「セガール投げで叩き落とす」
「広いなぁ、賑わってるね」
「サービスチケットの影響かな? この賑わいじゃ好きなゲーム出来るかなぁ~」
デパートの三階。
その約三割ほどを占めるアミューズメントエリアに声を上げる琴名に不安がる涼。
二人の言う通りアミューズメントエリアはかなりの規模であるが、家族連れやカップルが目立ち賑わっている。
「チーちゃん、見つからないようにね」
「はい……こうします」
優太に注意された知里はニコッと笑い返しながら、背中に背負った小さなリュックから鍔の付いた帽子を取り出して深く被る、こうなると髪もウィッグ、眼鏡の影響もあって可愛い娘ではあるが知里だとは判別しにくい。
「それはいいね、似合う似合う」
「ありがとうございます」
「何をイチャイチャしてますのよっ!? ほら知里さん、ゲームを決めますわよ?」
知里と笑いあっていると、ナディアが知里の手を引く。
「え!? ち、知里もやるんですか?」
「当たり前ですわよ、知里さんもチケット貰えるんですのよ? 貴女か琴名ちゃんが勝ったら三人で行くと良いですわ、琴名ちゃんに一人でやらせるよりも確率上がりますわよ?」
「そうですね、そういう事なら知里も参加します!」
格闘女子達と体感ゲームで対決する事に驚いた知里だが、ナディアに言われるとコクリと頷く。
優太としても国民的アイドルが自分と買い物を回る為に頑張ってくれるのは気分がいい。
「ま……まぁ、チーちゃんもウチの道場の女の子達と体感ゲームで対決するのはハンデかも知れないけど頑張って」
「あ、はい、知里、頑張ります!」
「ユータさぁん! 個人的な応援は困りますわ」
ズイと優太に膨れっ面をするナディア。
金髪縦ロールの美人だが、こういう顔をされてしまうと可愛いと思わざる得ない。
『か、かわいい、で……でもナディアちゃんって、こんなに俺に積極的だったか?』
優太は赤面しながら、それならそれで良いと思い始めてしまうのであった。
「体感ゲームは結構あるわね、サービスチケットは女の子には一人三枚、どのゲームでも無料になるらしいわ」
アミューズメントエリアに入った一同、サービスチケットを手にした涼が周囲を見渡す。
やはり休日でサービスチケットまで配っていれば、遊んでいるのは女性が目立つ。
「勝負をどうつけるかだね、出来れば無料で出来る範囲で決めないといけないね」
「当たり前だ、こんな退廃的な場所に居るだけでも堪えられないのに実費まで払ったら、私は優太をここから下のホールまで吹き抜けをセガール投げで叩き落とす」
「か、香澄ちゃん……」
勝負方法に悩む琴名、そこで辛辣な言葉を吐く香澄に優太はその名前を呼ぶ位しか出来ない無力な男であった。
「まぁ、香澄が勝ったら優太をどうこうしようと良いでしょうよ、とにかく対戦方法を決めましょ?」
「そうですわね」
「あ……あの、良くないんじゃ……」
涼にナディアが同意する、優太としては同意できないがそれを代弁してくれたのは知里のみだ。
琴名が三本指を全員に見せる。
「手っ取り早く、三種類のゲームを全員やって、スコアの順に順位をつけて一番平均順位が優秀な人で良いんじゃないかな? 一位、二位、三位とそれぞれのゲームで取ったら、平均は二位とかいう感じで決めてくの」
「それが無難だな」
「いいわね」
「意義なしですわ」
琴名の出した決着の方法に賛成する他のメンバー。
優太としては皆が納得してくれれば構わないので口出しなどはしないでいると、
「でも……どの体感ゲームで決めるかはどうします?」
知里が訊くと全員が黙り込む。
十数秒の沈黙の後で……優太としてはまさに恐れていた提案がナディアから出された。
「ユータさんが決めれば良いのですわ! だってユータさんが一緒に出かけるんですもの!」
「それがいいね!」
「まぁ、構わないんじゃない?」
「勝手にしろ」
「そ、そうですね」
その提案に國定道場格闘女子と知里はやはり同意してしまう。
誰もが思いつく無難で、プレッシャーが優太にしかかからない方法だ。
「わかったよ、でも結果が出た後で俺が決めたゲームが悪かったは勘弁だよ」
断りきれるとは思えなかった優太はため息をついて最低限の要求だけをし、体感ゲームが並ぶコーナーを一通り目を巡らせた後で……
「じゃあ、第一ラウンドはこれ……この太鼓叩きゲームで勝負してもらうよ」
と、全員に振り返ったのであった。
続く




