「すごく楽しそう」
フードコート。
神女デパートのそこは巨大なワンフロアを囲むように店が配置され、用意されたテーブルで食べる形だ。
優太とデパートを回るのは誰かというゲーム企画は最終ラウンドを前に少し何か食べて休もうという事になっていた。
「えっとね、ここまでの成績は私が1位と2位で平均1.5、チーちゃんが3位、1位で平均2、涼ちゃんも2位、2位で平均2、ナディアさんは4位、2位で3、香澄ちゃんは5位と2位で3.5だね」
「納得いかん、ナディアは初めの太鼓ゲームは壊していただろうが!?」
「あら? わたくしは壊してゲームオーバーになりましたけれど、貴女は普通にクリア出来ずにゲームオーバーでしょ? そこまでの得点が私の方が上でしたのよ!?」
「ぐぬぬぬ……」
たこ焼きを食べながら途中経過を発表する琴名、フライドポテトをパクつき香澄は不服そうに抗議したが、ナディアにフライドポテトを一本抜かれて反論されると返す言葉がない。
「実は香澄ちゃんは次で1位取っても……ナディアちゃんも針の穴を通すような確率で」
「ユータ、お黙りなさいまし!」
「そうだ!」
計算上の真実を口にしようとした優太を香澄とナディアがギロリと睨む。
「次のゲームを勝った物が優勝ですわ!」
「その通りっ、公平を期した見事な裁き!」
「んな訳あるわけ無いでしょ!? これまでの経過を無視するんじゃ無いわよ、はい香澄は脱落、ナディアはほとんど可能性なしだからね」
「ううっ、せめて合気道体感ゲームさえあれば」
横暴なルール変更を言い出した大人げない二人は涼に簡単に撃破される、もちろん知里や琴名も涼に賛成である。
香澄はきっと今世紀末になっても発売されないようなゲームを求めて悔しがる。
「でも、平均順位が同じだったらどうしますか?」
「ジャンケンかな?」
あり得る懸念を口にした知里に優太が答える、延長戦をやれば貰ったサービスチケットから実費を出してのゲームプレイになってしまうので極力簡単な形だ。
「最後のゲームはなんだ? せめて負けるならば敗北の美学を貫いてやる」
「まぁまぁ、先にご飯食べようよ、スゴいや、ラーメンでもステーキでも何でもあるよ」
優勝の確率が無いにも関わらずいきり立つ香澄。
ドウドウとそれを宥めて琴名が周囲を囲む様々な店舗に眼を輝かせる。
彼女のいう通りフードコートを囲む店は様々な種類の店が並んでいた、優太にはまるでそれが真っ昼間から縁日が行われている様な感覚を覚えてしまう。
たこ焼、ソフトクリーム、ピザ、パンケーキからラーメンと目移りする程だ。
「軽くいくか……」
「私はここのパンケーキかな、クリーム多いんだよね」
香澄はたこ焼、涼はパンケーキの店に歩いていく。
「わたくしはガッツリとピザ!」
「私はラーメン、ここはとんこつラーメンが有名だよ」
ナディアと琴名も行ってしまい、テーブルに残されたのは優太と知里の二人。
「あ、あの優太さん」
「えっ?」
「何か食べないんですか?」
「食べようとは思うけど、これだけあると迷っちゃってね、チーちゃんは? 美味しそうなケーキとかも食べられるらしいよ、ケーキ大好きだったよね? ホールで一個とか言ってなかった?」
「あの……もちろん食べたい物はあるんですけど、体重管理とかも自分だけですからね」
「ああ、なるほど、大変なんだね」
知里は国民的なアイドルだがフリーな状態だ。
管理されていないと言えば良いが、全て自分でやらなければいけないのだ。
「あとホールで一個とか言ったことはないですよ?」
「あ、ご、ごめんね、言ったのチーちゃんじゃなかったね」
少しだけわざとむくれた顔を見せた知里に優太は失言を謝り後ろ頭を掻いた。
「ユータ! 座ったままで食べませんの? 勝手には持ってきてはくれませんわよ」
「ああ、迷ってて」
「迷った時はピザですわ、乗せる具材で味がかわりますもの、一緒に具材を選んで一緒に食べましょう、さぁ!」
「あ、うん、それもいいか」
そこにナディアがやって来て、優太の手を引き椅子から立たせた。
「知里もピザにします?」
「あ、カロリー気になるんで、すいません」
「あらあら、私なんてライスボールにして1000個食べても、この身体をフルパワーで動かすと消費してしまいますわ、細胞一つ一つの温度が上がって、合計何兆度にもなって燃えて消費していくのですわ」
「あははは……いいなぁ」
「じゃあ、ユータは連れていきますわよ」
嘘かホントか、まず嘘であろうナディアの理論に知里は苦笑いを浮かべながら二人を見送る。
「あ~、優太さん、来たね、私ととんこつラーメン食べようよ、ここのはコクが違うよ」
「蕎麦にしろ、蕎麦に! ここのは繋ぎ無しだぞ」
「パンケーキも美味しいわよ、少しあげるわよ、種類だってけっこう選べるわよ」
「ユータは私とピザ食べるんですわよ、とんこつラーメンとかパンケーキとか蕎麦とか味に種類が無いですわよ!?」
「なにをぉ、シンプル・イズ・ベスト! 蕎麦とそばつゆと少量の薬味の美しさがわからないのか? この飽食の豚め!」
「ラーメンこそ外食の帝王じゃないかな!」
「たまにはパンケーキとか食べるのもいいわよ?」
優太の周りに集まる格闘女子達。
メニュー1つだけで、ああでもない、こうでもないといつまでも何かを言い合っている。
優太は彼女達の誰に答えたら良いのか判らず、愛想笑いを浮かべている。
「……」
その様子をしばらく見ていた知里だったが……
「すごく楽しそう」
と、微笑んだ。
ーーー
「せっかく勝ったのに、良かったの?」
「はい」
午後5時。
駅に向かう途中で歩きながら覗き込んできた琴名に知里はコクリと首を縦に振った。
朝食後の最後の一戦。
優太が選んだゲームはモグラ叩き。
この競技を制したのはなんと香澄。
これなら分かるとモグラ叩きマシーンの前で目を瞑り精神統一、真剣な眼差しで挑戦し勝利をもぎ取った。
香澄が1位、知里が2位、涼が3位、琴名が4位、今度何かを壊してはと、思いっきり叩くのを躊躇したナディアが5位という事で、総合の優勝結果は知里に決まったのだが……
「やっぱり皆でいきませんか?」
という知里の意見で結局は全員でデパートをあれやこれや言いながら回ったのであった。
「せっかくチーちゃん勝ったのに……」
「良いんですよ」
知里は前を向く。
そこにはナディアや香澄、涼と何やら賑やかに話したり、絡まれたりしながら歩く優太がいた。
「皆でいるの、スゴく知里は楽しくて嬉しいです」
「……そっか」
「離れてないで行きませんか?」
「そだね」
そんな会話を交わすと琴名と知里は前を歩く四人を追いかけるように走り出した。
続く




