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かくじょ!  作者: 天羽八島
第2章「最強女子決定トーナメント編」
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「1分くらい闘いたいね」

《バトルフィールドオブガールズ遂に開幕! 予選会場である神女(かんなぎ)総合体育館には64名の女子ファイターが集いました、目指すは1ヶ月後の神女ドームにおける決勝大会!! 出場出来るのはこの中から僅かに8名!!》


 試合会場の4つのリング。

 2階席はあるが予選大会は関係者のみの無観客でおこなわれる。

 運営スタッフ達が忙しげに走り回り、ネット中継の放送席では女性アナが力のこもった様子で撮影をしている。


「3回勝てばベスト8やな、勝ち抜き戦で組み合わせがその場その場なのは仕方ないけど、琴名ちゃんとは会いとうないなぁ~、運営も忖度しといてくれるやろ?」

「あはははは、どうかなー、もし真依さんに当たったらボクは運が悪いよ」


 会場の隅でチャイナドレス姿の真依。

 苦笑する琴名は上半身は半袖スポーツタイプのファイトウェアに下半身はスパッツに裸足。

 2人とも既にチェックを受けたオープンフィンガーグローブをしている。


「琴名ちゃん、ヘソ出しかいな? 流石に若さが溢れるわぁ! 胸も成長してきてるやろ?」

「いつもこれだよ、そんなに観ないでよ、恥ずかしいなぁ」


 2人でヤイヤイしていると、


『苫古真依選手、2番リングで試合です······5分以内にリングに来て下さい』

『音羽琴名選手、3番リングで試合です』


 放送が流れる。

 64名を1日の試合でベスト8までするスケジュールだけに初めは流れ作業だ。

 選手達も控え室もなく、リングのある体育館の周りに敷物を敷いてバックを置いている程度であるので集合も早い。


「じゃあ涼、真依さんの方は頼むね」

「了解······そっちも琴名ちゃん頼むわよ」


 セコンドの用意をして琴名に付き添う優太、涼も真依についていく。

 予選は5分1ラウンド制であるから、ラウンドインターバルの準備は要らないのだが琴名には優太、真依には涼がセコンドにつく。

 香澄とナディアは今日は道場での練習生の稽古の当番である。

 

「じゃあ、優太さんお願いね」

「5分1ラウンドだからね、琴名ちゃんのスタミナならバテる事はないから攻めて攻めて攻めるんだよ? 判定もマストだから絶対に印象が悪くならないようにね」

「わかった」


 ニッコリ微笑んでリングに向かう琴名を優太はアドバイスして送り出す。

 華やかな入場も無ければ、名前のコールもない。

 審判員に軽く確認される程度。

 これが予選なのだ。

 しかしネットテレビはやってきており、琴名が上がったリングに向けてカメラマンが大きなカメラを向けており、リングサイドには実況席が用意されている。


《こちらは予選1回戦の第8試合です、本大会の決勝大会招待選手3名を出す國定道場格闘女子から音羽琴名選手が立ちます、現役女子高生です! 対するは元オリンピック52キロ級柔道出場の若元和美だ!》


 無名が殆どの中で國定道場メンバーである琴名は注目選手なのだろう。

 相手は柔道着を着た大柄な女子。

 リング中央で向かい合う2人。

 

《音羽琴名158cm44キロ15歳! 若元和美は167cm60キロ27歳!》


『元オリンピック選手らしいけど、結構前の話なんだな、体格はかなり大きくなってる』


 優太は相手を観て考える。

 大会は無差別級であるが2人の体格差は本来ならば試合が組まれないくらいの差がある。


「ファイトッッ!!」


 審判の声がかかる。


《いったぁぁぁぁ!!》


 叫ぶ実況。

 開始直後、琴名はネズミを見つけた猫のような俊敏さで遥かに体格に勝る若元に襲いかかったのだ。

 まさに襲いかかる。

 その表現が合う飛びかかり方だった。


「······なっ!!」


 若元にしてもそれは予想外だったのだろう。

 飛びかかってきた琴名を真正面から受け止める形になり後方に倒れ込む。


「······う!」


 リングに後頭部を打ち付け、走った衝撃に眉をしかめるが続けてきたのは顔面へのパンチ。


《マウントをとったぁ! パンチパンチ、パンチパンチ! パンチパンチ!》


 若元の意識はもう飛んでいた。


「ストップ、ストップ、ストップ!!」


 審判に止められると琴名はすぐさま血だらけの顔面に変わった若元の腹から立ち上がり、優太に向けて拳を握ってのガッツポーズをして見せる。


《お、終わったぁ! 試合開始から僅かに6秒! 6秒で音羽琴名がオリンピック柔道代表を粉砕! 予選1回戦突破だぁ!!!》



「こ、琴名ちゃん!?」

「ごめんね、相手観ていけると思ったからいっちゃった、これでこの間のムシャクシャが少しは晴れたから、次は1分くらい冷静に闘いたいね」


 興奮する実況。

 驚く優太に対して琴名はマウスピースを外してペロッと軽く舌を出しながらもその瞳は爛々としていたのだった。



続く

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