表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かくじょ!  作者: 天羽八島
第1章「國定道場格闘女子参上」
43/92

「甘かった」

≪あっという間に二敗! 後がないプリンセスドリーム、先鋒戦次鋒戦と圧倒的な戦いを見せる國定道場格闘女子にどう戦いを続けるのか!? 中堅戦を前にプリンセスドリームのインターバルショーをお楽しみください≫


 実況がインターバルのショーを告げると、格闘雑誌の記者達は一斉に裏の記者専用のブースに向かう。

 観客の多くはプリンセスドリームのファンであり、インターバルショーも目的の1つであるが、格闘雑誌の記者達はその間にトイレや喫煙を済ませておきたいのだ。


「しかし真剣勝負とはホントですかね? リングからリングサイド席まで人を放り投げたり、竹刀をつかんで相手を投げるとか出来るんですか? 俺達、やり手のPとやらに嵌められてるんじゃないですか? これからプリンセスドリームの怒濤の3連勝だったら本気で疑いますよ、俺は」


 電子タバコをくわえる若手の記者森下のぼやきに、


「お前バカか、俺は久し振りに震えたぞ、そんなんもわからねぇからお前にはメインの記事を書かせられねぇんだよ、少なくとも先鋒と次鋒はどっちにしても立派な女子格闘家が出てたよ、実力差はあったけどな」


 中年のベテラン記者阪井は煙草に紙マッチで火を点ける。


「ホントですか?」

「ああ……周りに聞いてみりゃいいよ」


 阪井が周囲を鼻で差す、そこには格闘系雑誌だけではない、スポーツ新聞などの記者もいた。

 その中の初老の記者が森下を見る。


「阪井さんの格闘技を観る眼は確かだよ、それに國定道場はあの経済界の大物だった國定優之介が個人的に関わっていたらしい、本物の女子武道を造り上げるのが目的だったとも言われるからショーじゃないだろうね」

「なるほど……でもあの道場はわかりますが、プリンセスドリームのアイドル達はどうなんです? 彼女等はショーアイドルでしょ、少し派手にやられて見せているだけかも」


 先輩記者に言われた手前、取り合えず納得はするが、まだ疑いの残る森下。


「そんな事は無いですよ」


 ふと記者たちの耳に入ってきたのは、喫煙室には似つかわしくない可愛らしい声だった。


「え?」

「あ……君は?」

「雑賀愛日ちゃん!? プリンセスドリームの愛日ちゃんじゃないか!?」

「はじめまして記者さんたち、少しだけ私に時間を頂けませんか?」


 そこに立つのはセミロングにパッツン前髪、太めの眉毛につり目の瞳、やや好みはあるだろうが抜群の美少女。

 個性豊かなプリンセスドリームでのポジションは忍者アイドルで今も髪の毛と同じ漆黒の忍者装束に身を包んでいるが……彼女を只の美少女忍者アイドルでは終わらせないのが、男なら眼を離せない巨大な隆起の胸元。

 巨乳忍者アイドル雑賀愛日がそこにはいた。


「ど、どういうこと? 君は次の中堅戦出るんでしょ?」

「はい、でもまだ休憩を挟みますから、それで記者さんたちに聞きたい事があってきたんですよ、まなび、教えていただきたい事があるのです」


 緊張気味の森下にニッコリと小首を傾げる愛日。

 美少女がやると様になる。

 年長の阪井やスポーツ新聞の記者たちも森下程ではないが、その仕草に多かれ少なかれ興味をそそられてしまう。


「教えていただきたい事? な、なんだい?」

「國定道場格闘女子とは一体どんな集まりなのですか? 知っている事があれば教えてほしいのですが?」




             ***



 ズシイィィィン!


 控え室に響く重い衝突音。


「うわぁ!」


 ガードマットを構えた優太はたちまちバランスを崩して、後方にゴロンと転がる。


「ご、ゴメンね!」


 慌てた様子の琴名、タックルのウォームアップに優太が大きなガードマットを構えたのだが琴名のタックルはそれを簡単に倒してしまったのだ。

 

「あっちゃ~、ダメやな優太くん、君は男の子やろ? 琴名ちゃんは女の子で身長も150半ばしかないんやで!? そんな子のタックルをガードマットを構えて受け止められないなんてひ弱過ぎるで?」

「いやぁ、そうは言っても真依さん……前は平気だったんだけど、最近の琴名ちゃんのタックルは無理になってきて、スピードもパワーも最近になって更に上がってますよ」

「あははは、ホントにゴメンね」


 真依にからかわれて頭を掻く優太、琴名は悪い気がしないが申し訳無いと苦笑いを浮かべる。


「でも、そうやな……ウチが道場出る前に比べたら、琴名ちゃんはマジにはようなってるな、それに」

「えっ?」

「オッパイもおおきくなってんねん!」


 ムニュ、ムニュ。


「きゃぁぁぁぁっ!? 真依さん、ダメェェ、ボクそういうの弱いのっ!」


 真依に不意に後ろから胸を掴まれた琴名はビクンと身体を大きく震わせて声を上げる。


「あ、あの……」


 その状態にどう反応していいか迷う優太。


「いやぁ、優太さん、みないでぇ~」

「へぇ、いい反応やんかっ? 好きな男の前でなぶられるんはどんな気持ちや? NTあー……」

「やめなさい!」


 ゴインッ!


 涼の手刀が真依の脳天に振り下ろされる、アイタァと頭を押さえて崩れさる真依に細目を向けてから、涼は琴名に向き直った。


「とにかく本格的な対外試合がこんなビッグイベントで落ち着かないかも知んないけど、琴名ちゃんは本当に力を付けてきているから自信もって!」

「うんっ! ありがと」


 琴名は朗らかに上気した顔を縦に振った。

 その素直さと純粋さも彼女の武器だ。

 香澄も琴名に歩み寄る。


「そうだ、相手は忍者アイドルらしい、おそらく身体能力は高いのだろうが、それは琴名も同じ、格闘技のセンスならば遥かに上だ、スタンディングは多少はあるだろうが、相手も150ちょっとの小柄、寝かしてしまえばお前の物だ、私がセカンドにつくから大船に乗ったつもりでいろ」

「頼りになるよ、香澄さん!」

「じゃあ行こうか、そろそろ休憩も終わりだ」

「わかったっ! 私で決めてきちゃうからね!」


 緊張気味ながらもグッと拳を固める琴名。


「ウチや涼が出る前に決着つくのは盛り上がりに欠けるけど、頼むで、ウチら楽に闘わせてや!」

「構わないわよ」


 後に控える真依や涼も琴名と拳を合わせる。


「さぁ行こうか!」


 氷嚢や水などが入ったクーラーバッグを肩に背負った優太が促すと、ハイテンションに拳を振り上げ、涼や真依、ナディアに見送られた琴名は優太の後に走り寄ってきた。



            ―――




『な、なにこれ!?』

『なんだ、コイツ!?』


 緊張気味ながら乗りに乗った入場数分後。

 琴名と香澄はリング上とリングサイドで同じ感覚に陥り、背筋に寒い物を感じていた。


『……隙がないっ!! 全くないっっ!』


 試合開始から30秒。

 忍者装束の雑賀愛日は構えも取らずにリング中央に立ち、琴名はレスリング独特の低い構えのまま、その周囲を回り続けているだけだ。

 ただ愛日のつり目の瞳は見たこともない鋭さで時おり琴名を冷たく睨み付けていた。



≪両者、接触がない、まだ指一本触れあってません!≫



『こ、この……っ、い、いくかっ? ダメ、ダメっ!』


 タックルを仕掛けようと体重移動をしかけるが自らの自制心でそれを抑えた。

 背後に回っているのに、あの鋭い視線で一挙一投足を全て捉えられている気がしてならない。


「そうだ、だめだ、だめだ、待て待て待て!」


 琴名に指示を出すリングサイドの香澄も額から汗が流れ落ちている。


「香澄ちゃん!」

「黙ってろ、集中できんっ!」


 自らが試合をしている訳でもない香澄だが、自分の戦っていた次鋒戦では見せなかった緊張の顔を隠さない。

 額から流れて綺麗なラインの鼻筋に通っていく汗を拭いながら香澄は呟く。



「甘かった、これは格上だ……」




続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ