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かくじょ!  作者: 天羽八島
第2章「最強女子決定トーナメント編」
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「誰がきたって構わんのだからな」

「衝撃の赤垣杏子の登場に続きましてはこちらの選手の登場です! 女子格闘技団体エクリプス所属の大道寺姫子選手!」


 赤垣杏子に続いて会場に現れたのはカジュアルシャツGパンという普通の格好をした黒のセミロングヘアの女性。

 

「身長172cm、体重65kg、今年で38歳を迎えますが女子格闘技界黎明期からの活躍選手です! ベルト獲得経験も多数あります! ここ数年は実戦からも遠ざかっておりましたが今大会運営からのラブコールに応えてくれました!」


 姫子は隣り合わせた杏子と軽く握手すると横に並ぶ。

 2人の年の差は20歳を越えており親子と言っても良い差だ。


「さぁ、女子格闘技界のレジェンドの参戦もなりましたが続いては······こちらの選手です、どうぞ!」


 前田アナの呼び出しに別段の間もとらずに会場に入ったのは袴姿の柔術着に身を包んだ香澄であった。


「陣内香澄! 今回の大会の最大勢力である國定道場よりの登場! 古流柔術は近代格闘技に通用するのか?」


 軽く会場に礼をするとテクテクと早足で壇上に登り杏子と姫子と並ぶ。


「続いては······レスリング界から! 並外れた体格を持つ伊藤和葉いとうかずは選手が来てくれましたぁ!」


 香澄がアッサリした入場をしたからか前田アナの声には今度は盛り上げようという力が籠もる。

 そこにヌッと入った感じに姿を現したのは······単純にデカい女だった。


「でけぇ」

「うわ······」


 記者席から声が上がる。

 何がではない。

 単純な身長の話だった。

 黒髪ショートにメガネ、青のトレーニングジャージという記者会見にはおよそ似つかわしくない地味な格好の彼女であるが······

 その身長は······


「192cm!! 体重78kg! 本大会出場選手の中でも圧倒的な巨人! 国内レスリング選手権では有名選手で、何度かの優勝経験もあります、20歳です!」


 どうだと言わんばかりの前田アナのアナウンスであるが、当の本人はパタパタとした早足で香澄の横についてしまう。


「ど、どうも」

「······控えの廊下でも見たが······やっぱりデカいな、決して低くない私と比べても大人と子供だ」


 隣り合った香澄にもペコリと頭を下げるがそれでも頭はまだ上で香澄は思わずジト目を向けてしまう。

 香澄自身が170cmと女子選手では高い部類に入るが和葉は遥かに高い。


「おっきいだけです、今回の練習もろくに出来てないので皆さんに並んで参戦とか、恥ずかしいくらいです」

「······」


 身体に反比例して態度が小さい和葉に香澄は特段何も答えず正面に向き直る。



「ナディア・ウェスティン!! ドリームアイドルとの対抗戦では場外に姫乃樹選手を放り投げるという離れ業を見せた彼女の怪力はホンモノか!? それが今回明かされる!」


 両手を大きく広げながらのアピールをして入ってくるナディア。


「高杉涼! 二度の河内いずみとの対決を完勝してきた彼女がいわばこの大会開催の流れを作ったと言っても過言ではありません、攻撃力抜群の空手は他の選手たちをもなぎ倒してしまうのか!?」


 続いての涼も入場して6人の推薦選手が壇上に揃う。


「先にお伝えした通り、まだ2人の推薦選手が来日しておりませんので本日の推薦選手の紹介は以下の6人となります、残る選手は一両日中に発表です、では全選手ともにお座り下さい」


 壇上に揃った予選突破、推薦の14人が用意されたパイプ椅子に腰を下ろす。


「では······決勝大会の出場選手の内14人が揃ったわけですが全員が揃っていない関係で本日は一回戦8試合のうち6試合の発表となります、尚本戦はトーナメント形式により争われますが一回戦に限り勝者がシャッフルされて準々決勝に進むものとします」

「シャッフル? どゆこと?」


 前田アナの説明に首をかしげるナディア。

 来日していない選手の組み合わせが発表できないというのはともかく勝者がシャッフルされるという意味がわからなかったのだ。


「普通は一回戦第一試合の勝者と第二試合の勝者、第三試合と第四試合の勝者が準々決勝で闘うのがトーナメントだけど、一回戦に限りはそうじゃなくて勝っても誰と闘うかわかりませんという事よ、準々決勝からは普通のトーナメントになるって事」

「ああ、そういう事ですの? 一回戦を勝ち抜いた時点じゃ次は誰かわからない、それはそれで面白そうですわね」


 隣の涼が小声で説明するとナディアも納得した様子。


「······」


 腕を組んでパイプ椅子の背もたれに背中をかける香澄。


『これはもし準々決勝に残る8人のうち國定道場から参加の我々5人が全員残る、とかいう状態になった時の対策か? いや、そうなら一回戦から同門を二試合もいれれば人数は嫌でも絞れるか』


 そんな事も考えるが、


『もしそうなっても一人一人が闘うのは変わらんのだから考えても仕方ないな、誰がきたって構わんのだからな』


 と、思い直す。




「では······記念すべき決勝大会の第一回戦第一試合の組み合わせを発表します!」


 前田アナがそう言うと素早く寄ってきたスタッフが知里に紙を手渡す。

 それを開くと知里はわずかの間の後で顔を上げて、


「決勝大会の第一回戦第一試合は······國定道場音羽琴名選手対赤垣杏子選手です!」


 と、発表したのだった。


続く

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