「ホントのとこは?」
「結構、コースもカーブとかあって複雑なスライダーなのね、ただ真っ直ぐ降りるだけじゃないんだ!?」
「結構高いのね、ちょっと怖くなったかも」
スライダーの登頂部にまで裏から上がった優太。
そこは少し広く周りにはキチンと柵があり、落ちたりする心配はないがかなり高い。
ホルダービキニ姿の涼は両腕を抱えて震えて見せた。
『うわ······やっぱり涼も立派だよなぁ』
男子の性。
両腕で寄せられた涼の胸元を一瞬みてしまう優太。
なんとか注視しないように目を逸らし、係員の方を見る。
「お二人ですね、これに乗ってください、コースはトンネル状になってますから落ちたりしませんが、最後の直滑降だけはオープンコースになってます、カメラがあり、そこを落ちてる時の記念写真もプレゼントしてます、下にいる係員に声をかけてくださいね」
そう説明されてから案内されたのは、スタート地点にセットされた2人で乗れるゴムフロート。
両脇に掴む為の取っ手が付いている。
「結構小さいわね」
涼はそう言いながらフロートの前に座る。
少し驚く優太。
「涼は前で平気なの? 怖くない?」
「高いとこよりは全然平気、それに優太はこの後にチーちゃんやナディアとも乗るんでしょ? ナディアはともかくチーちゃんは絶対に前には乗んないからいいでしょ?」
「それは良いけど」
ゴムフロートに座った涼の後ろに座る優太。
座るというより2人でゴムフロートにやや重なって、脚を下にして寝転がる感じだ。
涼の上半身は優太の開いた脚の間、少し体を起こすから良いが涼が完全に寝転がったら頭は優太の胸まで着きそうだ。
「ちょっとキツいけど平気ね、へんなトコ触んないでね、触ったら即正拳だからね」
「即正拳とか両手は取っ手を掴んでなきゃ落ちちゃうよ、俺だって同じなんだから」
意外な密着状態。
涼は冗談を言うほどに気にしていなそうだが、やや緊張してしまう優太。
「じゃあ、乗りましたね? どうぞっ!」
「行くわよ! 勢い良くねっ!」
係員の合図に涼は全くの間断無く、ボートをスライダーの傾斜に向かって落とす。
ゴウッ!
水が流れ続けているスライダーの傾斜コースにゴムフロートの少ない摩擦がスピードを生む。
「やだ!? 速いっ!!」
勢いをつけた涼本人が叫ぶ。
予想以上だったのだろう。
それは優太も同じ。
ただ声が出なかっただけだった。
すぐに右カーブ。
「こ、これは······と、すごっ」
「だ、だね」
声を上げる涼に優太はどうにか音声を発して頷く。
両手で掴んだ左右の取っ手を掴んでないとゴムフロートから落ちてしまうだろう。
左右のカーブ。
「カーブ、くうううっ!!」
「は、はやいぃぃっ」
涼は狭いがトンネル状コースに必要なのかはわからないがカーブに合わせて身体を動かしているが、優太にはそこまでの余裕がない。
何とか目だけは閉じずに前を見ていたが。
「あ!」
突然に視界が一瞬遮られた!
何かが顔にかかった。
「な、なんだ!?」
取っ手から両手が離せないので、顔をそむけるとそれは顔からとれて後方に飛んでいく。
「な、なんだ、今の······えっ!?」
目の前の涼の背中からホルダービキニが無くなり、背中が露になっている。
緩くでもなっていたのが、この勢いで取れてしまったのか。
それが優太の顔に引っ掛かったのだ。
「り、涼っっっ、ビキニの上っ!!」
「きゃあああっ! な、なんでぇ!!」
涼もそれには気づいたが取っ手を離してゴムフロートから落ちるわけにはいかない。
その時、コースが急降下し始めた。
「きゃあああっ!!」
ビキニが取れた事で流石の涼も気が動転したのか、叫び声を上げて後ろに身体を倒れ込ます。
ブルルッ······
一瞬、視界に入る2房の揺れる果実。
「きゃあああっ!! ゆ、優太っ! み、みないでっ!」
「みえてない、みえてない、目をつぶる! みない、みない、みない!」
悲鳴を上げる涼。
自分で胸を隠そうにもラストの最高速に入りつつあるゴムフロートから落ちない様に取っ手からは手は離せない。
一瞬みえた見事なバストの事は言わずに目を瞑りかける優太だったが······
「やっぱ、ダメだっ······ゴメンっ涼っっ!!」
取っ手から両手を離し、背後から涼の胸元に掌を伸ばして2房のそれを鷲掴みにした。
「なんでぇ? な、な、なぁぁぁぁっ!!?」
ビクンッッゥ!
両手でバストを鷲掴みにされての震えと両手に伝わる何とも言えない手応えのある極上の柔らかさ。
『こ、これは流石に······すげ······で、でも離しちゃだめだっ』
「やめ······ああああんっ!!」
思わず力が増してしまった両手に涼が声を上げた瞬間、2人を乗せたゴムフロートはゴールのプールに大波を立てて、落下したのだった。
「優太ァァァァっ!!」
胸を抑えながらプールを出た涼は怒髪天で周囲を見渡す。
そこには咳き込みながらプールから上がる優太。
「アンタ、どさくさに紛れて人の胸をぉぉぉ!」
「わぁぁぁぁっ、待って待って!」
周囲には何人か客もいる。
両手で隠した胸を露にするわけにはいかない、パンチは出せないがまだ脚がある。
大の大人でさえ悶絶させるミドルキックを問答無用で繰り出そうとする涼だったが、
「お客様っっ、すいませぇん!」
赤面しながら走ってくる若い男性係員が来たので、それは一旦止めて背中を向ける。
「何ですか? それよりも水着がコースに流されちゃったから取りたいんですけど!」
「はい、それは水が流れてますから後から流れてくると思いますけど······これ、どうしますか?」
「え?」
赤面した男性係員から差し出されたのは一枚の写真。
そこには······
涼は水を呑んだのか、まだ咳き込む優太に向き直る。
「優太······あなた」
「はぁ、はぁ、スタート前にゴール直前の写真撮る、って言ってたの思い出して、映っちゃいけないと思ったから······つい、他に思い付かなくて、他の人に見られちゃうからさ」
息も絶え絶えの優太。
そう上で係員に最後の直滑降で自動で撮影されると説明されたのを涼はようやく思い出す。
「そうか、そうよね······私これがあるの忘れてて誤解しちゃった、本当にごめん!」
涼は優太に笑いかけてから頭を下げ、係員に、
「撮影データ必ず消してね、絶対に」
と、睨みを効かせた。
数分後。
幸いにも水着はすぐに流れてきて回収、係員はすぐに設置されたカメラのデータを消してくれた。
涼と優太はプールサイドをならんで歩く。
「咳、収まった?」
「平気、平気、最後に落ちた時に水呑んだだけだから」
「両手塞がってたもんね、ずっと私の胸掴んでて」
「あ、いやいや、プールに落ちた時にすぐ離したよ!? ずっとは触ってないよ!?」
「冗談、冗談······わかってるよ、優太が隠してくれなかったら最後はオープンコースになってたから他の客にも見られたかも知れなかったしね」
涼は自分の唇に指を当てる。
「でもまぁ······考えてみれば優太には思いっきり鷲掴みされてるしなぁ、見られるよりも過激な事されたんだよなぁ~」
慌てる優太。
「そ、そこはごめん、他に思いつかなくて!」
「ま、あの状態じゃ仕方ないとしましょ、結構力が入ってて今もドキドキするほどに焦ったけど······優太、ナディア程に大きくはないけど、私の胸も結構掴み心地良かったでしょ?」
「そ、それは、な、なに言ってんだよ!?」
「ホントのとこは?」
口元を弛めて覗き込む涼にうつむく優太。
「それは······その」
「その?」
「い、言わせないでよっ! そりゃ大きくて手応えあって、スゴかったよっ! ホントにごめんだってば!」
不可抗力ながら図星。
赤面しながら白状する優太。
「正直でよろしい、でも優太も結構水呑んじゃったから、ナディアやチーちゃんと滑るのは無し! 助けてくれたお詫びに有料のパフェ奢るからさ、行きましょ······あと、ありがとね」
涼はその手を引いてニッコリと微笑んだ。
続く




