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「お姉ちゃんのとこの魔術師は精霊って言ったんだろ?知ってか?妖精と精霊は違うんだぜ?」
と、アストは次のように語る。
「妖精ってのは 伝説やおとぎ話の中にでてくる生き物で、木とか物とかから生まれる精だ。人語をしゃべり、時には悪戯したり人間を助けたりするんだ。精霊は火や水や風や土なんか自然の中に居て、一匹一匹は目に見えないし、力もない、意志すらもない。だから人には存在も知られてないんだ。けれど精霊は集まると、風や水を生み出すんだ。そう、この空気や風が精霊自体なんだ。」
心地よい風が木々をなでながら、森を抜けてく。
「お若いのに、博識なんですね」
目をきらきらさせているスズ姫に、おもわず あんたが世間知らずなだけじゃないか?と言いたくなったがぐっと飲み込む。
「あのーひとつ聞いてもいいですか?」
「貴方達は妖精じゃないんですか?」
「…俺達はエルフだ」溜息交じりにそう言ったアストは長いとがった耳に、白目がまったくない大きなブルーの瞳、髪は夏の青葉のような緑色をしている アベルはよく似た容姿に 緑の瞳に、青空のような髪をしている。
「エルフも本で読んだ事がありますわ!妖精には会えませんでしたけど、エルフに会えたのですね!」
小躍りしそうな勢いでアストの手を握るスズ姫。
それを呆れ顔でみるアストと、きょとんとしているアベル。「ところで、あんたこの森には詳しいのか?」
「散歩にはよく来ますが、こんなに奥に入ったのは二回目ですわ」
「あまり期待出来ないな…この森にフォトンの木ってのないか?」
「それなら、ほらあそこ」
ですわ」
姫の白い指がさしたのは、アスト達が目指していた森が開けた場所だった。