8話 動物のはじまりは「ワンワン」くんから
最近のひなたくんは、動物の絵本がお気に入り。
窓の外を通り過ぎる犬や猫、空を飛ぶ鳥を、食い入るような目で見つめています。
「ひなたくん、動物にすごく興味を持ち始めたみたいだね」
ゲンジおにいさんが、窓の外を一緒に眺めながら呟きます。
「そろそろ、この子の名前も言えるようになるかしら?」
コトハおねえさんは、園内をのんびり歩いていた猫を抱き上げ、優しく撫でながら言いました。
その時、外の世界からママの弾んだ声が降ってきました。
『ほら、ひなた。ワンちゃんだよー。可愛いねぇ』
窓の外をトコトコと歩く一匹の犬。それを見たひなたくんが、静かに、けれど確かに言いました。
「……ワン……ワン……」
その瞬間、窓の外の犬がキラキラと光り、その光が園内へと飛び込んできました。
光の中から現れたのは、犬の耳がついたフードを被った元気な男の子。
「ワンワン!」
新しい園児、ワンワンくんです。
外界ではママの驚喜する声が響いています。
『えっ!? 今言った!? そうだよ、ワンワンだよー!』
生まれたばかりのワンワンくんは、じっとしていられません。すぐに絵本を広げると、そこに載っているライオンもゾウもウサギも、片っ端から指さして叫びます。
「ワンワン! ワンワン! ワンワン!」
さらに園庭へ飛び出すと、空を飛ぶスズメを指して「ワンワン!」。
そして、コトハおねえさんに抱っこされている猫を見つけると、満面の笑みで指をさしました。
「ワンワン!」
「あはは、ワンワンくん。この子は猫ちゃんだよ」
コトハおねえさんが困ったように笑うと、おにいさんも優しく頷きました。
「ひなたくんにとって、『ふわふわして動くもの』は、今はみんなワンワンなんだね」
外の世界では、ママが必死に教えようとしています。
『ひなたー、この子は猫ちゃんだよ。ニャンニャン。ほら、ニャンニャンだよ』
けれど、ひなたくんはコトハおねえさんの腕の中の猫をじーっと見つめて、自信満々にこう言いました。
「……ワンワン!」




