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目の前に広がる草原。
柔らかい春の陽射しが大地に降り注ぐ。季節は春。
「まぁよいお天気ですこと」
ピンク色の可愛いらしい日傘を持ち、ご満悦に微笑むのは クライン国の第一皇女スズ・アイル・クライン姫。肩の辺りで綺麗に整えられた栗色の髪の毛が陽の光りにキラキラと輝き、動きやすい白のドレスに淡いブルーのショールが春の風と遊んでいる。姫はただいま散歩中である。が、しかし そう思っているのは自分だけで、 実際の所いつもの悪い病気が出ただけである。
『放浪癖』
姫は度々誰も気付かないうちに城から抜けだし ふらふらっとどこかへ行ってしまう。
たいていは遅くても夕方には戻って来るのだがつい先日などは 次の日まで行方をくらましていた。すぐ帰ってくるだろうとたかをくくっていた国王も 流石に焦った。城の者を総動員して捜索したがみつからず、次の日の朝、敷地の森の巨木のむろの中で眠っていたのである。これには寛大な国王も呆れはてそれ以来、姫に四六時中監視をつけたが、どういった訳か姫はうまい事城から脱出したのである。
その頃城では…。