〜失敗〜
私達はじっとしていても仕方ないので、とりあえず裕也さん達の町に出かけることにした。
裕也さんはちょっと驚いた顔をしたけど、笑顔でだしてくれた。でも条件があって、その条件とは、ボディーガード(見張り?)として柳原 剣斗(やなぎはら けんと)さんも一緒に行くということだ。これについては友美ちゃんがいやそうな顔をしてたなあ。あの人もともと行動を制限されるのかなり嫌ってたし。私はいいんだけどね。どっちかというとちょっと有名人になった気分で、なんかうれしいし。
町に出た私達はびっくりした。誰も町の中を歩いていないのだ。家や店の中では、確かに人がいるのに、人が家から出てくる瞬間に消えるのだ。剣斗さんがいうには、ここ数年の間で文明もかなり発達していて、わざわざ太陽光の下を歩くことがないようだ。健康的にいいのか悪いのか・・・。まそれはおいといて、とりあえずドアから出るときに、行きたい場所を思い浮かべると、そこの玄関にたどり着けるらしい。なるほど、だからさっき街を見たいといったときに、裕也さんが驚いたのか。私達はいまさらどうすることもできず。おもいっきり注目を浴びながら店内に入ったのであった。
その店は、雑貨屋だった。ここでは、何を売るか決めてない店がほとんどなんだそうだ。
私達はここのお金を持ってなかったから、店内を診ることしかできなかったけど、それでも十分楽しかった。人型ロボットなんてのもあって、その場その場にあわせて本当の人間みたいに動くのだ。他にもアクセサリーコーナーは、簡単な質問に答えるだけで、その人の好みに合わせた物を持ってきてくれたりした。このときでてきたのは、十字架のネックレスだった。
このとき剣斗さんが、友美ちゃんとおそろいで買ってくれたんだよね。これはかなりうれしかった。友美ちゃんはつけるのを嫌がってたけど、つけてくれた。雑貨屋の中にはまだまだあったけど、もう帰らないといけないと剣斗さんに言われて帰ることにした。帰りは入り口にあるワープを使うことにした。行きたい場所を思い浮かべながら出て行くだけでいいそうだ。
私は裕也さんの家〜。と唱えながら入り口を通ろうとした時、剣斗さんの静止する声が聞こえた気がしたが、もう遅かった。ひゅっと言う音が耳元でして一瞬のうちに景色が変わった。でもそこは全く見覚えのない草原だった。私はあたりを見渡したけど、自分以外に人を見つけられなかった。
「友美ちゃん。剣斗さん?」
不安になって二人の名前を呼ぶが、返事はかえってこない。どうやらワープのときに私一人だけ違うところに飛ばされてしまったようだ。パニックになりかけたとき近くでガサガサという音がした。
「友美ちゃん!」
私は友美ちゃんが迎えに来てくれたと思って音のほうに呼びかけた。しかし次にでてきたのは、友美ちゃんではなかった。でてきたのは言い表しようのない化け物だった。裕也さんの声がよみがえる。
―ここの世界には人の形をしてないものもいる。そいつらには理性というものが全くないんだ。絶対近づいてはいけないよ―
すみません裕也さん。なんだかもう逃げることもできなさそうです。その化け物が近づいてきたとき、唯華は意識を失ってしまった。




