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かくじょ!  作者: 天羽八島
第1章「國定道場格闘女子参上」
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「少し長くなるよ」

「タクシー来ましたわよ!」

「わかった、今いくよ」


 道場の表から聞こえるナディアの声に優太は答えて、


「じゃあ、森さん······今日はお世話になりました」


 と、頭を下げて戻っていく。

 道場の表に行くとタクシーが来ており、ナディアと知里が優太を待っていた。

 後部座席に3人を乗せると走り出すタクシー。



「森さんに呼び出されて何を話してましたのよ?」


 早速ナディアが聞いてくる。


「いやね、倉木さんの事だよ」

「倉木さんですか?」


 知里も興味があったのか優太を見てくる。


「いやね、森さんとしては倉木さんの能力を今の女子プロレスだけで収めてしまうのが惜しいんだって、だからプロの総合の世界にも出していきたいから、もし俺達が伝があるなら、ええっと森さんの団体······ウルトラガールキングダムも色々と協力するから前座の試合でもいいから紹介してくれないか? って」

「なるほどですわぁ」

「なるほど?」


 その説明に妙に納得した表情をナディアが見せたので優太は首を傾げた。


「今は女子プロレス団体は業界全体が下火ですわ、ですから色々と選手の売り出しにも苦労なさってるに違いありませんわ、だから盛り上がっている女子格闘技に少しでも勢いをもらいたいと倉木さんを参戦させるつもりなんじゃありませんの?」


 ナディアの推測は妥当な所ではある。

 国民的アイドルグループとの総合戦を闘い、圧倒的な力を見せた國定道場格闘女子達の知名度は試合がネット中継などもあったお陰で大きく増していた。

 対して女子プロレスというのは全盛期からすると相当な下火であり経営的には業界全体が苦しい。

 そうなれば盛り上りを見せてきている女子総合格闘技界に関わりを持ちたいという目論見は優太としても十分にわかる話だ。


「確かにナディアちゃんの言う通りかもね」

「でしょう? で何て答えたんですのよ?」

「確かに今回の事でプリンセスドリームのプロデューサーやテレビの関係者と顔見知りにはなったけど、俺にはそんな事を約束は出来ないよ、でもさ」


 そこで優太は言葉を切った。

 先を言うか少しだけ迷ったが、


「俺もさっきのナディアちゃんと充分に闘えた倉木さんのファイトは気になったからさ、もし皆が試合する時に主催者にでも話せるなら話してみます、とは答えたよ、勿論俺は國定道場の道場主だからナディアちゃん達が最優先なのは当たり前だけどね」


 と、答える。

 倉木とナディアのスパーリングを観ての素直な優太の評価であった。

 ナディアとあそこまで出来るならば倉木は相当な実力があるとみて間違いない。


「まぁ、宜しいんじゃありません? 倉木さんは少なくともプリンセスドリームの方々よりもかなり上ですわ、それに先を考えるならプロレス団体と繋がりを作っておいても悪くはありませんでしょう?」

「そうだね、じゃあナディアちゃんも総合だけじゃなくてプロレスにも上がってみる? ナディアちゃんリングコスチューム似合うと思うけどね」

「遠慮しますわ、わたくしには向きませんわ」


 優太の本気とも冗談ともとれる勧めにナディアはプゥと頬を膨らませるのだった。






          ***



 一ヶ月後。

 夕食前の時間、優太は自室でノートパソコンを前に腕を組む。


「うーむ」


 唸って見つめ続けるのは相手側とメールや電話でやり取りした事を書き留めたテキストやメモ。

 三週間前から始まったやり取り。

 相手からの申し出であったが優太なりに慎重に事を進めたつもり。

 

「よし! 後は本人達だ!」


 琴名の炊く朝御飯の匂いを感じると、優太はノートパソコンを閉じて立ち上がった。




「おはよう、みんな揃ってるね······朝にいきなり話すのもなんだけどすごい話があるんだ」


 居間。

 國定道場格闘女子と知里が揃っているのを確認すると優太は座布団に座らずに告げる。


「なんや?」

「どしたの?」

「勿体ぶってるな」


 各々の反応を見せる女子達。

 優太はコホンと息を整えると、


「実は賞金総額3000万円の女子総合格闘技トーナメントが近くネットテレビ主催で企画されていてね、それに國定道場の出場枠をくれるらしいんだ」


 と、切り出す。

 その言葉に知里を覗く女子達に浮かぶ「!?」マーク。

 無理もない。

 総額とは言え賞金3000万円の女子総合トーナメントなんて聞いた事もない。


「ほ、ホントか? お前騙されてないか? ホイホイいったら全員で○姦されたりしないか?」

「わー、香澄っ! 危ないこと言わないでよ!!」

「ちゃんと相手を確認しましたの!? この世界は話だけ大きくて実は、なんて話が結構ありますのよ?」


 怪訝な顔でどんでもない事を言い出す香澄に慌ててつっこむ涼。

 ナディアも眉をしかめる。


「もちろん疑う気持ちはわかるけど、プリンセスドリームのプロデューサーにも聞いて系列のネットテレビからの正式な企画だと確認したし、条件なんかも何度か打ち合わせもしたよ、その点は大丈夫」


 この点は十二分に確認済みだ。

 優太の足元の座布団を指差す香澄。


「なら座って話せ、詳しく聞こうか?」

「だね、少し長くなるよ」


 神妙な顔を見せる格闘女子達に優太はコクリと頷いて自分の座布団に胡座をかいた。


続く

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