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冥界にて。  作者: 幽々谷
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五話 男?、真実を知る。

 …幽々子さんが食べきる前に、と急いで食べだした俺たち三人だけども、十分も経たない内に少し遅めの昼食は終わってしまった。

「ふぅ~ご馳走様ー…。京谷君、腕上げたわね。

 流石にあの二人よりは劣るけど……あの頃はお肉なんて黒焦げにしてたのにね。

 …確か…十年くらい前かしら?」


 ぐっ…紫さん思い出したくないことを…


「…紫さんそれは言わないで下さいよ。

 …アレをあなたに出したこと、思い出すだけでも恥ずかしいんですから…。」

 ホントにあの頃は幼かった…。

 あの頃…紫さんは喜んで食べてくれていたけど、散々な料理を出していた記憶が…。


「あらそうなの、京谷。妖夢の作る料理くらいかそれ以上に美味しかったわよ~?」

 幽々子さんも少し驚いた様子で褒めてくれる。

 んー…妖夢さんの料理の方が美味しいような気がするんだが…。


 …あ、思い出した。

「…妖夢さん、台所に桃を出してるんで切って持ってきてもらえますか?」


「………」


 …あれ?返事が無い。

 何だか心此処に在らずのような感じだ。


「…妖夢さん?」

 俺は彼女の顔色を伺いながら名前を呼ぶ。

「…あ、はい…。…分かりました。」

 呼んでいることに気がついた妖夢さんは、何だか部屋から出て行くときブツブツと

 “私の×十年は…”

 と、よく聞こえなかったが呟いていたみたいだった。

 ……何かあったのか?


 ま、まぁその内妖夢さんは元に戻るだろうと思うから…

「…紫さん。あの、そろそろ教えてもらっても良いですか?」

 俺は今の間に紫さんに色々と教えてもらおうと、紫さんに向き直り声をかける。


 その紫さんは、

「…じゃあ調べましょうか。あなたが何なのか。」

 と、ニコリと笑みを作りながら言った。


 -------------------------


「…大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃないですよ…」

 …頭いてー…。

 …なんなんだ、アレ。

 おでこに触られてから背筋に何かが伝うような感触がして、

 さらには頭の中を直接触られたかのような気持ち悪い感触と痛みが…。


「ホントね…気絶させてからすればよかったわ…。…ごめんなさいね?」

 紫さんは、本当に悪かったと思っているのか、しょんぼりとしながら謝ってくれる。


 うー…怒るに怒れない…。

 ふと幽々子さんを見ると信じられないといった顔で紫さんを見ている。

 …どうしたんだろ。


 ともかく、

「…それで、分かりました?」

 あんな辛い思いしたんだ。わからないなんて洒落にならん。


「えぇ、分かったわよ。

 …まず、あなたは種族でいうと亡霊に近い幽霊だったわ。」


 はぁー…幽霊、か…。

 やっぱり俺死んでるんだな…。


 幽々子さんは何か気になるのか紫さんに話しかける。

「あれれ?紫、それっておかしいんじゃないの~?

 …亡霊じゃ無いんでしょ。…なのに彼、料理作ったりしてたわよ?」

 …確かにおかしいな。


「…それは彼の能力を聞けば分かるわ。」

 紫さんは幽々子さんの質問にものともせず、平然と答える。

 ……能力かー…って能力??


「…在るんですか。俺に能力が。」

「在るわよ。…だけど後で説明ね。

 まず先にあなたがどれくらいの霊力、魔力持っているかを説明しないと…。」


 そうなのか…俺に能力なんかが。


 それにしても紫さん…?なに言ってるんで?

 マリョク?レイリョク?…さっきからさっぱり分からん。


 そんな様子の俺を紫さんは気にもせず、説明を続ける。

「霊力に関して言えば流石は幽霊って言ったところかしら?…かなりの量よ。

 次に魔力だけど、一般的な魔女や魔法使いレベルね。」


「へぇ~紫が“かなり”って言うんだったら相当ね。」

 幽々子さんも感心した様子で話を聞いている。

 いや、幽々子さんもそんな風に感心してないで…


 それにしても魔女や魔法使い。…いるのか。

 あ、マリョクって魔力か。

 じゃあレイリョクは霊力で…。

 いや、本当にファンタジーな話だなぁ…


「あ、でも使いすぎたら消滅しちゃうから注意ね。」

 いや、さらっと言ってるけど…消滅って。


 紫さんはそんな爆弾発言気にもしていないのかそのまま続ける。

「さて…肝心な能力の話をしましょうか。

 …京谷君。あなたの能力…『魂を操る程度の能力』よ。」


 …へ?

「…なんです、それ?」

「簡単に言うと物や人に干渉できない幽霊のあなたでも、できるようになる能力ね。」

 俺が素直に問うと分かりやすい具体例を出して説明してくれる。

 あぁ、この能力で今までと変わらない生活が出来るのか…。


「ただ…」

 紫さんはまだ続きがあるかの様に前置きする。


「…なんです?」

 なんか嫌な予感しかしないんだが…。


 紫さんは何も考えてなさそうな表情から真剣な目つきに変わり、

「…使い方によればだけど、幽々子並みに危険なものよ…。」

 と、俺の目を見つめながら言った。

 幽々子さん並みって、確か……死に関係することか…。

「…マジか。」

「大マジよ。」


 -------------------------


 しばらくして、妖夢さんが桃を切ったものを持ってきてくれた。

 …ただ、かなり芸術的な造形の桃だったが。


 妖夢さんは、帰って来たときには既に落ち込んでおらず何よりだ。

 …俺に勝ち誇ったような顔をしてきたのは謎だが。


 それよりも今はさっきの話のほうが気になる。


 …紫さんはあの後、軽い感じで

 “ま、使い方を誤ったり、能力が暴走さえしなければ、だけどね”

 と言ってたけど…。

 やっぱり自分が知らない間に誰かを傷つけているのは、

 例え、IFの話だとしても、自分が自分で無くなるって言うのは…怖い。


「紫さん。」

「…何かしら京谷君。」


「俺に力の使い方を教えてください。」

 俺は紫さんに頼んだ。

 今まで通り生きていくためにも。


「京谷君…」


 紫さんは俺のそんなお願いを真剣に聞いてくれて…

「…世界征服でもしたいの?」

 …真面目な顔してボケをかましてくれた。


「紫さん!」

 …絶対この人分かってるよな!


「…ふふ、冗談よ。

 可愛い弟分なんだし、あなたが力に溺れたりなんかしたら退治しなきゃいけなくなるものね。」

 “お姉さんにまかせなさい”と胸を張る紫さん。


 まったく…この人の悪いところは肝心なところで人を茶化すとこだ。


 それより、



 …いつ俺は弟分になったよ、紫さん。


この日の夜…

「…ねぇ、妖夢。」

「なんですか幽々子様…ってどうしたんですか?そんな深刻な顔して。」

「…紫が誰かに、素直に謝ってる所…今日初めて見たわ…。」

「えっと、幽々子様、それは…坂井さんに?」

「えぇ…。それにあんなに裏の無い笑顔…私にも偶にしか見せないのに…。」

「そ、そうですよね…。何時もみたく胡散臭くありませんでしたし。」

「…彼、何者なのかしら。」

「ホントに謎ですね…。」

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