「イエイなら知ってますわ、ダブルピース!」
都心という場所は優太には落ち着かない場所だ、故郷の島で暮らしていた時は鹿児島に出た時にしか見ないようなビルが遠慮なしに立っていて人が多い。
更に優太を落ち着かなくしているのは、かなりの頻度でこちらを見てくる人達だ。
何故かというと……特に冴えない男一人、一人でも際立つ容姿のレベルの女子が五人というのはかなり目立つらしい。
「ほら優太さん、何をキョロキョロしてますのよ?」
「置いてっちゃうわよ?」
前を歩くナディアと涼。
二人はモデルをやっているし、抜群のプロポーションの持ち主である。
特にナディアは外人だし、縦ロールをたくさん下げた金髪は可愛らしさとは別の意味で注目の的だ。
「あれが神女デパートだね? イベントもあるらしいよ」
「デビューしたての時に来た事あります、屋上ではショーがやっているんですよ」
「日本刀剣展がやっているから観たいぞ」
後ろを歩く琴名、知里、香澄にしても涼やナディアには負けていない。
知里に至っては国民的なアイドル、もちろん素顔では出歩けないのでウィッグに眼鏡という変装をしているが美少女には間違いなく、香澄は背の高いモデル体型の黒髪和風美女、琴名は年少だが健康的な魅力に溢れている。
簡単に言えばアイドル並のルックス(一人はアイドル)を連れているハーレム野郎と思われている可能性が高い。
『まぁ……この中の一人も俺の彼女でも何でも無いからね、俺が誇らしげになるにも、申し訳なさげにする理由はどちらも無いんだけどね』
周囲からの羨望と嫉妬の眼差しに優太は苦笑を浮かべながら、皆と駅前の巨大デパートに入っていくのだった。
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「スゴい……すぐにスゴい」
中に入った途端に上を見上げる優太。
全館吹き抜けのホールがまず飛び込んできたのだ。
「キョロキョロするんじゃありませんわよ? ユータは私が案内するから、後でここに集まる事にしてまず解散しません?」
ナディアが優太の手を掴んで皆に振り返る。
「え!?」
意外そうにする優太だったが、
「ダメだよ! 優太さんはボクとチーちゃんと行くの!」
と、琴名がナディアに喰ってかかる。
知里はオドオドしながらもそれを否定はしない。
「まてぃ! 他の者と優太が行くのなら私が来た意味がない、私は破廉恥なこいつがコレクションをまた増やさぬように見張りに来たのだ、他の者はいねい!」
そこに割り入ったのは香澄。
琴名とナディアは振り返る。
「いねい、って何ですのよ!? イエイなら知ってますわ、ダブルピースですわ!」
「ハレンチコレクションなんて、こんな立派なデパートに売ってないよ! ダブルピース!」
「ななっ!? これだけ広ければ破廉恥な店だってあるに違いない、アダルトコーナーだってあるだろう、ダ、ダブルピース」
ナディアと琴名に両手でピースされながら反撃され、それに何とか反論する香澄。
「あ……あの俺はカーテンを」
「黙ってて!」
「うるさいぞ、ダブルピース!」
自分そっちのけ状態の優太が口を挟もうとするが、琴名と香澄に睨まれてしまう。
香澄に至っては優太にもダブルピースだ。
「あ、あの……」
「しょうがないわねぇ」
不安がる知里の横でヤレヤレと言わんばかりに涼が頭を掻いて踏み出す。
「な、何ですの? 涼まで何ですの?」
「優太さんは私達だよ」
「私が優太を完全管理下に置くっ!」
哀れな倒された鹿の肉を奪い合うライオン達は近づいてきた新たなライオンを睨む。
「違うわよ、誰も約束してないなら言い合いをしても無駄でしょうに!? だからね、あそこで決めましょ?」
腰に右手を当て、涼の左手が差した方向には本日のイベントを知らせるポスターが貼ってあり、そこには大きく、
「本日ゲームコーナーにてレディースデー、女性に体感ゲーム全種類サービスチケット配布中」
と、書かれている。
「快感ゲーム!? そんなハレンチなのできるかっ!?」
「違う違う、体感ゲーム、体感」
「面白そうですわね、その体感ゲームの結果で誰が優太さんと回るかを決めるんですのね!」
香澄のボケに琴名がツッコミ、ナディアは何故かデカイ胸を張って答える。
「そういう事、そうすれば収まるでしょ? でもさっきは違うとか言っちゃったけど、それならば私も参加するわね、観ているだけはつまらないしね」
涼はそう言うと、優太に向けて悪戯っぽい笑みとウィンクセットで見せてきたのであった。
続く




