「胸じゃ負けるけど、格闘技じゃ負けないよ!」
「セコンドの方はこちらにどうぞ」
「あ、すいません」
丁寧な口調のスタッフに案内されてセコンドの入場証を首から下げた優太はリングサイドに立つ。
リングにはリングアナウンサーと國定道場格闘女子御一行とプリンセスドリーム格闘技部の10人の乙女が集う。
格闘女子御一行をリングに導いた知里は既にリングサイドの放送席に座っている。
リングに集まるスポットライト。
「本戦は5対5の総合格闘技ルールにより、先に3勝を上げたチームが勝ちの団体戦です、ただし団体戦の勝負が途中でついた場合でも、特別ルールにより5人目の大将戦まで試合を行います」
リングアナウンサーが特別ルールを説明してから、リングの左右に別れた両チームに挟まれるように中央に立つ。
「それでは……両軍の対戦カードを発表します!」
観客が沸き、格闘技イベントらしい対決を煽る音楽が会場に鳴り響く。
「先鋒戦! プリンセスドリーム格闘技部、姫乃木美姫!」
「はいっ!!」
リング中央に歩み寄るのは黒帯の空手着を着た黒髪ショートカットの娘。
≪プリンセスドリーム一番手は北のグローブ空手の女王とまで言われた姫乃木美姫、18歳!≫
実況が選手紹介をすると、観客からは声援が飛ぶ。
「國定道場格闘女子御一行様、先鋒ナディア・ウェスティン!」
名前を告げられて歩み出るのはナディア。
青で統一されたロングシューズにプロレススタイルのコスチュームはその豪奢な髪型も相まって、海外からベルト挑戦に来た美人外人女子レスラーにしかみえない。
≪資料によりますと怪力無双との事ですが、かなりの美少女なのとその金髪にまるでフランス貴族の如き髪型が目立ちます!≫
対峙する二人。
身長体重はほぼ互角だ。
170㎝近いナディアも美姫は体格で全くひけを取らない。
「続いて次鋒戦! プリンセスドリーム剣もとか!」
「はいっ!」
歩み出るのはポニーテールで紫の道着に黒の袴の少女。
身長はかなり低く、体重も無さそうだ。
≪プリンセスドリーム2番手は元気二重丸剣士の剣もとかチャンです、女子剣道選手権九州大会二連覇の実力を活かすために竹刀無しでの総合格闘技を勉強してきました!!≫
「國定道場格闘女子御一行様、次鋒……陣内香澄!」
「おうっ!」
今度は香澄が進み出る。
香澄の身長は國定道場格闘女子の中でも一番長身の170㎝。
剣もとかはおそらく150㎝を少し越えるくらいだ。
対峙するとその身長差は歴然である。
「もとかチャン、竹刀で叩いて良いよ!」
「香澄ちゃんもカワイイじゃん!」
「美人!!」
香澄にも応援ではないが、その容姿に声が上がる。
オーロラビジョンに映し出される口を真一文字に結んだ凛とした表情。
客に魅せるアイドルとしての可愛らしさはないが、美しき格闘女子の顔がそこにはあった。
「やっぱり香澄ちゃんは決まるなぁ~、凛々しい!」
思わず優太も見入ってしまう。
「それでは中堅戦! プリンセスドリームより、驚異の身体能力とプロポーションを誇る忍者アイドル! 雑賀愛日ちゃんです!」
オオッ!!
観客達は出場アイドルは前番組などで知っているに違いないのだが歓声が上がった。
「了解でごさいますっ!」
踏み出して来たのは前髪パッツンのセミロング、つり目の瞳に太めの眉毛をした美少女。
忍者アイドルを名乗るだけあり、黒装束の忍者の格好なのであるが……
『カワイイ……それに……』
顔立ちはとびきりに可愛らしいアイドルルックス、
そして、それに負けないくらいに男子を惹き付ける……
「そのプロポーションはまさに色香も武器の忍者か、身長152㎝、そのバストは……公式99㎝!!」
ウォォォォォッ!!
12000の唸り声。
ファンなら知っている筈だろ? と思いながらも優太ももう一度彼女の忍者装束を大きく膨らませる胸元を見てしまう。
決して体型自体が太めでもないのに、身体の凹凸がとにかく凄いのである。
「ま・な・び! ま・な・び!」
「愛してる、まなび!」
「あははは……お恥ずかしいでごさいますぅ」
熱烈なファンからの声に照れて後ろ頭を掻く彼女。
「対するは抜群の格闘センスを誇る國定道場格闘女子最年少、音羽琴名十五歳!!」
「おうっっっ!!」
スパッツにヘソ出しスポーツシャツ姿の琴名は両手で自分の頬をパチンと叩いて、雑賀愛日と相対する。
「胸じゃ負けるけど、格闘技じゃ負けないよ!」
「楽しみにしておりますよ」
不敵な笑顔の琴名に愛日はニッコリと微笑む。
「早くも國定道場の琴名ちゃんがやる気です、続いて副将戦は……早くも実現したリベンジマッチ!!」
フレーズだけで対戦カードはわかってしまう。
オオッと上がる歓声。
その反応はリングアナウンサーも解っていた様子で、もっと沸けとばかりに両手で煽る。
「因縁の対決、再び……副将戦は河内いずみ対高杉涼ですっ!!」
リングアナウンサーが対戦カードを言うと、固く口を結んだ河内いずみと緊張は少し見えるが別段変わった様子の無い空手着の涼が対峙した。
「いずみちゃん、今度こそ倒せ!!」
「頑張れいずみ!!」
観客の声援は圧倒的に河内いずみへの物だが……
リングサイドの優太からはそれに対し、どこか醒めた様子すら見える涼が気になった。
「それでは大将戦! 最後を飾るのはプリンセスドリームは我らが姐御、安東唯姐さん!」
「おうよ!」
正面を睨み付けたまま踏み出す安東唯。
特攻服に身を包んだ彼女はもちろん美人なのだが、迫力が今は遥かに上回っている。
「こ、怖いなぁ」
思わず優太も震えてしまう。
もちろん彼女は元レディースらしく、本人も演出している所もあるのだろうが迫力は現役のそれである。
「國定道場格闘女子の大将は……本人曰く國定道場の秘密兵器、美少女カンフー使いの苫古真依!!」
「はぁい」
軽い調子の返事の真依。
その姿は髪に2つのシニョンを付け、抜群のプロポーションを見せつけるかのようなスリットの入ったチャイナドレス。
「キレイなお姉さん系だぁ!」
「マジにルックスのレベルすげぇ國定道場、本物の芸能プロじゃねぇの?」
魅惑十分のその格好には観客も喜ぶ。
『俺もそう思うよ』
それには優太も素直に同意する。
好みもあるが國定道場格闘女子御一行は今回のプリンセスドリーム格闘技部に全くルックスでも劣ってない。
観客やネットテレビの視聴者もきっと思っている人間が多いと贔屓目なしで思う。
「さぁ、史上最大の美少女格闘決戦の幕が開く! 開戦はさっそくこの後すぐ! 先鋒戦、姫乃木美姫対ナディア・ウェスティンから始まります!!」
勢揃いした選手達。
リングアナウンサーが告げると、観客達は更なる大歓声で対戦を今かと待ち望んだのである。
続く




