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冥界にて。  作者: 幽々谷
9/14

九話 幽男、妖し妖の夢を見る。 三日目・午前

「さてと…今日の朝飯はなにかなー…」

 

 長い人生の中で、俺に殴られても、投げられても起こし続けてくれた目覚ましと別れて四年と数ヶ月。

 習慣になった早寝早起きをいつものように実行し、朝食を取るために俺は白玉楼の食卓へと向かう。

 

「ふぁあぁー…」

 顔を洗ったけど…まだ少し眠いかもしれない。

 

 …俺は部屋に居る、まだ眠そうな目であくびをしながら食事をしている、死装束のような真っ白い着物を着ている幽々子さんに挨拶をして、食事が用意されている定位置になってきた場所に座る。

 そして、机の横にあるお櫃の中から白飯をついで手を合わせて、頂きますを言って食事を始める。

 

 …うん、美味い。

 

 最近、お昼をちゃんと取っていない妖夢さんは朝一に起きてこうして朝食を作り、先に食べ、今日も門のところで見張りをしている。

 

 “朝から頑張るなー…”と感心しつつ、焼き魚を箸でほぐして口に運ぶ。

 

 いやー…紫さんにはホント感謝。

 

 幻想郷には海が無くて川魚しか取れない。

 そのため海老や、ちょっと時期は違うがサンマといった貝類が食べられないのだ。

 …あとこうして味噌汁に入っているワカメも。

 

 ズズー…

 

 はぁ…味噌汁美味い。

 

 …ともかく。

 こういった魚介類を紫さんがスキマ経由の産地直送してくれるおかげで、内陸部にあるらしいこの幻想郷でも、今日の焼き魚に使われている太刀魚が食べられるのだ。

 

 ……良きかな良きかな♪

 

 あ、そうだ…

「…幽々子さん。お昼、何が良いですか?」

 俺は口の中にある味噌汁をのどに通してから聞く。

 

「そうねぇ。美味しいものならなんでも~…」

 幽々子さんは、もうほとんど肉の部分が残っていない焼き魚の骨をつつきながら判断が難しい答えを返してくれる。

 

 む…どうしようか…?

 俺は湯飲みに入ったお茶を飲んでちょっと考えてから、

「…そうですねー…野菜炒めと生姜焼きにしますか。」

 “ご馳走様でした”と言って箸置きに箸を置いている、幽々子さんに聞く。

 

「うーん…それでいいわ~…あ、お茶のお代わりもらえる?」

 幽々子さんは湯飲みを俺のほうに寄せながら答えた。

 

「…はい、どうぞ。…ほかに何かいります?」

「…そうね~…まぁ今日はそれくらいでいいわ~…」

 俺は急須に入ったちょっと温くなったお茶を幽々子さんの湯飲みに注いで、渡しながら聞く。

 幽々子さんは湯飲みを受け取って、少しお茶を啜ってからいつもの様に追加を…えっ?

 

「えっと…幽々子さん?」

「……なにかしら~。…あぁ美味しい。」

 幽々子さんは“ちょっとだけ温くて飲みやすいわね~”とのんきな事を言ってお茶を飲んでいる。

 

 …いやいや、幽々子さん。

「…今日、槍でも降りますか?」

「プッ…」

 俺が真面目に、お茶を飲んでいる幽々子さんに聞くと、飲んでいたお茶が気管に入ったのか、幽々子さんは咽た。

「ケホケホ…急になに言うのよ~!咽ちゃったじゃない…ケホッケホ!」

 幽々子さんは湯飲みを机の上に置きた片手で口を押さえながら、胸をとんとんと軽く叩く。

 

 い、いやだって…ねぇ?

 

「はぁ…私だってちょっとだけしか食べたくない日もあるわよ~…」

 幽々子さんは落ち着いたのか、大きく息を吐いてから言って、“まったく…”と頬を膨らませてそっぽを向く。

 あちゃー…怒らせてしまった…。

 

「ご、ごめんなさい幽々子さん…。」

「ふんっ…。」

 幽々子さんは怒ったままで、俺は気まずい空気の中食事を続ける。

 

 …うぅ…ご馳走様でした…。

 

 -------------------------

 

 …結局あの後、幽々子さんと交渉しておやつに焼きプリンを作ることで許してもらった。

 

 はぁ…困った。

 成り行きで作ることになったけど…上手く出来る気がしない…。

 最後作ったのは確か…小学二年生のときだったっけ?

 

「とりあえず料理本で少し勉強しなきゃな。うん…。」

 そのため俺は皿を下げるためと、作る練習をするため台所にいる。

 

 

 …のだが。

 

「野菜がない、…だと?」

 試作としてプリンを作ろうと思って冷蔵庫を開けてみれば、お昼に使う野菜が無いのだ。

 …コレはまずい。

 

 幽々子さんにお昼は野菜炒めといった手前、取り消すわけにもいかない。

 それに加え、もしかしてと思って生姜もさがしてみたが無かった。

 

 はぁ…仕方ない。

「…買ってくるか。」

 

 …俺は、ちょっとまだ怒っている幽々子さんに一言言って幻想郷のほうに出掛けた。

 

 -------------------------

 

 俺は人里に行って生姜と人参、安かった白菜とその他もろもろを買って帰ろうとしていた。

 …今日は八百屋がいくつか開いてて運が良かった。

 

 でも、

「…寒いー…。」

 やっぱり寒いわ…。

 

 というか、ますます寒くなってるんじゃなかろうか。

 …早く巫女には異変を解決して欲しいものだ。

 会いたくは無いけど。

 

「ホント寒いなー……うん?」

 

 俺が進む進行方向、遥か向こうに黒の何かが飛んでいるように見える。

「…なんだろ?あれ。」

 

 というかアレ物凄いスピードでこっち向かってきてないか…?

 それに続いてメイド服(?)を着た少女と紅白の巫女服を着た…って、はいぃっ!?

 

「おーい霊夢。誰か飛んでいるぞー?」

「なに魔理沙ー?…あ、ホントね。…ちょっと話聞きましょうか。」

「今度は合ってるといいんだけど…」

 

 ヤバくね?巫女じゃね?

 俺、成仏させられちゃうんじゃ…。

 

 空を飛んできた異変解決者らしき三人は俺を囲むようにして浮遊する。

 …というか人間って空飛べるのか。

 

「…そこのお兄さん。私達異変の首謀者探してるんだけど…知らない?」

「し、知らないです…。」

 博麗の巫女は俺の目を見つめて話しかけてくる。

 ヤバイヤバイ…巫女恐い…

 ばれるなよー…っ

 

「…そ。知らないのならいいわ。」

 と巫女が言って俺は心の中でそっと胸をなでおろす。

 しかし、

「…でもあなた、…何者?」

 なにこの巫女…殺気が凄いんですが。

 

 どうしよう…。

 …正直に話すか?

 いや、そのまま霊弾打たれてお陀仏な気もする。

 嘘言ってもお陀仏な気もする。…逃げ道無いな。…うん。

 

 でもとりあえず、話を聞いてもらう努力はしてみようか…。

「…話してもいいですけど、…いきなり弾幕とかは止めてくれ。」

 

「私はそんな事しないぜ?」

 と箒に跨った白黒の魔法使い。

「もう、魔理沙は黙ってなさい!…それで?」

「…あ、あぁ。」

 巫女はそんな魔法使いをたしなめ、話しを聞いてくれようとした。

 まさか話を聞いてもらえるとは思ってなかった…。

 

 …正直に話すか。

 

「…俺は亡霊に近い幽霊だ。」

「……ふーん。それにしては姿がハッキリと見えるみたいだな?」

 俺の答えに疑問があるのか白黒の少女は問いかけてくる。

 

 …というかやっぱりこの三人怖い。

 

「俺の能力で見えるようになってるんだけど…。」

 俺は、内心冷や汗だらだらで話しを続ける。

 

「…そう。もういいわ。引き止めて悪かったわね。」

 巫女さんは興味をなくしたかのように、謝ってから飛んでいく。

「それじゃ、兄ちゃん気をつけて帰るんだぜ!」

 魔法使いは手を振りながら一人を追い抜かし、一人を置いて飛んでいく。

「……それでは。」

 とメイドが会釈をしてそれを追っていく。

 

 あー…あの魔法使いこの寒い中元気いいな。

 メイドさんはちょっと無愛想だったけど。

 

 巫女さんは…やばい、ちょっとまだ怖い…。

 …肩が少し震えてきた。

 

「はぁー…疲れた…。」

 

 もう帰ろう。

 …帰ってお昼作ろう。

 


冥界に入ってすぐ…

「…なぁ霊夢。なんであの時、弾幕勝負しなかったんだ?」

「…そうね。喧嘩っ早い巫女のあなたならやりそうだと思ってたのに。」

「…魔理沙、咲夜。…あんた達分からなかったの?」

「…なにが。」

「なにがって…あの男の人、霊力の塊みたいだった。」

「…まぁ、そうだろうな。」

「そうでしょうね。幽霊らしいから。」

「…幽霊にしてはあきらかに桁が違ったのよ。…下手すれば私に届くか届かないかってところね。」

「はぁ!?」

「なによそれ…」

「ただ、存在しているだけで霊力が無いといけないから、あれの三分のニくらいしか使えないだろうけど…。」

「あはは…霊力馬鹿の霊夢にそこまで言わすとは…」

「やらなくて良かったわ…」

「…ちょっと?それ、私のこと馬鹿にしてない?」

「はっ…し、してねぇしてねぇ!」

「わ、私もしてないわよ!」

「ならいいけどね~…」

「「(助かった…)」」

「…あ、二人とも、あそこに事情知ってそうな奴らいるわよ。」

「丁度三人居るな…一人につき一人だな。(おっしゃ、ナイスタイミング!)」

「そうね。各個撃破していきましょう。(なんかあの三人には悪い事したわね…)」

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