたいな格好だね、一緒に予選にいたけど目につかなかったもんね」


 琴名は予想外に声を上げる。

 同じ試合会場での予選でそこまで目につかなかったことを思い出す琴名。

 まぁ、予選会は過密スケジュールと参加選手の多さでバタバタしていたのと琴名達も周りをみている余裕など無かったのもあるが。

 一回戦は空手、二回戦はレスリングの選手をそれぞれキックとパンチのコンビネーションで、三回戦はボクシング系の選手を膝蹴りで腹を効かしてのKO勝ちを収めていた。

 どの試合も相手の攻撃はほとんど受けずに一方的に試合をしている。


「三試合がほとんど完勝ね、キックのタイトル持ってるだけあってやるわね」

「······だね、圧力もスピードも三試合とも圧倒的だ」


 感心する涼と予想以上の試合に驚く琴名。


「なかなかやりそうじゃありません? 手応えありそうじゃありませんか?」


 ナディアが香澄に振るが当の香澄は胡座に頬杖をついたまま、


「どうかな? 少なくとも圧力やスピードは見た限りどうにでもなりそうだな、普段の練習の方がキツいくらいだ」


 と、素っ気なかった。


「それって普段の練習の相手、涼や真依さん琴名ちゃん、ナディアちゃんの方が上ってこと?」


 優太が聞くと、


「······まぁな」


 香澄は目線だけ優太に返してコクリと頷くのだった。



「さて対戦相手はこんなもんだね、残る真依さんの相手はまだ来日もしてないミスXだもんね、調べようがないよ」

「せやな、しゃーないわ、お楽しみや」


 琴名の言葉に呑気に応える真依。

 予選突破の真依の相手は推薦選手。

 時期的には決まって無ければいけないのだが案外に格闘技界はこういう事がある。

 色々な理由で対戦相手に問題があり試合確定まで難航しているのかもしれない。

 メジャー団体の大会でも実は寸前まで対戦相手が決まってなかった、なんて事も珍しくないのだ。


「僕の方から運営に内々にでもいいから教えてくれるように頼みますよ、対戦相手は今からでも真依さんの情報が得れるのにこっちは知らないのはアンフェアですからね」

「まぁ、頼むわ、でも無理せんでもいいよ? 謎の相手というのもオモロイわ、それにウチの情報って言っても予選会の動画くらい? いや前に働いとった店のデータがあるわ! 風俗店やけどな!」


 優太が声をかけると真依はケラケラとしながら手をパタパタとする。

 国定道場の格闘女子達の中でも飄々として自由人の空気を感じさせる真依。

 言葉だけでなく本気で相手が謎というシチュエーションを楽しんでいるのかもしれない。


「あのですねぇ〜」


 真依に苦笑を返しながら優太はそんな事を考えていた。



「よし、こんなもんね」


 涼がインジェクターのスイッチを切ると壁に映し出されていた画面が消える。


「メルシナはもちろんナディアさんの相手のエディスちゃんは手強そうだね? ボクの相手もそうなんだけどさ」

「ですわね、でもそれくらいの相手の方が私の身体が本気を出してくれますわ」


 琴名に話を振られたナディアはどこか愉しげにそれに応じる。


「あ、相手は皆さん強そうですけど······と、とりあえずは一回戦で誰を応援するか迷うような事は無いですね、良かった」

「だね、真依さんの相手が分からなかったけど予習もちゃんとしたし最低でも全員一回戦突破だよ!」


 フゥと胸を撫で下ろす知里と笑い合う優太だったが、


「それってウチだけ負けるフラグ立てやんかぁ! わざとらしいでぇ!」


 と、後ろから真依にヘッドロックをかけられてしまい悶絶してしまうのだった。



続く 

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